宴
【ハルペスカペル王国:ハルペスカペル繁盛街】
ついに始まった勇者一行の安全、そして魔王討伐のための宴。王国全土、皆華やかな服や髪飾り、新調したであろう武器や防具を身につけ勇者達を祝っている。
─華やかなでいられるのも、今日限りかもしれないというのに、民達は嬉しそうだな
女も男も子供も老人も皆が笑顔で笑っている。戦争を今から行おうとしているというのに。だがしかし今のうちに笑っておいた方が良いのだろう。戦争が始まればこの笑顔も時期に消えてしまうだろう。
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【ハルペスカペル:貴族街】
「これはこれは、断罪の聖女様ではありませんか」
「………」
皆に聞こえる声の大きさで私の名を喋る腹立たしい伯父様はニタニタと笑いながら私の顔を見ている。
「やはり、美しいですね貴女様の瞳は。まるで鮮血を浴びたかのようですね」
嫌味なら嫌味といえばいいのに、と回りくどい罵りにウザったい気持ちと追い詰められる感覚に少し気分が悪くなってくる。しかし、彼は伯爵の地位にいる貴族。応答しないわけにはいかない。
「あらあら、どうもハンス伯爵。それに私の瞳は加護を下さったタナトス神が下さった物。まるで私の瞳、タナトス神から下さったこの瞳を侮辱するかのように聞こえたのですが?」
伯爵は少し焦るように、いやいやと言葉を続けた。
「私は貴女の瞳を美しさを強調したまで。侮辱に値するのであれば、誤解を生んでしまい申し訳ない」
そう言うと深々と頭を下げた。
「いえ、私も少し目立つ瞳ですので表すのは難しいでしょう。」
それでは、と私は最後の言葉を返すとまたお会いしましょうと礼儀正しく頭をまた下げてきた。
礼儀正しいのは良いが正直息が詰まる。
私は離れの所まで歩いていくとドっと疲れたのかはぁ、と息を漏らしてしまった。
「あら、ため息なんて貴女もするのね」
「!!………精霊の聖女様でしたか」
「ほかに誰がいるというの?この美しい薄緑色の髪の娘は」
「自分で言ってて恥ずかしくないのですか?」
「やぁね〜、そんな物とっくに捨てたわ」
そう言うと彼女、精霊の聖女は女らしく笑った。
彼女は私よりも早くに教会に入り、そして他の勇者と共に魔王討伐軍として参加した人物だ。
しかし前回起きた戦争にて勇者は死亡、その他のメンバーも全員勇者と同行していたが死亡したとの事だ。だが彼女は運良く生き残った、理由は分からないが風の噂では流行り病に侵されてしまい、医者に診てもらっていたとか。加護を何回も使った副作用で寝込んでしまった等々………
その真相は分からないが、まぁ私には必要の無い情報だろう。
「さっきまであの新人ちゃんのことみていたでしょう?」
「えぇ、私の後輩ですので心配で見ていましたが何か?」
「ふふ、良いわねぇ〜若者って感じで〜」
「罵っておられるのですか?」
「違うわよ〜ただねあんまり心配しない方が良いわよ。あの子も聖女、そうであれば貴女だって聖女なのよ。もしかしたら貴女も戦争に行くかもしれないのに誰かの心配はもっと荷が重くなるだけよ?」
「………肝に免じておきます。」
「うんうん」
私も戻らないといけないから〜、と言って精霊の聖女はこの場から姿を消した。
正直言うと、あの人は苦手だ。自分ではなく、誰かが中心でそれなのに自分のことは後回しにして。欲もなく愛もなくただひたすら魔族を殺すことだけを生きる糧にしている人だから。