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1.5mの世界  作者: 粗井 河川
2章
78/144

第27話  光都へ

レストイア教国――。

 国民の半数以上が程度の差はあれ女神リネアを信仰する宗教国家。彼らが信じるリネア教は、大精霊をはじめとする精霊達は人類の為にリネアが遣わした使徒で、今の生活があるのはリネアと精霊のおかげだから感謝しましょーねーといった感じの比較的緩い宗教だ(リネアの存在について大精霊は否定も肯定もしていない)。

 あ、別にリネア教信者でなくても精霊は敬われる存在として認識されているから、何故宗教として成り立っているのか疑問に思うかもしれない。残念ながら「これだ!!」という説は存在しないが、リネアは建国者兼開祖である初代教皇の恩人や思い人だった説で取り敢えずの説明がされている。

 大戦から4年前までは精霊が表に出てこなかったこともあり熱心な教徒はほぼ皆無だったのだが、襲来戦争以後は空前の信仰ブームが巻き起こっている。国のあちこちにリネアと精霊の銅像が建てられ、各都市に彼女らを崇めるための教会も建設中。中位以上の精霊と契約したリネア教徒には“祝福を受けた者”として結構なお祝い金がもらえるなど、国を挙げて信仰に力を入れている。しかし最近では熱心な信者が増えたことにより、未信者とのトラブルも目立ち始めている――。


「こんなものでどうかな?」


「40点ですね。教科書に書かれている内容をそのままなぞっただけじゃないですか。間違っているとは言いませんが、正しいとも言えませんね」


「王子の癖に他国の情勢を知らないんですか? もっと勉強した方がいいですよ」


「うぅ、厳しいな……」


 現在俺、ククル、アリサ、ミュランの4人は光の大精霊シャイニングの誘いを受け、レストイアにある光都サンフレアに向かっている。表向きは光都を観光してレストイアの良さを知ると同時に、仲間同士でいい思い出を作りなさいということだが、本音がどこにあるかは分からない。さすがに襲われる心配はないだろうから出来るだけ楽しもうとは思っている。

 せっかくだしもっと大勢でもよかったんだが、スイレンは「光のババアの根城なんて誰が行くもんですか」と拒否し、ティリカは「スイレン様のお世話と部活もあるから」と辞退。ネルは「アリサと王子とは親しくないからいいや」とこれまた拒否したらしい。

 それならそれで4人の仲を深めればいい話だが……どうしようか。ククルとアリサとはこれ以上仲を深めると別々の理由で危険な気もするし、ミュランも構い過ぎると惚れられちゃうかもしれないんだよなー。


「そろそろ着きそうですね」


 やっと到着か。

 ま、考えてもしょうがないし成り行きに任せるとしよう。


「馬車の旅は楽でいいですが少々退屈でしたね。帰りもまた3日かかるかと思うと今から憂鬱になりそうです」


「僕は学園に戻った後の公開テストの方が憂鬱だよ……。あれは普段のテストと違って結果が学園外に公表されるからね、下手な点数は取れないよ。10日も休んでテストに影響がなければいいんだけど……」


「はいはい、暗い話はやめ!! 目の前に楽しいイベントが待ってるんだからもっとテンション上げていこうぜ!!」


「クー!!」


「上げ過ぎて風邪がぶり返さないようにな」


「そうです、兄さんは病み上がりなんですからあまり無茶はしないでください」


「だからもう大丈夫だって」


 でも5日も学園を休んじゃったし説得力はあまりないか。

 魔法で補えるからと後回しにしていたがやはりもう少し体力はつけた方がいいのかもしれない。さすがにアリサに力負けしたのは情けなかったし、観光が終わったら真剣に検討してみよう。


「…………」


「あれ、どうかしたのか?」


 アリサを見ると、難しい顔をして光都の城壁を睨んでいた。


「いえ、何だかトラブルに巻き込まれそうだなーと思いまして」


 うわぁ……。


「トラブルってどの程度?」


「そうですね……勘ですがこのメンバーなら余裕で対処できるくらいの規模です」


 じゃあ大したことないのかな?

 うん、多少のトラブルは旅の醍醐味とも言えるしそこまで警戒しなくていいか。せいぜい注意しておく程度にしておこう。





「ようこそ光都サンフレアへ!! 我々はあなた方を歓迎します!!」


 光都に入ると早速白い鎧を着た騎士達に出迎えられた。

 すると3人は馬車から降り、当たり前の様に荷物を騎士へと渡した。……なるほど、俺はこういった事に慣れていないから勉強になるな。

 俺も3人に倣い荷物を近くの騎士に預ける。


「これで全員でしょうか? 予め聞かされていたジル・クロフト様の姿が見えませんが……」


「私がそのジルですよ」


 リーダーっぽい騎士に優しく微笑む。


「これは失礼しましたッ……!! てっきり名前からして男だとばかり……!! まさかこんな見目麗しい方だったとは露程も思いませんでした!!」


「おいおい、ジルはおと――」


「ふふ、いいんです、よく間違えられますから。気にせずお仕事、頑張ってくださいね」


「見た目だけでなく心まで美しいとは……!! あぁ、あなたに出会えたことをリネア様に感謝しなくてはいけませんね!!」


 俺の可愛さは神に感謝されるレベルか。

 ふっ、悪くないじゃないか。……これでアリサとミュランのじとーっとした視線がなければもっと良かったんだがな。


「さ、皆様こちらへ。光の大精霊様が待つ宮殿へ向かう前に、巫女様の元へ案内します」


 案内されるままに歩きながら、サンフレアの街並みを観察してみる。ふむ……ところどころ銅像が建っていたり、やや光の精霊が多いような気がする以外はメイユ市と大差ないかな。街行く人も特に変わったところは無いし、第1印象は“普通の街”だな。

 でも光都と呼ぶくらいだからきっとその名に相応しい何かがあるんだろう。ま、シャイニングさんの事を考えればそれが何かは容易に想像がつくけど。だからそれよりもこれから会う人の方が気になる。


「ねぇねぇ、その巫女さんってどんな人か知ってる?」


 試しにと3人に聞いてみた。


「私はレストイアにそんな人がいる程度にしか知りません」


「僕も詳しくは……。なんせ巫女の名を聞くようになったのはつい最近だし。というか君はその口調で通すつもりなんだね……」


 当たり前だ。

 近くに騎士もいるし、しばらくはこれで通す。


「ん~、私も直接会ったわけじゃないので断言できませんが、たぶんジル様の“同類”だと思います」


 俺の同類……。


「つまり相当の変人――ぷぎゃあ!?」


 つまり可愛いってことか!!

 ひゅー、ちょっと会うのが楽しみになってきたぜ!!




「もうすぐ巫女様による正午のご挨拶があります。少々見づらいでしょうが、ここでお待ちください」


 やって来たのは小さなステージがある広場。ステージの前はすでに500人ほどの観客(?)で埋め尽くされており、皆一様にそわそわしている。それに男性が多いな……。

 流れ的にステージに巫女が上がるのだろうが、いまいち俺の想像している巫女像と合わない。


「む」「……」「……zzz」「なんだ!?」


 急に周囲が暗くなった。

 自分の手もよく視えない程の暗闇。

 っ、これがアリサの言っていたトラブルか……!!


「みんな待たせてゴメンね☆」


 すぐさま戦闘態勢に入ろうとするとステージがライトアップされ、そこには1人の少女が立っていた。桃の花を連想させるピンクの髪、愛らしさを感じる笑顔、純白のドレス、そして真っ白な翼。……うん、まぁ、見た目は天使みたいで可愛いんじゃない?


「おわびに早口言葉をいっちゃいまーーーす!! 老若男女ろうみゃくなんみゅ……てへへ、噛んじゃった」


『かわいいいいいいいいいいいいいいいいい』


「次はちゃんと言えるように頑張るもーん。……でも今はお祈りが先だよね。みんな準備はいーい?」


『おおおおおおおおおおおおおおおお』


「リネア様、最高!!」


『最高!! 最高!! 最高!!』


「精霊様はとーーーーっても素敵!!」


『素敵だあああああああああああ』


「…………」


 目の前で起きている出来事に全くついていけない。

 案内してくれた騎士も一緒になって興奮しているし。

 なにこれ?


「ステージにいる天使族の少女。彼女はレキア・リッターミア――神の加護を授かりし教国の秘蔵っ子。光の大精霊のお気に入りでもあり契約も間近ではと噂されている“巫女”です。私達の1つ下ですが、もう精力的に働いているようですね」


「みんなまだまだ声が小さいよーーーーー!!」


『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』


「レキアは?」


『かわいいいいいいいいいいいいいいい』


「ありがとう!! レキアとっても嬉しい!!」


 言いたいことはたくさんある。

 どこが巫女だよとか、むしろアイドルじゃんとか、なにあの媚びっ媚びの声とか、意味もなく転ぶなよとか、宗教なめんなよとか、世界観壊すなよとか山ほどな。

 その中でも俺が特に言いたいのは――。


「ふふ、彼女も常に可愛さを研究しているようですし“同類”同士気が合うのでは?」


「俺、あいつ嫌い」

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