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その日、ぼくは自分の家に帰らないで、xxの家に直接向かった。やるべきことが決まったし、鉄は赤いうちに打てって言うしね。
彼の家のリビングで、ぼくたちはコーラを飲みながら、まずは作品アイデアを出し合った。
「ファンタジーって言ったら、やっぱりスライムだよね」
「ゴブリンも居るだろ」
「うんうん、あと魔法と剣もね。ドラゴンが一番良いけど、ドラゴンはラスボスだよね」
ぼくたちはアイデアを出し合って、それを一つ一つ、メモ帳に書き込んでいった。どんな作品が書き上がるかは分からないけど、楽しみだった。そしてひとしきり作品アイデアを出し終えたあとは、xxの仕事だ。彼はノートPCを開くと、キーボードを叩き始めた。カタカタという音が部屋の中で響く。すごいスピードだ。
ぼくは彼の作業を邪魔しないように、なるべく静かに、その作業を見守った。最初は書いている様子をじっと見てたけど、「漫画でも読んでろよ」って言われて、途中からは彼に仕事を任せた。
そして1時間ほどして、彼の手がようやく止まった。
「とりあえず、話の導入部分は出来たぞ」
「読んで良い?」
「ああ」
彼からタブレットPCを借りて、たった今出来上がったばかりの物語に目を通すした。タイトルは『戦う世界』……変な名前だ。それに……
「え、主人公はぼくなの?」
「そうだよ」
「なんで?」
「深い意味はないよ」とxxはニヤニヤ笑いながら言う。
……ふん、ちょっとした嫌がらせかな。
「……なんか恥ずかしいなー」
そう呟きながら、ぼくは内容に改めて目を通した。
「……」
ぼくが読んでいる間、xxはチラチラとこちらの様子を伺ってくる。おかげで、ぼくは全然物語に集中できない。よっぽど、ぼくの反応が気になるみたいだ。
「……どうだ?」
「おも……しろい……かな?」
「はっきりしないな」
「まだちょっとしか書かれてないから、わかんないよ」
「……そうかぁ」
xxはがっくりと項垂れてしまった。ウソでも面白いってはっきり言うべきだったかな? ……でも、ウソはつきたくないし。
「ともかく、連載はこれで良いとして、新聞発行の準備をしないとね。各クラスに一枚ずつ配るとしたら3学年✕5クラスで15枚印刷しないといけないし、読みやすいように体裁を整えないとね」
「大丈夫かな? 笑われるんじゃないか? こんなの配ったら」
xxは不安そうだった。実際、ぼくもこれを本当にみんなに見せて平気なのか分からない。
けど――
「大丈夫だよ。きっと」
「……そうか?」
「それに、どうせこの世界、ぼくたちの世界じゃないし、失敗したら逃げ出せばいいよ」
「まあ、その方法があればな」
xxは笑った。
そしてぼくたちは一晩掛けて、xxが書いた小説の見直しと手直し、それに印刷を済ませた。出来上がったものは、至極シンプルなA4サイズの新聞だった。新聞と言っても、xxが書いたファンタジー小説、『戦う世界』の連載があるだけだから、厳密には新聞ですら無いけど。
そして翌朝、ぼくたちはまだ誰も居ない教室を巡って、教室の後ろにある掲示ボードにその新聞を貼り付けて回った。
「大丈夫かな、これ」
「うーーん……」
一応、先生の許可は貰っていたけど、今になってすごく不安になってきた。xxの悪い予感が的中したら、ぼくたちは全校生徒の笑いものだ。けれど、もう今更後にはひけない。あとは野となれ山となれだ!




