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ぼくのいない世界  作者: 松永晋也
ちょっと不思議な世界(2011年6月)
11/33

 この世界は不思議で満ちている……らしい。


けれど、ぼくの周りでは不思議なことなんて一つも見つからない。

カッパもツチノコも、超能力も奇跡も無い。けれど、ぼく達はそんな不思議をいつも探していた。



 ぼくとxxは今、電車に乗っていた。すでに窓の外は夕焼け空だ。目的地に着く頃には、完全に暗くなってるだろう。ちょっと悪いことをしてる気分だ。


「幽霊が出るって、本当かな」


「本当じゃないなら、今週も新聞は休刊だな」


「先週のUFOの話も収穫無しで休刊だったし、今週もそうだったら、そろそろ休刊どころか廃刊になっちゃうよ」


「……だな、今回は頑張らないと」


 ぼくとxxは二人で作った新聞部に所属している。

そして当然、二人で新聞を書いていた。最初のうちはテーマは色々だったけど、紆余曲折があって、最終的には今の都市伝説系の内容に落ち着いた。都市伝説についての記事はすごくウケが良いからだ。みんなの役に立つかと言われると微妙だけど、ともかくみんなに読んでもらえるっていうことはとても嬉しいことだし、記事を書く気力にもなるから、自然とそうなってしまった。


 ただ、ぼくたちはそこらへんのゴシップ記者とは違うから(そう、記者としての誇りってものがあるんだ)、しっかりと取材するし、内容に納得できなかったら記事にはしない。そんなこだわりのせいで、ここ二ヶ月くらいはずっと休刊が続いていて、みんなからぼくたちの新聞の存在は忘れられかけられていた。


ここで一発、なにかインパクのある記事を書きたい。そう思っていたところに、隣町の幽霊ビルが話題にあがって、それを調べることになった。


「でもさ、幽霊なんて、呪われちゃったらどうする?」


「お祓いしてもらえばへーきだよ、ま、どうせ幽霊なんて居ないけど」


 xxは、こんな仕事をしているというのに、幽霊とか、怪物とか、UMA(ユーマ)とかを少しも信じていない。

ぼくはそういうものを信じているからこそこの仕事を楽しんでいるんだけど、xxは何が楽しくてこの仕事をしているのか、時々不思議に思う。


もしかしたら、ただ彼は記事を書きたいだけなのかな。

 ぼくはどちらかというと取材をしているときの方が楽しいけど……記事はxxがいつも一人で書いてるし。

 うん、そうかもしれない。


「そうだ、お守り買ってからいかない?」


「お守りなんて持ち込んだら、幽霊が出てこないだろ」


「あ……そうか」


「でもまあ、清めの塩くらいは持っていっても良いかもな。いざってときは塩をぶっかければ幽霊退治できるかもしれないし、幽霊退治したって方が記事も面白くなるし」

 xxは笑いながら言う。


「たしかにね。清めの塩って、スーパーで売ってるかな」


「流石にスーパーでは売ってないだろ。神社とかじゃないと」


「そっか、じゃあ神社に買いに寄ろうか」


「ああ」


 今日のぼくたちの目的地は、隣町にある廃ビルだった。噂によると、毎日のようにそこで幽霊が目撃されているらしい。


 まあ、本当に毎日幽霊が出ているのならどうして誰もその写真を撮っていないのか謎だし、情報源をたどっていっても、『友達の友達』からの情報しかなかった。


 つまり、直接そこに出向いて幽霊を見たって人間は一人も見つけられなかったから、正直あんまり信憑性は高くないだろうということは分かってる。


「幽霊って、カメラに写るかな」


「心霊写真は世の中にいっぱいあるし、多分写るだろ」


「そっか。そだね」


「そんな心配よりも、もしも今回もガセだったときのために、別のネタを探しておいた方がいいんじゃないか?」


「そういえばさ、駅前の大きなショッピングモールあるよね、あそこは?


「ああ、自殺した人が出るってやつか」


「そうそう。本当かな?」


「どうかな」

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