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ぼくのいない世界  作者: 松永晋也
分かる世界2(2011年10月~11月)
24/33

 その日、ぼくは自分の家に帰らないで、xxの家に直接向かった。やるべきことが決まったし、鉄は赤いうちに打てって言うしね。


 彼の家のリビングで、ぼくたちはコーラを飲みながら、まずは作品アイデアを出し合った。


「ファンタジーって言ったら、やっぱりスライムだよね」


「ゴブリンも居るだろ」


「うんうん、あと魔法と剣もね。ドラゴンが一番良いけど、ドラゴンはラスボスだよね」


 ぼくたちはアイデアを出し合って、それを一つ一つ、メモ帳に書き込んでいった。どんな作品が書き上がるかは分からないけど、楽しみだった。そしてひとしきり作品アイデアを出し終えたあとは、xxの仕事だ。彼はノートPCを開くと、キーボードを叩き始めた。カタカタという音が部屋の中で響く。すごいスピードだ。


 ぼくは彼の作業を邪魔しないように、なるべく静かに、その作業を見守った。最初は書いている様子をじっと見てたけど、「漫画でも読んでろよ」って言われて、途中からは彼に仕事を任せた。


 そして1時間ほどして、彼の手がようやく止まった。


「とりあえず、話の導入部分は出来たぞ」


「読んで良い?」


「ああ」


 彼からタブレットPCを借りて、たった今出来上がったばかりの物語に目を通すした。タイトルは『戦う世界』……変な名前だ。それに……


「え、主人公はぼくなの?」


「そうだよ」


「なんで?」


「深い意味はないよ」とxxはニヤニヤ笑いながら言う。


 ……ふん、ちょっとした嫌がらせかな。


「……なんか恥ずかしいなー」


 そう呟きながら、ぼくは内容に改めて目を通した。


「……」


 ぼくが読んでいる間、xxはチラチラとこちらの様子を伺ってくる。おかげで、ぼくは全然物語に集中できない。よっぽど、ぼくの反応が気になるみたいだ。


「……どうだ?」


「おも……しろい……かな?」


「はっきりしないな」


「まだちょっとしか書かれてないから、わかんないよ」


「……そうかぁ」


 xxはがっくりと項垂れてしまった。ウソでも面白いってはっきり言うべきだったかな? ……でも、ウソはつきたくないし。


「ともかく、連載はこれで良いとして、新聞発行の準備をしないとね。各クラスに一枚ずつ配るとしたら3学年✕5クラスで15枚印刷しないといけないし、読みやすいように体裁を整えないとね」


「大丈夫かな? 笑われるんじゃないか? こんなの配ったら」


 xxは不安そうだった。実際、ぼくもこれを本当にみんなに見せて平気なのか分からない。


 けど――


「大丈夫だよ。きっと」


「……そうか?」


「それに、どうせこの世界、ぼくたちの世界じゃないし、失敗したら逃げ出せばいいよ」


「まあ、その方法があればな」


 xxは笑った。


 そしてぼくたちは一晩掛けて、xxが書いた小説の見直しと手直し、それに印刷を済ませた。出来上がったものは、至極シンプルなA4サイズの新聞だった。新聞と言っても、xxが書いたファンタジー小説、『戦う世界』の連載があるだけだから、厳密には新聞ですら無いけど。


 そして翌朝、ぼくたちはまだ誰も居ない教室を巡って、教室の後ろにある掲示ボードにその新聞を貼り付けて回った。


「大丈夫かな、これ」


「うーーん……」


 一応、先生の許可は貰っていたけど、今になってすごく不安になってきた。xxの悪い予感が的中したら、ぼくたちは全校生徒の笑いものだ。けれど、もう今更後にはひけない。あとは野となれ山となれだ!


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