王都アスロン
3話
ダラン王国 首都『アスロン』
大陸最大の国ダラン王国の首都であり、王城が存在する。
王都は街の中心に建ち、街は王城を中心に円を描く様に貴族街がある。その更に外側には市民街が広がっている。
首都全体をぐるりと囲むように城壁が立っており、城門は東西南北それぞれに一箇所ずつ存在する。
そんな大都市であり、王国首都である。
その北の城門に1人の商人と筋肉の姿があった。
「凄いな、これは」
俺はマルクスの護衛として歩き始めて2日目にして、遂に王都が見える所まで来た。俺はこの世界に来て初めて見る城と城壁に感動の言葉を洩らした。
余談だが、マルクスにウサギ跳びは禁止されている。ウサギ跳びをしている時は気がつかなかったが跳び上がる場所と落下場所にクレーターが出来ていた様だ。
王都に近ずくと道も整備されており、クレーターを量産されると困るとの事、確かに後で修理しろと言われても面倒だし、実際、ウサギ跳びは近年、筋トレとして意味がないどころか腰を痛めるだけなのでやる意味があまり無い。その事をマルクスに伝えると
「意味無いんかいっ‼︎(ビシッ)」
素早く突っ込みが入った。
マルクスは突っ込みの才能がある様だ。
しかし、突っ込むにしても筋肉は必要だ。上腕二頭筋及び、腕橈骨筋をもう少し鍛える必要があるな。俺はマルクスの突っ込みに対して、筋肉方面からの評価をするのであった。
そんなこんなで意外に短く充実した2日間の旅、そびえ立つ巨大な城門を通り、俺達はまたの再会を願って握手を、、なんて事には成らず。
俺は城門の前で5人の兵士に囲まれている。
何でこんな事になったのか?
なぜ皆、睨んでくる?
あ、1人だけ笑うの堪えてる。
少しも怪しく無いと思うのだが(ムキッ)
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side<衛兵>
俺はいつもの様に門を通るものを監視し、身分証の確認を行う。そして、身分証を持たないものに対しては犯罪歴が無いかを審議の玉で確認し怪しくなければ仮身分証を与える事を繰り返す。担当の時間が終われば友達と酒を飲みに行く、平和な1日になるはずだった。
なるはずだったんだ、、、
「なんだ、こいつは」
俺の目の前には1人の商人と商品を積んだ馬車、俺は城門の担当になって長いため、ある程度、顔馴染みがいる。この商人もその1人だ。
しかし、その隣のやつは何なんだ⁈
怪し過ぎる。
何でパンツしか履いてないんだ。
しかも、何で普通に歩いて来ない、なぜ、親指 逆立ち歩行なんだ⁈
怪しすぎる。
俺は奴がこの城門にたどり着く前に素早く仲間の衛兵に連絡を取り何か怪しい動きをした瞬間、取り押さえる準備をした。すでに怪しすぎるのだが。
怪しい奴はこの城門を絶対に通す訳にはいかん。
仲間の衛兵達も連絡を受け、集合した。
俺は覚悟を決めた。
「そこのお前、止まれ‼︎」
「ピタッ」その男は逆立ちのまま止まる。
そして、少し腕を曲げたかと思った瞬間
「とぉう」
掛け声と共にその場で垂直に4m浮上。空中で前転を10回。
全く音を立てず、見事としか言えない着地。
最後にサイドチェスト。(ムキッ)
「どうしたんだい?」
俺は「とぉう」じゃないだろ‼︎、「どうしたんだい」ってお前がどうしたんだよ‼︎後、何だ今やっているポーズは⁈など色々突っ込みたい感情を抑え質問する。
「お前は何者だ?」
「?、筋肉?」
(違ぁぁぁう、確かに凄い筋肉だと思うけど聞きたいのは名前‼︎しかも何で疑問系?)
「違う、名前は何だ?」
「ああ‼︎、桝木徹だ、マッスルと呼んでくれ(ムキッ)」
(なんだよ‼︎ムキッって筋肉って力入れたらあんな音なるの?ならないよね‼︎
後、マッスルって何?さっきの名前どうやったらマッスルになったの?突っ込みどころ満載で逆に冷静になって来た。)
「それではマッスルさん、身分証を提示して下さい」
「?、(ムムキッム?)」
(しゃべれよぉぉーーなんだよ‼︎ムムキッムって、身分証?って言いたかったんだよね⁉︎分かっちゃったけど、このままスルーしていいの?いいよね⁉︎もうやだ、お家に帰りたい)
「身分証を持ってないのですね」
「ムキッ(はい)」
「では、この玉に手を置いて下さい。」
「ムキキ?(これは?)」
「この玉は審議の玉と言いまして、今までに犯罪をした事がないかを確認するものです。」
「ムキキム、ムキッムムム、ムキッムムキキ?(犯罪歴があったら、この玉がどうなるのですか?)」
「何もない場合は白く、犯罪歴がある場合は赤くなります。」
男はさっきまでのポーズを一時解除し玉に手を置いた。
(会話出来ちゃったよぉぉ、何?凄いスムーズに会話出来ちゃったけど自分がおかしくなったのかな?あははははは)
俺達は唾を飲み込み、審議の玉の結果を待った。もし、今まで犯罪を犯していたなら玉は赤くなる。玉が赤くなった場合、俺達は命懸けでこの珍獣と戦わなければならない。結果が出るのは手を置いてから2秒後だが俺達にはとても長く感じられた。
結果は白だった。
(良かった。この珍獣と戦うのは危険だ。動きは怪しすぎるが、あの男はおそらく、俺達5人で一斉に斬りかかっても余裕で返り討ちにあう気がする。後、疲れた帰りたい)
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side<マッスル>
「では、身分証を発行しますので銀貨1枚よろしくお願いします。」
俺は城門前に到着時にマルクスさんに銀貨5枚貰っていたため大丈夫そうだ。
ついでにマルクスさんはすでに場内に入って俺を待ってくれている。
マルクスさん、俺が無一文である事に気づいてたのかな?
「分かった。(ゴソゴソ)あった」
「オイ、マッスルさん、どこから出してるんだ?」
「服?」
衛兵さんは口をパクパクしている。
このポージングパンツ、さすが女神のプレゼントと言うべきか中は異次元になっている様だ。物をどんなに入れても不快感は全くない。それどころか時間も止まってるみたいだ。
しかし、欠点が二つある。
まず、所詮パンツ。履いてないと使えないのにほとんど伸びないからリンゴサイズの物位しか入らない。
次に入れる時と出す時、パンツに手を突っ込む見た目になる。(実際、物を取り出す時は異次元空間に接続されるため、問題はない。)
くっさすがにポージングスーツだけだと物を渡す時、不便だな。
「カバン買わないとな」
衛兵「服買えよ‼︎(我慢できなかった)」
そんなこんなで身分証を貰い、俺はカバンを買う事を決意し城内に歩を進めるのだった。
衛兵(無視⁈)