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女優魂

作者: さきら天悟

「私は彼女のことが許せません。

あんなことをさせるなんて」

レポーターに取り囲まれ、彼女は答えた。

彼女はくッと上を向く。

涙を溢すまいとしたが、ひとすじ頬をつたった。


「非常識じゃありませんか?

初日の3日前に降板するなんて」

レポーターがマイクで彼女の胸を刺そうとする。


彼女はキッと視線を合わせる。

そのレポーターのテレビ局のカメラに。

「こんな状態では女優として舞台に立てません」


彼女は下を向く。


「あなたにしかできない役なの、っていたただいのに」

彼女は呟くように言った。

カメラは映った彼女の涙がキラリと光った。




「考えられません。

3日前に降板するなんて」

自称100年に一人の大御所俳優が吐き捨てた。

お前ごとき中途半端な女優が、と言いたけだった。


一流女優Wが初演と主演する舞台で、女優が降板した件が、

ワイドナショーの話題となっていた。

一流女優が次の仕事で抜ける女優に土下座させたとか、

と司会者が内容を説明した。

一流女優と説明したのは、現在では人気女優と言えず、

だが演技には定評があるからだ。


Wはレポーターに涙ながらに、

「私はそんなことをしていません」

と断言したVTR映像が流された。


司会者は神妙な顔をする。

「Wさんは記者会見をする予定はないそうです。

理由は舞台に集中したいからだそうです。

会見した方がレポーターに付きまとわれなくて済むから、

集中できると思いますけどね」


「だったら、舞台が終わってから、やればいい」

大御所俳優が言い、次の話題に移った。





この件は、連日、ワイドショーで取り上げられた。

特に他の話題もなかったからだ。

降板した女優は、インタビューに答え、

最後はいつも耐えかねたように涙を流した。

一筋なみだを落とす時もあり、むせび泣く時もあった。


ワイドショーのせいもあり、舞台は盛況だった。

舞台評論家の評判も高かった。

テーマは人間の尊厳について、

生きるため、いや子供を育てるために体を売る女性。


初演出を手掛けだWは絶賛された。

ワイドショーを見ているせいか、

皆テーマに入っていけたのだった。



追加公演が実施され、千秋楽を迎えた。

ついに最後の舞台の幕が下りた。

そして、カーテンコールの幕が上がった。

Wを中心に出演者らが並んだ。

その時だ。

ワー、と観客が声を上げた。

Wの横に降板した女優がいた。

Wは彼女の手を取り、天高く上げた。


女優の降板、それはWのヤラセ、いや演出だった。

あっちの方も、こんな幕引きだったら面白いのになあ~

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