交戦
確認。西門見張り台、三。ここから潰す。連絡には、下へ降りた後、広場を走る必要がある。
静かに、見つからないように、登っていく。一応、死角は教えてもらった。そこからはみ出ず。
上まできた。一気に。
頭を掴み、首を晒させ、刺し込む。抜いて、次は後ろから、頭を。あと一人。予備に持ち替え、目から、脳へ。
西門、残存兵なし。シュメル、やったよ。
降りて、中へ。出来るだけ、物陰から。他の見張り台は放っておく。どうせ大して見えないし。
司令部に侵入する。上を殺せば、軍は機能を失う。
廊下、誰もいない。部屋の確認。いない、いない、いない、いた。どうやら、寝室のようだ。
狙って、落とす。それだけ。それだけで、敵が起きることはなくなる。
一階は他にいない。上に上がる。階段、音に気を付けて。誰かは、起きているはずだ。戦闘もあり得る。その時は、拳銃も使うかも。
廊下、いた。こっちに来る。
ふぁぁ、眠い。上官め、若いからって…。今頃下でぐっすりか。でも、もう交代の時間だ。よく寝よう。
『ズッ』
体の感覚がなくなる。女の子?なんでこんなところ、に…。
よし、片付いた。落ちたら音がするから、支えてる。ゆっくり、倒して。
よし、探索。いない、いない、いた。今のうち。
一瞬、驚きはした。でも、流石は軍人。すぐに拳銃を構えようと。でも、させない。音が出ちゃう。
一人目、腕を切りつけて、二人目、足で蹴りあげて、三人目、ビビってる。若いのに、ごめんねー。あ、僕より上か。
後は処分するだけ。
司令室だ。さて、どうする。そうだ。うん、内開きだし、ちょうどいい。
『コンコン』
「入れ。」
こんな時間に誰だ?しかし、ノックの音で起きれるなんて。歳をとると、よく眠れなくなるもんだな。
ん、入ってこない?
「どうした、はやく入ってこい。」
返答はない。私を舐めているのか!?ええい、どこの、どいつだ!
扉を開ける。誰もいない。
かかった!しゃがんでいるから気づいてない。首、もーらい。
多分、こいつがここの司令。まだ、残ってるかもだけど、下士官残ってるかもだけど、これでとりあえずは。
味方に報告しないと。火をつけて、窓開けて。
すぐに逃げないと。音は気にしない。皆死んでるから。
合流すれば、僕の仕事はおしまい。後は、味方が敵を蹴散らす様を、ゆっくり見物するだけ。
物陰に隠れる。敵兵だ。数は一。報告にきたかな。煙は、まだ気付く程ではない筈だ。
『ダァン』
リボルバー解禁。今は時間が最優先。悠長に暗殺はしてられない。
急いで建物から出る。走る。敵がいる。
『ダァン、ダァン』
走っていても、当たるもんだな。距離がつまった。ナイフでひと突き。物陰へ。味方ももうすぐ来る筈だ。あと少し。
空の薬莢を抜き、装填。出る。
『ダァン、ダァン』
このまま、門まで。
あ、足が。え、嘘。
右足に強い衝撃。姿勢を崩し、前に倒れる。立てない。
痛い、痛い。やだ、痛い。立てない。このまま、殺される?嫌だ。
『ダァン、ダァン、ダァン、ダァン』
弾道がぶれぶれだ。震えて、うまくいかない。あれ、弾が出ない。そうだ、六発しか。
やだ、来ないで、やだ。
腕を掴まれる。両腕を。銃剣、持てない。
このまま、終わり?やだ。シュメル、シュメル。シュメルを守れない。守らないといけない。
痛みが消えた。もう少し、無理できる。
腕を引く。右手が空いた。銃剣。相手の手を切り落とし、左手も空いた。
「う、がぁぁぁぁぁ、あぁ、ぁぁ。」
痛みで動けないか。出血も酷い。止血出来なければ、すぐに死ぬだろう。
リボルバーを投げつける。頭に直撃。多分、壊れていない。まあ、壊れても仕方ない。シュメルのためだもの。
敵、いない。リボルバーを拾う。見た目は、問題ない。
「シャロン中尉!」
友軍だ。これで終わり。足は…、撃たれてた。弾は貫通してる。沢山血が出たみたいだけど、今は止まっているみたい。何でだろう。
でも、おかしいな。まだ、剣も槍も弓も、使われてる筈なのに、銃ばっか。ナイフと、銃。それ以外は、見かけてない。装備していないだけではない。どこにも置かれていないのだ。指揮系統をつぶしてよかった。こちらの主兵装は剣。銃は僕含め、五人。圧倒的に不利だ。まあ、一応戦い方はあるらしいけど。でも、統率のとれた、大多数の、銃を装備する敵に立ち向かうには、貧弱だ。
「なんで笑っているのですか!傷の手当てをします。こちらへ。歩けますか?」
「うん、問題ない。」
いつの間にか笑っていた。表情作って、よし。
制圧完了。銃と弾薬が沢山手に入った。食糧もたっぷりあるし、補給なしでも暫く引き籠れる。友軍の到着を待ち、進軍。
捕虜はどうするのだろう。そういった条約は、いまのところない。決まりも特になく、指揮官の気分次第では的にしてもよいらしい。そういう記録も残ってるとか。
まあ、そんなことしてもつまらないし。やるとしたら、故意に脱走させ、大義名分を作り、殺す。
傷は、もう治ってしまった。理由は不明だが、そんなこと無視。傷の治りが早いならと、引き続き酷使されることに。いや、気にしろよ。早いって、早すぎだろ。
「シュメル、怪我、本当にない?」
「うん。シャロンのほうが、たいへんそうだったけど。」
「何でだろうね、治ってるんだ。
それで、これからは何をするのだろうか。」
このままの勢いで~、はないだろうが、駐屯、というのも…。かといって、引き返せば取り返される。ここで増援を待つべきか。一体何日掛かる。敵の部隊が来たら、あっという間に落ちるぞ、ここ。
捕虜、17人。暴れすぎたか。僕を見た瞬間、絶望、って顔した。そんな酷いことしないよー。君たちがしないなら、ね。
隊長は「任せる」って言ってたけど、面倒ごと押し付けてきただけ。上官にそんなこと言われたら、断れるはずないんだから。だからって、更に下に押し付ける訳にもいかない。『僕』が、『上官』に任された訳であって、他の奴に任せることは、上官に対して失礼であるから。
「悪いようにはしない。いまのところは、ね。反抗的な態度をとるのなら、今すぐにでも、焚き火に参加してもらう。いいね。」
つまりは、おとなしくするなら面倒みるけど、反抗的なら殺して、他の奴等と同じように、死体をまとめて燃やすから、と言っているのである。
「そうだな、とりあえずは、ここの中でおとなしく生活していてくれ。食事も全員分運ばせる。まあ、満腹にはなれないだろうが、それは我々もおんなじだ。耐えてくれ。
ああ、あと、なにもしないのは退屈であろう?トランプだ。一箱しかないが、まあ、仲良く遊んでくれ。これが原因で喧嘩とかすれば、問答無用で皆殺しにするから。君たちの扱いに関しては、すべて僕が決められるんだ。」
一瞬、嬉しそうな顔したあと、すぐに何かを怖がるかのように。表情豊かでいいじゃないか。
「それじゃ、仲良くねー。また、来るから。」
遊び道具を与えつつ、恐怖心を植えつける。飴と鞭、って言うの?こんな感じでいいのかな。
ゲリラは、帰ってきたところを皆殺しにしたし、こいつらの面倒をみつつ、ここでゆったり、増援を待つことにしよう。敵の急襲は、暫くないと思いたい。まあ、最悪施設を破壊し、放棄するがな。爆薬は既に仕掛けてあるから、10分後には、木っ端微塵だ。ついでに、瓦礫で道が塞がるので、敵は随分と困るのである。