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女優魂

作者: さきら天悟
掲載日:2017/09/18

「私は彼女のことが許せません。

あんなことをさせるなんて」

レポーターに取り囲まれ、彼女は答えた。

彼女はくッと上を向く。

涙を溢すまいとしたが、ひとすじ頬をつたった。


「非常識じゃありませんか?

初日の3日前に降板するなんて」

レポーターがマイクで彼女の胸を刺そうとする。


彼女はキッと視線を合わせる。

そのレポーターのテレビ局のカメラに。

「こんな状態では女優として舞台に立てません」


彼女は下を向く。


「あなたにしかできない役なの、っていたただいのに」

彼女は呟くように言った。

カメラは映った彼女の涙がキラリと光った。




「考えられません。

3日前に降板するなんて」

自称100年に一人の大御所俳優が吐き捨てた。

お前ごとき中途半端な女優が、と言いたけだった。


一流女優Wが初演と主演する舞台で、女優が降板した件が、

ワイドナショーの話題となっていた。

一流女優が次の仕事で抜ける女優に土下座させたとか、

と司会者が内容を説明した。

一流女優と説明したのは、現在では人気女優と言えず、

だが演技には定評があるからだ。


Wはレポーターに涙ながらに、

「私はそんなことをしていません」

と断言したVTR映像が流された。


司会者は神妙な顔をする。

「Wさんは記者会見をする予定はないそうです。

理由は舞台に集中したいからだそうです。

会見した方がレポーターに付きまとわれなくて済むから、

集中できると思いますけどね」


「だったら、舞台が終わってから、やればいい」

大御所俳優が言い、次の話題に移った。





この件は、連日、ワイドショーで取り上げられた。

特に他の話題もなかったからだ。

降板した女優は、インタビューに答え、

最後はいつも耐えかねたように涙を流した。

一筋なみだを落とす時もあり、むせび泣く時もあった。


ワイドショーのせいもあり、舞台は盛況だった。

舞台評論家の評判も高かった。

テーマは人間の尊厳について、

生きるため、いや子供を育てるために体を売る女性。


初演出を手掛けだWは絶賛された。

ワイドショーを見ているせいか、

皆テーマに入っていけたのだった。



追加公演が実施され、千秋楽を迎えた。

ついに最後の舞台の幕が下りた。

そして、カーテンコールの幕が上がった。

Wを中心に出演者らが並んだ。

その時だ。

ワー、と観客が声を上げた。

Wの横に降板した女優がいた。

Wは彼女の手を取り、天高く上げた。


女優の降板、それはWのヤラセ、いや演出だった。

あっちの方も、こんな幕引きだったら面白いのになあ~

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