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ぼくのいない世界  作者: 松永晋也
壊れた世界(????)
15/33

 世界の広さが、今になってよく分かる。

 どこまで歩いていっても、世界は続いている。

 西へ東へ、森を超えて山を超えて、それでもやっぱり世界は続いていた。


 もう、xxと二人で旅をはじめて何ヶ月も経っているのに、未だに毎日毎日新しい光景と遭遇する。


 タヌキやハクビシン、この間なんて猿にも遭遇したし、イノシシにも出会った。

 人間が減った分、動物の数が増えているのは間違いないと思う。スマホのバッテリーはもう随分昔に切れちゃったから、記憶の中にしかその姿は残っていないけど。


 今歩いている場所は、元々は街だった場所だった。この世界じゃあ街がほとんど自然に飲み込まれてしまっている場所も多いけど、今いる場所は違う。


 地面にはまだコンクリートが残っていて、街は原型が残っている。もちろん、コンクリにはヒビが入って、そこからタンポポとかくっつき虫、それに名前のわからない雑草も一杯生えてるけど。でも、やっぱりまだ街は残っている。人は一人も居ないけど。


「腹減ったな」


「ご飯にする?」


「そうしよう。座れる場所があったらな」


 そしてぼくたちは川べりのベンチを見つけて座った。リュックから缶詰とペットボトルを取り出して、乾杯する。といっても、ペットボトルの中身は、山で汲んできた湧き水だけど。


「この街、誰か居るかな?」


「……さあ」


「綺麗に街が残ってるし、きっと居るよね」


 ぼくはギコギコと桃の缶詰を開けた。

 とっておきの贅沢品だけど、ここは綺麗な街だし、多分缶詰くらいは見つかるだろうから、食べちゃっても問題ないだろう。


「むぐむぐ」


 xxはサバの水煮を食べていた。

 よく考えてみたら、水煮ってなんなんだろう。水で煮ただけなのかな? ぼくは食べたこと無いからよくわからないけど、色もついてないし、見た目はあまり美味しそうじゃない。


「さくらんぼってさ、桜の木になるのかな」


 xxが言った。


 ベンチの前には川が流れていて、対岸には桜の木があった。と言っても、葉っぱひとつついていないけど。


「あー……どうなんだろうね。けど、桜の木に実がなってるの見たこと無いなぁ」


「確かに、俺も見たこと無いな」


「じゃあさくらんぼの木ってどんな木なんだろう」


「ネットが使えれば一発で分かるのにな」


「そうだね。でも、図書館に行けば分かるかも」


「それもそうだな」


「ご飯食べたらさ、この街の図書館探そうよ」


 そう言いながら、ぼくたちは笑った。

 図書館に行くのは面白いし、いいアイデアだと思う。昔は図書館なんて全然好きじゃなかったけど、今は大好きな場所の一つになった。食べられる野草を調べられたり、火の起こし方とか、ガラスの作り方、その他いろいろな知識を手に入れる事ができるから。(まあ、大抵は知るだけでやらないんだけど)


 ぼくたちはベンチから立ち上がって、茶色い桜並木を眺めながら、川沿いを下っていった。キャリーバッグの車輪がガラガラと大きな音を立てるし、揺れる。そろそろ新しいものに変えた方が良いかもしれない。


「どこかに地図があると良いんだけどな」


「そうだね」


「それに図書館だけじゃなくて、スーパーも行きたいよな。久しぶりに、焼き鳥の缶詰を食べたいし」


「あー、ぼくも焼き鳥食べたい。あと、パイナップルも」


「果物なんていつだって食えるだろ? いちじくとか、道端に生えてるしさ」


「いちじくとパイナップルは全然ちがうじゃん! それに肉だってその気になれば食べられるよ。カモとか、たくさん川に居るし」


「たくさんいるけど、捕まえられないだろ」


「……まあね」


「あ、向こうに地図がある」


 xxが指差した先には、金属製の大きな看板があって、町内地図が書かれていた。

 ざっくりとした地図で、スーパーとかコンビニについては書かれてなかったけど、図書館の場所は書かれていた。


「えっと、今がこの赤い点で、川がこう流れてるから……向こうの方だな」


「図書館、無事だと良いね」


「ああ」


 ぼくたちは目的地を決めて、また道を歩き出した。途中で犬と猫、それに負けない数のタヌキを見かけた。それにしても、タヌキの繁殖ぶりはすごい。もしかすると、この世界を滅ぼしたのはタヌキなのかもしれない……まあ、そんなことはないだろうけど、そう思うくらい、しょっちゅう見かける。


 その道中で、スーパーマーケットを見つけた。本来の目的の図書館はあんまり急ぎの用事じゃないから、先にスーパーに入ることにした。


「おー、すごいな」


 自動ドアをなんとかこじ開けて中に入ったら、商品はキレイに並んでいた。

 世界が壊れてしまった瞬間から、まるで時間が止まってしまっているみたいに、そのままの形で残っていて、当然、未開封のお菓子やジュースもたくさんある。


「この街はやっぱり、あんまり被害が無いみたいだな」


「うん。動物が少ないからかな」


「かもな。ともかく、必要なものを貰っていこう」


 ぼくたちは店内からいくつかの商品をもらっていった。まずは缶詰。缶詰は特に重要だ。長持ちするし、中身がぎっしり詰まってるからコンパクトだ。桃と焼鳥、パイナップルとみかん、それにツナと、よくわからないグリーンカレーっていうのも持っていくことにした。美味しいかはわからないけど、何事も挑戦だよね。


「お~蒲焼きだ!」


 xxはサンマの蒲焼きを見つけて、嬉しそうに同じものを十個もリュックに詰め込んでいた。あんなに同じものばっかりで、飽きたらどうするんだろ?


 次に飲みもの。これは1・5リットののコーラと水を一本ずつ。飲み物は重要だけど、重たいからあまり多くは持ち運べない。コーラ二本でも良いけど、コーラはあんまりご飯と食べ合わせが良くないから、バランスを考えて水を持っていくことにした。お茶もあったけど、沈殿していてちょっと見た目が良くなかったから、安心安全の水を持っていくことにした。


 最後にお菓子。xxはクッキーを、ぼくはポテトチップスを持っていくことにした。

 ポテトチップスは美味しいし長持ちするけど、場所を取るのがつらい。

 それに、他の荷物に潰されちゃうから、あんまりたくさんは持っていけない。

 それでも、ぼくはピザポテトを一袋だけ持っていくことにした。美味しいからね。


 けど、やっぱりプリングルスの方が良かったかもしれない。コンパクトでいっぱい入ってるし、箱が丈夫だから。

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