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食べ物を漁った後は、電池とロウソク、あとはゴム手袋やライターとかの生活用品を探して集めた。
そうこうしていたら、次第に辺りが暗くなってきてしまった。リュックに取り付けてあるランタンの電気をつけて、ぼくたちは店の外に出た。
「寒くなってきたね」
「ああ」
「今日は図書館で寝よっか」
「だな」
夕方の時点で、街はすごく暗い。
昼間のうちはまだ街は生きているような感じがしたけど、この時間になると、この街は完全に死んでしまっているってことがはっきりと分かる。
いつも、この時間になると気分が沈む。
ぼくたちのどちらかがひどい病気になったり、怪我をしたら、どうなっちゃうんだろう。
それで終わりなのかな? なんて。
だから、誰か他の人に会いたいなって思う。
昼間の間はxxと二人きりでも全然平気だけど、暗くなると、二人じゃ心細いから。
この世界にはまだ誰か居るのかな?
……けど、もう何ヶ月も放浪してるのに誰も居ないってことはやっぱり……いや、そんなことを考えちゃだめだ。
「なあアスカ、大丈夫か? 黙り込んで、顔色悪いぞ」
「あ……うん。へーきだよ」
「そろそろだ。あの建物が多分図書館だよ」
xxが指した方向には、がっしりとした建物があった。
多分3階建てかな? 敷地内のコンクリの地面が少し割れていて、雑草が生えている以外は、ほとんど問題なさそうだった。
「中は綺麗だな」
「うん」
そして実際、建物の中は無事だった。
雨漏りも、動物が入った形跡もない。
どうやら、市役所と図書館が一つになった建物みたいで、一階部分には事務室みたいな部屋や、いろんな受付のカウンターがあった。
「良かったぁ……足、パンパンだよ」
綺麗な白い内装を見たとたん、全身に疲れがどっと吹き出した。
疲れた。
毎日のことだけど、大きなリュックを背負って、キャリーバッグを引きずって歩き続けるのは楽なことじゃない。いつか慣れるかなって思ってたけど、全然だめだ。
「街の状態も良いし、しばらくはこの街に居ても良いかもな」
「そうだね。もしかしたら、誰か暮らしてるかもしれないし」
ぼくがそう言うと、xxは笑った。
「なんで笑うの」
「誰も居ないからだよ」
「そんなこと分からないよ」
「今まで誰か一人にでも出会ったか? 生きている人間の形跡はあったか?」
xxはまるで勝ち誇ったみたいにそう言う。自分はすべてを知ってるみたいに。
「無い……けどっ!」
「期待するな、無駄だからな」
「なんでそんなことを言うんだよ」
ぼくはすこしムカついた。
彼は何もかもを悪い方に考えるし、何もかも知ったような態度をいつも取る。
ぼくだってそれを理解しているけど、こんな寂しい気持ちの時には、暗い言葉は聞きたくなかった。
「誰かがどこかに居るよ、絶対。それに、どこにも誰も居ないなら、ぼくたち一体なんのためにずっと旅をしてるの?」
ぼくは思っていることを言った。
けど、xxはその言葉になんの返事も返さなかった。
xxはこれで良いのかな? 誰とも会わないで、二人ぼっちで、悲しくないのかな? なんで何も言わないんだろう。
そう思って彼の方を見たら、彼は建物案内のボードに目を向けていた。
「図書館は3階らしいな」
「……うん」
「なんだよ。怒ってるのか?」
「別に」
ぼくは疲れていた。昼間は良かったけど、夜になるとだめだ。
反論する元気も、笑う元気もない。xxのことが時々嫌になる。
けど、一人になりたいとは思わない。一人になったらどうしようもく寂しくなるのが分かるからだ。
きっと、頭がおかしくなると思う。
ぼくは彼のぴったり後ろにくっついて階段を登った。
一番最後の段を登るとき、ぼくは足を踏み外したりして、うっかり死んでしまいたいと思った。
もちろん、すぐにそんな考えは馬鹿らしいって思い直したけど。
「俺、漫画探してくる」
図書館に入ると、xxはそう言って一人で奥に進んでいった。
「うん」
ぼくは疲れていた。
昼間は本を読みたいと思っていたけど、今は何もしたくなかった。
お腹もペコペコだけど、缶詰を開ける気力もない。
コーラを飲んで、四角いソファーを2つくっつけてベッドにした。
寝心地は良いけど、肌寒い。冬服を探しておけば良かったなって思ったけど、もう遅い。
今から街に出るのは危ないし、今日は我慢だ。




