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ぼくのいない世界  作者: 松永晋也
やさしい世界(2010年7月)
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 最近は晴れが続いている。


 みんなは「暑すぎる」とか「地球温暖化だ」って言ってるけど、ぼくからすれば、ずっと道を歩いていたくなるような、ちょうど良い陽気だった。そう、ほんとうは学校に行かないで、いつまでも散歩していたいくらいに。

 だけどぼくはちゃんと学校に行く。今週頑張れば来週からは夏休みだし、それくらいはきちんとしないとね。



「おはよう、飛鳥あすか


教室に入ると、先生はもう教室にやってきていた。


ルーズな人だから、ホームルームの時間になっても来ないことがよくあるけど、今日はやけに早い。月曜日だからかな。


「おはようございます」


「先週のコナンのスペシャル、面白かったな」


「盛り上がってきましたね。そろそろ黒の組織と全面対決してくれると良いんですけど」


「だよな。ま… … そろそろ終わりは近いだろ」


「先生はコナンの黒幕って誰だと思います?」


「アガサ博士だろ。それ以外にない」

先生は断言した。


「ええー… … そうかなぁ?ぼくは違うと思いますけどね」


「いやいや、いい人っぽいやつの方が怪しいんだよ」


「おはようございます」


「おはよーっす」


教壇の前に立って先生と話しているうち、どんどん他の生徒達も教室に入ってくる。彼らも教壇の近くに集まって、みんなコナンの話に混じってきた。


一人、また一人と教室に入ってきて、話に加わる。

そしてホームルームがもう始まるという時間になって、ようやく最後の一人が教室に入ってきた。黒いサラサラとした髪の毛をした男の子。目つきは穏やかで、少しだけ悲しそうにも見える。


「おはよう『XX 』」

先生は笑いながら彼に挨拶をするけど、

「… … おはようございます」

彼は元気がない。


そしてそのまま一人ぼっちで席に向かっていく。先生はやれやれって感じで肩をすくめると、それ以上は深追いしないで、他の子達とコナン談義の続きを始めた。


ぼくは先生の側を離れて、xx の後を追って声を掛けた。


「今日は元気ないね」


「… … そんなことないよ」

xxはそう答えた。


「先週のコナン、見た?」


「見てないよ」


「えーなんで?」


「… … なんでって言われても、見てないものは見てないんだから、仕方ないだろ」

そう言って、彼は会話を打ち切ろうと本とノートを取り出した。

予習を始めるみたいだ。


……けどおかしい、彼はじつはコナンが大好きなんだ。漫画も揃えているし、アニメも欠かさず見ている。普段なら、アニメでまだやっていない回を嬉しそうにネタバレしてくるのに、それをしてもこない。


「何かあったの?」

 ぼくは少し心配になってきて、彼に聞いた。

「別に」

「本当にぃ?」

「… … うるさいなぁ。なんでも無いって!」

 彼はそう言って、数学の本に視線を落とした。けれど、なんだろう。何か嫌な感じがする。きっと何かあったんだ。ぼくにはそれが分かる。だって、ぼくは彼の親友だから。


 … … けど、何かがあるってことが分かっても、何かができるわけじゃない。


「ねえ。今日学校が終わったらさぁ、カカシ屋に行こうよ」

 ぼくは彼に提案した。けど、彼は顔をあげてくれない。


「今日はパス。そういう気分じゃない」

 顔を落としたまま、xx はそう言った。


「なんで?遊戯王、新しいパック出るのに」


「… … あ、そう言えばそっか… … 」

 xx は顔をあげて、本を閉じた。


「二人でお金出してさぁ、ボックス買いしようよ! 半額づつ出してさ」


「そんなお金無いよ。千円しか無いから」


「じゃあ別の人も誘おうよ」


「別に1ボックスも買う必要ないだろ。俺も6パックだけなら買えるから、二人で行こう。で、欲しいカードがあったらシングル買いすればいい」

 彼は冷静に言う。xx はいつも冷静だ。


「そっか。そうだね」

 けど、良かった。そう思って僕は笑った。

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