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ライフル銃とTS少女  作者: くりいか
西方軍にて
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侵攻

 捕虜は収容所でも全員大人しくしているらしい。食糧も回ってきて、隊も立て直せた。

 我々は侵略戦争をしたい訳ではない。ここで攻めこみ、国力を大幅に削るようなことになれば、その後、第三国の攻撃により、国自体が滅びかねない。それだけは、絶対に避けたい。初めは上層部も、そう考えていたらしい。

 が、問題が起こる。王が―大臣が王の名のもとに―「危険分子を放っておくことは、我が国の、そして周辺国の安全を守る為にも、許されない行為である。」として、上層部を解任してしまった。

 さあ困った。統帥権は大臣が、我々は攻め込まねばならなくなった。戦争のやり方も知らない、軍の限界も知らない文民がでしゃばるから。文民なら文民らしく、戦争をさっさと終結させろよな。

 戦争を終結させるチャンスをひとつ逃した。おまけに、侵略戦争も開始し、長期化が見込まれる。列強への警戒は?まさか留守にするなんてことはしないよな。しかし…。侵略戦争においては、長期化すれば厳しくなるのはこっちだぞ?平常時ならまだしも、戦争状態にある国を、短時間で攻め落とせる筈がない。力尽きるのは、我らアルデンタ王国軍のほうだ。

 そして、僕は王都に向かっている。今更だけど、暴れすぎた。一番の功労者として、褒章を授けてもらえるのだと。やだなあ、めんどくさい。目立ちたくない。前線から離れたくない。

 味方に任せると、ろくなことが起きない。ゲームなんかやってて、我が方が優勢であると判断し、味方に任せ、偵察にでると、気づいたら味方が壊滅している。数の差なんか、陣地の差なんか、一瞬で埋まる。有能な味方ならよいが…、有能であっても、無能であっても、敵との差が広がれば、負けるか。

 自分がいないところで、味方が破れる、ということは、絶対に避けたいのである。だから、戦略的な事柄ならまだしも、授与式なんて、言ってしまうが下らない理由で、戦場から降りたくないのである。

 とは言っても、断ろうにも断れない事柄である。これを断ろうというのなら、国王への失礼に当たり、活躍した筈が、処刑されかねない。あー、めんどくさい。

 適当に済ませるか。


 疲れた、精神的に。こういう時こそ、寝て休みたいのに。寝れないとリフレッシュが難しいな。

 銃剣は研いだ。刃物の研ぎ方は、料理人だったおじいちゃんが教えてくれた。もう死んだけど。

 家族は、今、どうしているのだろうか。戦場じゃ、こんなこと考えている暇さえなかったな。考えないようにしていただけか。やっぱ前線に居たい。

 こっちにきて二年近く、いつの間にか経ってたな。その間に、かつていた世界、地球はどうなったのだろうか。やはり、別の世界であるから、時間の流れは違うのだろうか。だとしたら、一秒しか進んでいない、なんてこともあり得るだろうか。もしかしたら、一万年、二万年と進んでいるかもしれない。

 前線はどうなっている。シュメルは…。確か、事を急いだ上層部が、僕を待てないからと。上も上で勝手だよ、まったく。時間的に、そろそろ作戦開始。味方部隊も加わり、大幅に戦力は増強され、銃火器部隊も増えた。中規模な基地でも比較的容易に落とせる筈だ。小規模な、駐屯地に毛が生えた程度の基地なんか、すぐに落ちる。

 僕も明日には出発だ。今の内に、万全に。


 困った困った。

「部隊からの連絡が来ていない?そんで、出れない?」

「はい。安全が確保されていない状況で、出発させる訳にはいきませんので。」

 何故だ?あの程度の基地なんかに、何を…。こちらの戦力は二個大隊。

「いい。僕だけで行く。何をしてるんだ、奴ら。」

「しかし…。」

「出せないのは、補給物資だろう?べつに、僕を行かせてはならない理由はない。そうだろう?」

 ああ、はやく行かせろ。不安なんだよ。この目で確認したいのだ。

「ですが…。」

「まあまあ、行かせてやってもいいじゃないか。」

「しょ、少将殿!?」

 ほお、少将の命令とあらば…。

「では、行って参ります。」

 可能性があるとすれば、敵に包囲された、か。最悪の想定だが。



 そろそろ、基地に着くが…。血の匂い、まだ新しい。戦闘が、行われた?現在進行形だろうか。後ろっ!

 暗殺は、一撃で決めなくてはならない。理由は、

『ズッ』

 相手の実力が自らよりも上であった場合、自らが獲物になってしまうからだ。

 もう死んだ。通信兵は、多分ここで、狩られていたのだろう。連絡が来ない訳だ。前線は?大丈夫なのか…。



 ところどころに血痕が。死体は片付けているようで、ない。だけど、すこし臭いもする。

 基地を覆う壁は、一応は無事である。門は閉ざされている。

 付近に敵も味方も見当たらない。味方は増援を待ち、籠城。敵は部隊を整えつつ、待機といったところか。あまりうろちょろしていると、巡回の兵に見つかるかもしれない。勿論、敵の。この状況で、基地の外側に出すなんてことは、まずないだろう。通信兵も狩られていたのだから。

 さて、入れてもらえるだろうか。

 大声を出して呼べば、敵にも気付かれる。どうしよう。

 そうだ。見張り、見張りがいる筈だ。

 移動する。

 こっち、気付いて、こっち。

 気付いてくれた。え、その制服、敵の。ああ!

『ピィー』

 笛、やはり敵。陥落していない前提でいた僕がバカだった。でも、それだと。

 まずは離脱。逃げる。この状況で、一人で乗り込んでも、殆ど意味がない。


 仕方がないので、森の中に逃げ込んだ。奥まで進んでいないし、ところどころ獣道もあるし、まだ大丈夫だと、信じたい。ここで遭難とか洒落にならん。

 なんか、煙臭い?山火事、でも、今の時期は、自然には起きない。人だ。

 こっちの方。臭いがきつくなってくる。普通の臭いじゃない。なんか、別の臭さ。

 人が燃えている。何人も。既に死んでる人もいれば、のたうち回る人もいる。変な臭いは、人が燃えている臭いか。確かに、肉が焼けていくような匂いもする。髪や、服が燃える臭いが強いだけだ。

 へえ、そんな中でも無事なんだ。僕が好きになっちゃうのは、どうしてこんな、壊れた奴ばかりなのだろう。僕が壊れているからか。こんな状況で平然としているんだから。この状況を造り出した彼女程ではないな。

「ねえ、シュメル。」

「シャロン、良かった、無事で!私、ずっと、寂しかったの!基地は攻め込まれるし、皆は勝手に燃えちゃうし。」

「燃やしたのはシュメルでしょ?」

()()()()()()()()()()()?」

「じゃあ、自然に発火したのかな。山火事の起きないこの時期に、燃えにくい人間が。」

 なんで僕は、いや、興味か。追い詰められたら、シュメルはどうするのか。やっぱ僕は狂ってる。おっと。

「なんで、そんなこと聞くの。」

「僕の首は、少なくとも今の君ではとれないよ。

 僕は、確認をしているだけだよ。違うなら違うと言えばいい。事実を述べればいい。その上で、僕はシュメルが好きなんだ。きっと、シュメルの異常性が。」

「シャロンのほうが、異常じゃない。…仕方ないじゃん。皆、騒いで、争って。食糧だって、とれる量は少なくて、皆取り合って。味方同士で醜い争いを繰り広げるのなら、皆仲良く死ねばいい。」

「嬉しいな。僕が前に言った言葉だ。そう、醜い争いを繰り広げるのなら、皆仲良く死ねばいい。シュメルは偉いね、愚かなる存在に、救いを与えたんだ。それでいい。()()()()()()()()()()。」

 シュメルが無事なら、シュメルが僕を好きなら、僕がシュメルを好きなら、それですべてよいのだ。

後半大変なことになった。

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