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家に帰って台所に駆け込むと、母さんがそこに居た。
(おかえり、飛鳥)
母さんはもう夕食を作り終えていて、テーブルの上には夕食が並んでいる。
「た、ただいま」
ぼくが挨拶を返すと、母さんは目を丸くした。
(どうしたの? 声なんかだして)
(ううん、なんでもない。あの……ぼくは……)
ぼくは、頭が混乱していた。
すっかり、完璧に混乱していた。どこまで説明するべきなのかわからない。
というか、『このこと』を説明しても良いのかな? 頭がおかしいって思われるかも……
(『このこと』って)
(あっ、いやあの……)
そうだ。この世界は分かる世界なんだ。考えを読まれてしまう。
……となると、誤魔化せないな。ほんとうのことを話すしかなさそうだ。
(何なの? 飛鳥)
(あの……パラレルワールドって、知ってる?)
(パラレルワールド? 聞いたことはあるけど、それがどうしたの?)
(……じつはぼくは、別の世界から来たんだよ)
(別の世界?)
母さんは眉をひそめた。驚いた、というよりは、心配そうな顔をしている。
(……もしかして、どこかで頭でも打った? 事故にあったんじゃない?)
(違うよ。ぼくは別の世界から来たんだ。だから、じきにこの世界のぼくが家に帰ってくるはずなんだ。そうなれば、母さんにもわかるよ)
そうだ。ぼくの家があるということは、この世界のぼくも居るはずなんだ。彼が現れれば、ぼくは別の世界のぼくだと証明できる。
……はずだった。
(それで、ほんとうのアスカはいつになったら帰ってくるの?)
夜の10時になっても、この世界のぼくは家に帰ってこなかった。おかしい。いくらなんでもこんなに遅くまで……
と、そう思った時、玄関の扉が開く音がした。
(ほら! 帰ってきた!)
ぼくはテーブルから立ち上がって、急いで玄関に向かった。
(ただいま、アスカ)
(……父さん)
(どうした、変な顔をして)
(聞いてよあなた。アスカが変なことを言い出したの。別の世界から来たとか……)




