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クラスメイトの芸能事情  作者: やまだ
1/8

二人だけの秘密

 今日もいつも通りの学校になると思ったけど、なんだか廊下がざわざわしている。

「おはよー宮子。なんか騒がしいね」

「おはよう佳奈ちゃん。そうだねー。なにかあったのかな?」

 友達の佳奈ちゃんと挨拶を交わす。そして話題はこのざわつきへ。

 すると、教室に一人の女の子が入ってきた。

「ああ、白川さんか。納得」

 教室に入ってきた女の子、白川桃華さんだ。白川さんがこのざわめきの中心にいることはこの学校に居る人なら誰でもわかるほどに白川さんは有名人だ。人気モデルで最近は人気のドラマで女優デビューもした超絶美少女で私みたいな庶民からしたら雲の上の人だ。そんな白川さんだからなかなか学校に来る日が少ないものだからたまに白川さんが登校してきた日には学校中の生徒が一目見ようと押し寄せてくるのだ。私と佳奈ちゃんは同じクラスだから何度かこの光景を目の当たりにしている。

「珍しいね、白川さんが朝からいるのって」

「うん。今日はお仕事休みなのかな」

 今の白川さんの人気っぷりだといろんなところから引っ張りだこであまりお休みは取れなさそうだけど。

 当の白川さんは何事もないように自分の席につく。その後も白川さんはたくさんの人に囲まれているものの、あまり意に介さない様子だ。

「すごいなあ。あんなに注目されてるのに超平常心って感じで」

「有名人だしそういうのには慣れてんでないの?宮子もちょっとは見習って落ち着きを持つべきだね」

「佳奈ちゃんひどくない?」

 そんな話をしてるうちに担任の先生がやってきてホームルームが始まった。今日もいつも通りの一日が始まる。国民的有名人がクラスメイトでも私たちの日常は結局のところ劇的に変化するわけではないのです。



「あー、やっと昼休みか。宮子ー昼飯にしよーぜー」

「うん。お腹すいたよ」

 佳奈ちゃんと机をくっつけてお弁当を広げる。お昼休みは学校の楽しみの一つだ。

「あっ、お茶持ってくるの忘れた……ごめん、ちょっと下の自販機で買ってくるね」

「だったらあたしも付き合うわ。なんかジュース飲みたかったし」

「ごめんね、それじゃ行こっか」

 佳奈ちゃんと一緒に教室を出て一階にある自販機を目指して教室を出て廊下に出ると相変わらずたくさんの人に囲まれた白川さんの姿が見えた。

「有名人は昼飯を食うにも一苦労か」

「だねー」

 呆然と二人でその様子を眺めていると声が聞こえてきた。

「白川ってテレビ出てるからって調子乗ってるよね」

「わかる、チヤホヤされて良い気になってるって感じだよね。お高くとまっちゃってさ」

 こういう話を聞くと自分が関係なくてもいい気はしない。白川さんは目立つ人だからこういう話がどうしても出てきちゃうのかな。

「ほら、宮子行くよ」

「あ、うん」

 佳奈ちゃんに声をかけられて我に返る。そうだ。今は飲み物を買いに行くんだった。

「白川さんはよく平気だよね。人気者って言ってもああいうことだって言われるしさ」

「うーん、やっぱり慣れてるんじゃない?そうでなきゃ芸能人なんてやってらんないでしょ。それにああいうことを言う連中ってのは身内同志の結束を高めるために共通の敵を作りたいんだよ。それにうってつけのなのが国民的アイドル状態の白川さんってことでしょ。多分白川さんもそれには気づいてるんじゃない?」

 そういうものなのかな。そうだってわかってても私だったらきっとかなり落ち込むだろうな。白川さんみたいに冷静に振る舞うのは無理だと思う。

「ま、宮子が気にしてもしょうがないって。それよりさっさと飲み物買って昼飯にしよ。それよりさ、今日の部活は何作るん?」

「うーん。今日はカップケーキとかどう?」

 私たちは数少ない家庭科部員だ。部といってもそんなガッツリ部活動をやってるかと言われると微妙なところ。一応大会みたいなのには出たりしてるから部としては認められてるみたいだけど、活動自体はほとんど自分たちが食べたいお菓子とかを作るくらいだ。

「シンプルだけど悪くないね。宮子のお菓子はハズレがないからね。放課後が楽しみになったなー」

「佳奈ちゃんもちゃんと作ってよー?」

 少し白川さんのことは気になったけど佳奈ちゃんの言った通り私が気にしても仕方のないことなのかもしれない。今は放課後の部活動に思いを馳せることにしよう。



 午後の授業も終わって待ちに待った放課後。今日はお昼に佳奈ちゃんと話したように部活がある日だ。

「まだあたしら以外は誰も来てないのかな」

「みたいだね。他の皆が来るまで待ってようか?」

「うーん別にいいんでない?先輩らだってあんまそういうの気にしない人たちじゃん?」

 私と佳奈ちゃんの2年生以外にこの家庭科部には3年生の先輩が二人いる。その先輩たちも基本的にゆるく活動したい派なので上下関係とかもあまり気にせず気さくに接してくれるいい人たちだ。

「そうだね。それじゃ私たちで先に作ってようか」

 冷蔵庫からバターに卵などを取り出して準備をする。佳奈ちゃんは調理器具の準備をしてくれてるみたいだ。

「材料も揃えたしこれで準備完了かな」

「そうね。そんじゃやりますか」

 バターを泡立てて砂糖と卵黄を加えるて泡立て器でぐるぐるかき混ぜる。

「佳奈ちゃんメレンゲお願い」

「あいよ」

 かき混ぜるのって以外に腕の筋肉を使うんだよなぁ……ダイエット効果とかないかな。

「こっちはできたよー」

 しばらくかき混ぜてる間に佳奈ちゃんがメレンゲを作り終えたみたいだ。

「ありがとー。それじゃこっちのと一緒にして……薄力粉入れて……」

 ここまでくればもう仕上げの段階だ。本当にお手軽なのがこのカップケーキのいいところだ。

「あとはカップに入れてオーブンで焼くだけだね」

 うちの学校は私立なだけあってそれなりにお金があるのか結構設備が充実してる。家庭課室には結構いいオーブンなんかもあって私たちはいろんな料理が作れるから大助かりだ。

「焼きあがるのが楽しみですなあ」

「ですなぁ」

 あとはだいたい20分くらいしたら焼きあがるはずだ。それまでは佳奈ちゃんと先輩たちを待ちつつ楽しいガールズトークです。

「ん?先輩からメールだ。……先輩ら今日はバイトで来れなくなったって。急にシフト入れられたーって愚痴まで書いてある」

「そうなの?先輩たちの分も作っちゃったけどどうしようか?」

 別に私たちでもう一つずつ食べられない量じゃない。問題なのは忌まわしきカロリーだ。年頃の乙女にとってこれは最も重要な問題なのです。

「余ったのは冷蔵庫入れとく?」

「そうしようか」

 焼き立てが一番おいしいんだけど仕方ない。先輩たちには冷蔵庫にケーキ入れてありますってメールしておこう。

 そうこうしてるうちにピピピとタイマーが鳴り響く。もう20分経ったみたいだ。

「待ってました!」

 佳奈ちゃんがオーブンからケーキを取り出す。うん、我ながらおいしそう。

「これってばいい感じじゃないの?」

「うん、それじゃ食べようか」

 取り出したケーキを早速食べることに。

「おお、うまいなー。ふわふわだ」

「ん~おいしい!やっぱり甘いもの食べてる時って幸せだよね~」

「食べ過ぎてまた太ったーって泣きついてきても知らないぞー」

 佳奈ちゃんが意地悪そうに笑って過去の傷を抉ってくる。

「も、もうそうならないようにちゃんとセーブしてるから!大丈夫だよ!……多分」

「ま、宮子は別に太ってるようには見えないから大丈夫かな……っとごめん、親から電話だ」

 佳奈ちゃんが携帯を取って何やら話込んでいる。

「ごめん、家の店の人手が足りないとかで手伝ってくれってさ。今日は先に帰るわ」

「うん、今日は金曜日だからまた来週だね」

「ほんとごめん!今度片付けとかの埋め合わせはするからさ。あとケーキうまかったよ、ごちそうさま」

 佳奈ちゃんが慌ただしく家庭科室から出て行って一人取り残される。なんだか急に静かになったなあ。


 ケーキを食べ終えて後片付けも終えたところで来週提出の宿題に必要なノートを教室に忘れていたことに気付いた。

「危ない危ない。忘れてたら洒落にならなかったよ」

 帰る前に教室に戻ってノートを回収しなければ。

「あれ?白川さん……?」

「え!?と、遠野さん?」

 誰もいないと思っていた教室には予想外の人物が。というか白川さんが私の名前を覚えていてくれたことにちょっとびっくりした。それに普段のクールな印象の白川さんからは想像がつかないような声が聞こえた気がする。

「えっと、遠野さんはこんな時間にどうしたの?」

「私はちょっと忘れ物しちゃって。白川さんは?」

「わ、私は、その、そう!私も忘れ物しちゃって!」

 なんだかあたふたした様子の白川さん。もしかして私この世で一番珍しいものを見ているのかもしれない。それにしてもなんでこんなに慌ててるんだろう。

「それじゃ私はもう帰るから。じゃあね遠野さん……ってきゃあ!」

「ちょ、白川さん大丈夫!?」

 慌てて帰ろうとした白川さんがこけて派手に鞄の中身をばら撒いてしまった。

「鞄の中身拾うの手伝うよ結構ドバーっと出ちゃったみたいだし」

「だ、大丈夫だから!気にしないで!」

 そうは言ってもさすがにこれはちょっと放っておけない。私も一緒に荷物を拾おうとすると、意外なものが目に入った。

「これって……これも白川さんの?」

「え?……あ、ああ……見ちゃったんだ……」

 私が見てしまったのは白川さんの鞄から飛び出してきた一冊の漫画本。白川さんが漫画とか読むのも以外だったけど、それよりも衝撃的だったのが日曜の朝にやってる女の子向けの変身ヒロインアニメの漫画だったことだ。とてもじゃないがテレビで観たり学校で見る白川さんからこういうアニメとか漫画を読むイメージは湧いてこない。

「見られた……もう終わりだ……こうなったらもう死ぬしかない」

「そ、そんな大げさな。別に白川さんが小さい女の子向けのアニメ見てたって誰も悪いなんて思わないしさ」

「甘いよ遠野さん!事務所からはクール路線で売っていくからそういうイメージ崩すこととかは禁止だって言われてるし!私は本当はそういうキャラじゃないのに!」

 白川さんは動揺しすぎてか完全に今までのクールなキャラが崩壊してしまっている。涙目でキャラ崩壊していく白川さんの様子を誰が想像できただろうか。

「大丈夫だよ!落ち着いて白川さん!私誰にも言わないからさ」

「ほ、ほんとに?ゴシップ誌にタレコミしたりしない?」

「そんなひどいことしないよ!それに私もそのアニメ好きだしさ。白川さんが観てるのはちょっと意外だったけど」

 というか私そんなことするかもしれないと思われてたのか。ちょっとショック。

「ありがとう……って遠野さんも観てるの?」

「え?うん。妹が好きで一緒に観てたら私もハマっちゃって」

 小学生の妹と朝に一緒にテレビで観てたら結構おもしろくて今じゃ私もこの作品のファンになった。子ども向けのアニメだからって侮れないんだよね。

「わあ!遠野さんも観てるんだ!おもしろいよねあれ!」

 さっきまでの慌てふためいていた白川さんとは一変して嬉々とした様子でがしっと手を掴まれる。

「う、うん」

「あ、ごめんね。私の周りにこういうアニメとか観てる人っていなくてちょっと感動しちゃった」

「そっかー。でも、観たいアニメとか漫画にも気を遣わないといけないってやっぱり芸能人って大変なんだね」

 私だったらそんな生活きっと耐えられないだろうな。想像してみて一瞬で無理だと悟った。

「もちろんこの仕事は好きでやってるから仕方ないとは思うけど、やっぱり好きなものを好きって公言できないのはちょっと辛いかな。だからこうして誰もいない教室でこっそり漫画を読んだりするんだけどね」

「それでこんな時間まで残ってたんだ。でも、白川さんのお家じゃダメだったの?」

「実は家族にもこの趣味は内緒にしてて、今更打ち明けるのも恥ずかしくってさ」

 家族にだったら別に話しても良さそうなものだけどなあ。これがいわゆる複雑な乙女心ってやつなのかな。

「放課後の教室だったら人もいないしマスコミに追っかけられたりもしないからいいかなと思ったんだ」

「そっかー。なんかごめんね。邪魔しちゃったみたいになっちゃって」

 普段忙しい白川さんのせっかくの楽しみの時間を邪魔してしまったみたいでなんだか申し訳ない気持ちになる。

「そんなことないよ!最初はちょっと、いやかなり焦ったけど、私と同じ趣味を同じクラスの遠野さんが持ってるってわかって嬉しかったから」

 ニコっと笑った白川さんは普段見ない表情と元々かなりいいルックスなだけあってかなりかわいかった。普段から見ているクールな感じもかっこいいと思うけど、こういう女の子らしい感じで売り出してもいいんじゃないかなと思った。

 今も思ったけど、なんだか今日は白川さんのイメージが180度変わったな。最初はちょっと近寄りがたい雰囲気みたいなものを感じていたからかな。たまに学校に来ていろんな人に囲まれていても軽く流すように話していたみたいだし。

「ね、遠野さんはこの後時間ある?その、よかったらなんだけど、このアニメの話とかしてみないかなって」

「私は大丈夫だけど、白川さんは大丈夫なの?」

 私もそれは楽しそうだなと思うけど、今日は白川さんお仕事はないのかな。

「うん。今日は久しぶりにお休みもらってるからさ」

「そっか。それだったら私も全然大丈夫だよ。どこか行こうか?」

 さすがに教室じゃそんなにゆっくりできなさそうだし、どこかでゆっくりできるところに行った方がいいかな。

「外に行くと人の目があるからできればあまり人がいないところがいいかな」

「うーんそれじゃ私たちが部活で使ってる家庭科室でいい?今日は私以外みんな帰っちゃったから誰もいないよ」



「それでね!先週の戦闘シーンとか神がかっててよかったと思うんだ!」

「うんうん。やっぱりクライマックスなだけあってストーリーも戦闘シーンもすごかったよね」

 家庭科室でアニメ談議に花を咲かせていてわかったけど、白川さんってすごく表情が豊かだ。今日こうして白川さんに教室で会ってなかったらきっと白川さんのこんな一面を知ることはできなかったのかもしれないと思うと忘れ物をしてちょっと得した気分だ。それに私もアニメの話とかは妹とするくらいだから妹以外の人とこういう話ができるのも楽しい。

 白川さんと話していると、チャイムが校内に鳴り響いた。もう部活動の生徒も下校の時間になってしまったみたいだ。

「あ、もうこんな時間になっちゃったんだ……」

 白川さんが残念そうに時計を見て呟いた。きっと普段こんな話はできなかっただろうからもっと話したかったのかな。

「白川さん、よかったら一緒に帰らない?私もっと白川さんとお話したくて」

「うん!私ももっと遠野さんと話したい!」

 こうして白川さんと一緒に帰れることになった。


「やっぱりお仕事って大変なの?」

 当たり前だとは思うけど、どういう感じなのかちょっと興味があったので帰り道に白川さんに聞いてみることにした。

「うーん。確かに結構大変かも。最近はドラマの台詞覚えたりしないといけなくなったりしたし、普段の生活でもキャラ作って生活しないといけないのがちょっと辛いかな」

「そうなんだ。やっぱり白川さんすごいなあ。今日も学校では皆にあんなに囲まれてたのにすっごく冷静でさ」

「あれはキャラ作りでなんとか乗り切ってるだけだよ。私ああいう風に大勢の人と話すのって苦手だし。女の子だったらまだいいんだけど、男の子と話すのとかも実はかなり苦手で正直逃げ出したいって思ったくらいだし」

 芸能界で仕事してるくらいだから人と話すのなんて苦じゃないものだと思ってた。なんだかこのたった短い時間で白川さんの知らなかった面がすごくいっぱい見えたと思う。

「それに私この仕事始めてから学校に行く日も減って友達もできなくってさ。話す相手もみんな大人の人ばかりでなんていうか同年代の人とこうして話せる機会が減っちゃってさ。昔から私って人見知りだったから余計にどう話せばいいかわからなくなっちゃって」

 有名人ならではの苦労なんだな。こういう話を聞くとやっぱり私とは違う世界の人なんだなって実感させられる。

「だからこうやって遠野さんと話せて今日は楽しかった。同じ趣味の人だってわかってるとなんだか安心できたからかな。遠野さんとは自然に話せたし」

「私も楽しかったよ。白川さんとこうして話したのは初めてだったけど、自分でもそうだとは思えなかったし」

 さっきも時間を忘れて話込んでしまうくらい白川さんとの会話は楽しんでいたし。

「そう言ってもらえてその、すごく嬉しい。あの!また私と話してくれる?」

「うん、もちろんだよ」

 私もまた白川さんとこうして話してみたいし。

「それじゃ、携帯のアドレスとかアプリのIDとか交換してもいいかな?」

「あ、そうだね。これで……うん完了だね」

「なんだか友達みたい……嬉しいな」

 大事そうに携帯を見つめる白川さん。なんだか私まで嬉しくなるな。

「あのさ、友達みたい、じゃなくて私たち友達になれないかな?」

「えっ?」

 ぽかんとした顔で私の顔を見つめる白川さん。もしかして本当は私とは友達になりたくなかったのかな……

「遠野さん!本当!?本当にその、私と友達になってくれるの!?」

「え?う、うん。白川さんがよかったらだけど……」

「よかったらなんて、むしろ私がお願いしたいくらいだよ!」

 よかった、何か気に障る事言っちゃったかと思った。

「友達、友達かあ……嬉しいなあ」

 噛みしめるように呟く白川さん。ここまで喜ばれるとは思わなくてなんだか私まで嬉しくなってしまう。

 こうやって今までほとんど話したことがなかったそれこそ私とは違う世界で生きてきたような私と白川さんがこうして話してみると友達にだってなれるんだから人ってちゃんと話してみないとわからないものなんだな。

「あ、あとね、今日のことは皆には内緒にしてほしいんだ」

「うん。もちろんだよ」

「二人だけの秘密ねっ。あ、二人だけの秘密ってなんだか友達っぽいよ遠野さん!」

 子どもみたいにはしゃぐ白川さんはやっぱりかわいい。

「もう、友達っぽいじゃなくて友達だよ白川さん」

「そうだったね!興奮しちゃってつい」

「あっ私はこっちなんだけど、白川さんの家ってどっちに行くの?」

 白川さんのテンションがハイになりつつあるところで曲がり道に差し掛かる。私の家はここを左に曲がった方にあるんだけど、白川さんの家の方はどうなんだろう。

「私は右に行った方なんだ。そっか……それじゃ今日はここでお別れか。残念だな」

「またすぐに会えるよ。それにアドレスとかだって交換したんだしさ」

 白川さんは仕事であまり学校に来れないかもしれないけどちゃんとアドレスも無料通話アプリのIDだって交換したんだから会えなくても話すことはできる。便利な時代に生まれてよかった。

「そっか、そうだよね。そうだ!帰ったら連絡するから!」

「うん、待ってるね」

 こうして私は学校のアイドルどころか国民的人気者の白川さんと秘密を共有することになったのでした。




 



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