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マリア様のお慈悲

 誰も知らない僕だけの秘密。

 遠い暗い寒い夜、僕が寝かしつけられたいた店で惨劇があった。

 殺されたのは娼婦たちだけじゃない。

 店長もボーイも強面巨漢の用心棒さえも。

 僕以外は全員。

 ひときわ派手で胸元の開いたドレス姿のまま干からびている母を見ても僕は現実に向き合えず、その場を逃げ出した。

 降りしきる雪が街灯の鈍く輝く光をミラーボールのように反射して、まだ店の中に居るように思えて、銀色の闇から逃れるべく僕は無心で走り続けた。




 たどり着いたのは古く寂れた教会。

 かじかんだのか震える手足に必死に力を込めて中へ。

 暗闇のなか神々しく佇むマリア様になぜか母が重なり、僕はその御御足へと縋った。

 僕を助けてくださいと、声に出してしまったかもしれない。


 そんな僕の頬にひと滴。見上げたマリア様が泣いていらした。

 血の涙の奇跡。

 僕は頬のそれを指で拭うと、恐る恐る舐めてみた。

 甘く、やさしく、母さんのお乳と同じ味がした。

 気がつけば僕はマリア様の瞳に直接唇をつけ涙をすすっていた。

 温もりが全身へと広がり、心が昂ぶる。

 浮遊感に万能感。

 実際、宙に浮いていたし。


 でもそのときはまだ理解っていなかった。

 僕は生き延びてなんかいなかったってことに。




 子供の姿のまま何百年も夜に忍び、マリア様のお慈悲だけを糧に存在を維持している僕は、今も探している。

 あの夜、徒らに僕を眷属へと変えた吸血鬼を。

 今もなお続く悪夢の夜から僕自身を解放するために。




<終>


吸血鬼

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