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ぼくのいない世界  作者: 松永晋也
ちょっと不思議な世界(2011年6月)
13/33

 このビルになぜ幽霊が出るのかは知らない。ていうか、本当に幽霊が出るのかも、まだわからない。既にビルの1階から5階まで一周ぐるりと巡ったのに、xxの姿はどこにも無かった。


「……電波も届かない」


 スマホで連絡を取りたいけど、気づいたら電波が届かなくなっていた。ビルの外に出ればなにか変わるかな。そう思って、ぼくはビルを下へと降りていく。


 その時、ぼくはすりガラスの向こう側が明るくなっている事に気づいた。今は夜で、周囲の建物は人気が無かったはずだから、車のライトかな?


 ともかく、ぼくは入ってきた窓から建物の外に出た。


 その時一瞬だけ、世界がグルンと回転したような感じがした。


「……どういうこと?」 


 建物の外に出たら、そこは夕日に包まれた街だった。

 何が起きたのか分からなくて振り向いたら、ビルはもうそこになかった。


 隣町のビルに居たはずなのに、ぼくは家の近所にある公園の砂場に立っていた。何が起きたのかわからないけど、ともかく、それは間違いない。


 現実的に考えると……いや、現実的には考えようがない。ぼくは隣町のビルに居たはずなのに、外にでたら家の近くに立っていたんだから。


 しかも、夜だったはずが、夕方になってるし。


(もしかして……夢、かな。でも、そんなことって……)


 ぼくは自分の頬を自分でつねった。いたい。どうやら、少なくとも今は夢の中じゃなさそうだ。


 でも、それならなんでぼくは公園の前に居るんだろう。夢遊病なのかな。それとも……本当に超常現象? だったら、記事に出来るかも。


 そう思ったけど、こんなこと書いたら突拍子が無さすぎて信じてもらえない気がする。それにワープって、心霊現象って感じでもないし……


(飛鳥、居るのか?)


 その時、xxの声が聴こえた……ような気がした。変な感じだった。はっきりと聴こえた気がするけど、幻聴だと言われたらそう納得してしまうような、曖昧な感じ。


 それに、声が聴こえた方を見ても誰もいなかった。


(飛鳥、公園に居るのか?)


 だけど、やっぱり声が聞こえた。まるで耳で聞いているというより……頭の中に響いてくるような声だ。


(え? どういう意味? もしかして、全部xxのいたずら?)


(さっきからお前の声が聴こえてきてるんだ)


(ぼく、何も喋ってないよ)


(俺もだよ)


(もしかして)


(……信じられないけど)


(心の声が聴こえてる?)


(らしいな。信じられないけど……それに、ここ、どうなってる? なんで夕方なんだ? 俺たち、夜になってからビルに入ったよな)


(……分からない。けど、xxは今どこに居るの?)


(家に居るよ)


(ちょっとまって、ぼくも今からそっちに行くから)


 そしてぼくは混乱した頭でxxの家に向かった。


「どうやら、俺たちは良く似た別の世界に来てしまったらしい。つまり、パラレルワールドだな」


 xxの部屋に入ると、彼はマウスを動かしながらそう言った。


「は?」


 ぼくは、意味が理解できなかった。パラレルワールドって言葉の意味はもちろんわかってる。多元宇宙とか、別次元とか……そういう感じの意味だ。


 だけど……どういうことだろう?


 ぼくたちはビルに入っただけだ。それがどうして別の世界に?


「ネットで調べたんだけど、この世界じゃどうやらテレパシーが使えるらしいんだ。つまり、お互いの心の声が聞こえて、それで会話が出来るらしい。それ以外のことは、俺たちが暮らしていた世界とほとんど変わらないな。違うところと言えば、歌の文化が無いことくらいだな。この世界の連中はテレパシーで喋ってばかりいるから、耳が退化してるらしい」


「そんな……」


 馬鹿な。と、言いたかったけど、彼の言っている言葉は正しいって、ぼくはもうわかっていた。だって、さっきまでぼくたちはテレパシーをしていたからだ。


「で、でも、それならおかしいことがあるよ」


「なんだ」


「ぼくたちが別の世界から来たなら、この世界に居るぼくたちはどうなってるの? この家に暮らしていたはずのxxは?」


「それは……わからない。でも、この家があるってことは、この家に暮らしている俺も居るはずだけど……今の所、帰ってくる気配はないな」


「……ぼく、一度家に帰ってみるよ」


「ああ、そうだな。そうしてみてくれ」


 ぼくは急いで家に帰った。毎日通っているはずの帰り道なのに、今は全く別の道を歩いているような感じがした。

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