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1.5mの世界  作者: 粗井 河川
1章
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第20話  真偽と報告

「お前たちは魔法ではない特別な【力】を持っているのか?」


 さて、これは【能力】のことを言っているのよね?


「魔力を消費せずに魔法と同等、或いはそれ以上のことが可能な【力】のことだ。俺はお前達、特にフロルの噂を耳にした時からその特別な【力】を持っている可能性を疑っていてな。会ってみて確信したが、持っているのだろ?」


 そうね……本当に【能力】の存在を知っているのなら教えても構わないけど【能力】の存在を疑っていて鎌をかけている可能性もある以上、正直に話していいものなのか悩ましいわね。

 とりあえずスイレンの出方を窺ってみましょうか。


「ヒルト王、貴方の言う特別な【力】というのには心当たりがあるわ。でも残念。私はそんな力なんて持っていないわ。私のは精霊の力のみよ」


 なるほど。

 スイレンの言い回しだと心当たりがあると言っているだけで【力】が本当にあるのかどうかまでは言及していないわね。なかなか上手い躱し方だわ。

 ちなみにスイレンが能力者でないことは本当。この前【自由自在】でこっそり調べてみたから間違いないわ。


「……嘘は言っていないようだな。そうか、精霊は【力】を持っていないのか……。フロルは?」


 スイレンにどうしようかアイコンタクトを送ってみたけど、『好きにすれば』と肩を竦められてしまった。じゃあスイレンに倣うとしますか。


「私もスイレンと同じく【力】の存在には心当たりがあるけど、私の力は光の精霊のおかげ。だから私と【力】は無関係よ」


 誤魔化してしまいましょう。

 ヒルトが何故【能力】のことについて知りたがっているのか分からない以上、迂闊な発言は控えるべきよね。

 そんな考えで発言したのに――


「嘘だな」


 嘘だと断言されてしまった。


「心当たりがあるというのは本当だろうが、その先の発言が嘘だな。よって、このことからお前が【力】を所有していることが導かれる。で、どんな【力】を持っているんだ?」


「……失礼ね。なんで私が嘘をついていると断言するのかしら? 何か根拠でもあるの?」


 もしあるのだとしたら……。


「それは俺が【力】を所持しているからだ」


 やっぱりそういうことになるわよね。


「はいはい!! 分かった!! ヒルトの【能力】は“嘘を見抜く”ことね!?」


 あ。


「そうか、この力は【能力】と言うのか。……ああ、スイレンの言う通り俺は他人が吐く嘘を見破ることが出来る。こうして玉座に座っていられるのもこの能力のおかげだ」


 スイレンの方を見ると『ごめんね☆』って感じの顔をしてきた。……可愛いから許す!! それに【能力】という単語くらいなら教えても別に問題ないし。

 問題なのはヒルトが本当に能力者であるのかということと、本当だった場合うかつに嘘は吐けないということ。

 まぁ、どちらにしろ私には解決する手段があるんだけどね。


「……そうだな、ついでにお前達に紹介しておこう。モルク!!」


 と、ここでさっきからヒルトの隣で置物と化していた騎士? が前に出てきた。

 彼はさっきから王の斜め前で棒立ちしていたのよね。


「モルク・ギーツェンです。王様の専属護衛騎士を担っています」


 犬耳の生えた男の獣人で年齢はヒルトと同じ三十歳くらい。身長が百六十cmくらいと騎士にしては小柄。剣などの武器は携帯しておらず、かといって魔法が得意そうにも見えない。だけど王の護衛なんてしているくらいだから何かあるんでしょうね。


「こいつは自身を“鉄壁”に変える【能力】を持っている。俺もその力には何回も助けられていてな、今では俺が最も信頼する人物の一人だ」


 ふむ、“鉄壁”か……。


「ねぇ、それが本当かどうか試してみていいかしら?」


 いいことを思いついた。


「構わないかモルク?」


「はい、もちろんです王様」


「よし。そういうわけだフロルよ。試しにモルクに魔法を放ってみるといい。それで真偽がはっきりするだろう」


「魔法じゃなくて打撃でも構わない?」


「打撃でも問題ありませんよ」


 そう言ってモルクが近づいてくる。

 よし!!


「じゃ、いくわよ。魔力がこもったパンチだから下手をすると死ぬけど本当に大丈夫?」


「ええ、遠慮なくどうぞ。」


「では……ていっ!!」


 普通の人に放てば貫通しそうな威力でお腹を殴る。

 と同時に――。


『モルクの【能力】を調べますか? YES or NO』


 YES。

 これでモルクが能力者ならヒルトの言うことを全面的に信用して私の【能力】についても話してしまいましょう。もし嘘なら……。

 さぁ、結果は?


「くっ……【能力】をもってしてもこの衝撃ですか……。正直、フロル様の力を甘く見ていました」


 まずモルクの方は無事。

 お腹を押さえてはいるけど無傷と言っていいでしょう。

 そして【能力】の有無については――。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


【能力者】

 モルク・ギーツェン。29歳。童貞。


【能力】

 真偽


【仕様】

 相手の嘘が強制的に分かる。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 少々意外な結果となった。

 どういうことかしら……?

 モルクの能力が【真偽】なら私に殴られて平気なはずはないのだけど。殴った感じ、防具は着けていなかったから生身で耐えられるとは考えづらいし。となると。


「スイレン。今、彼らから魔法を使ったような気配はあった?」


「特に無かったわよ。パンチの威力からして【能力】で防いだのは間違いないんじゃない?」


 魔法による防御ではない、か。


「俺の嘘を見抜く【能力】と俺を守るモルクの鉄壁の防御で王の位を守っているということだ。一応、秘密ということになっているが城にいる者ならほとんど知っている。まぁ国民には知られていないから、あまり公言はするなよ?」


「りょーかい。どうせ言っても誰も信じないと思うけどね」


「……ええ、分かったわ」


「では、私はまた黙って王の横にいますので」


 そう言ってモルクは王の傍で再び棒立ちを始めた。

 ……モルクが【真偽】で私の嘘を見抜いたのは間違いない。たぶん何かしらの合図をヒルトに送っていたのでしょう。そうなると何故、先ほど私のパンチを防げたのかという話になるのだけど……おそらくヒルト、次点でエクトルのどちらかが【能力】で加護のようなものを与えたのだと思う。今のところそれくらいの推理しかできないわね。

 まぁ、今は別の能力のことは置いておいて、はっきりしている【真偽】を何とかしましょうか。


『嘘を操れるようにしますか? YES or NO』


 まずこれで【真偽】対策。


『【真偽】を使えるようにしますか? YES or NO』


 ついでだし私も【真偽】を使えるようにしておきましょう。


「さ、俺達のことを教えたのだ、フロルの【能力】も教えてもらおうか」


「ええ、いいわ。私の能力は【増幅】よ。これで魔力を増やして魔法を使い放題にしているの」


 もちろん嘘。いや、あながち嘘じゃないけど本当ではない。

 嘘つき王にはこれくらいの情報で十分でしょう。


「なるほど……。確かにそれなら魔法はいくらでも使えるな」


 よしよし、嘘は見破られていないわね。

 スイレンも一瞬驚いていたけど、すぐに状況を理解して笑いを堪えている。


「フロルよ【増幅】を使えば死んだ者を生き返らせる魔法も使えるか?」


 ……ああ、そういうこと。


「いいえ、それは無理よ。どんなに頑張っても瀕死の人を回復させることしか出来ないわ」


「私もここで断言するわ。この世界において人を生き返らすことのできる手段は一つたりとも存在しない、と」


 スイレンも急に真面目な顔をして強く断言した。


「そうか……。すまない、今の質問は忘れてくれ」


 落胆、という言葉が相応しいほど落ち込んでいるわね。

 さっきからしつこく【能力】について聞いてきたのは誰か生き返らせたい人がいるからだったんでしょうけど、こればっかりはどうしようもない。例え【自由自在】をもってしても死んだ人は生き返らすことは出来ないんだから。死んだ人を生き返らすなんてそれはもはや神の領域。能力で神の真似事は出来ても神にはなれないということなんでしょう。



「……さて、聞きたいことも聞けたし次の話に移ろうか。頼みたいことについてだが、お前達には隣のラングット王国の女王に手紙を届けて欲しい」


 気を取り直して、ヒルトが私達を呼んだ最後の理由について話し出した。


「私は嫌よ。そんな使い走りみたいなことをしたくないわ。頼むならフロルだけにして」


 さすがスイレン。ばっさり断ったわね。


「じゃあ私も行かないわ」


 いずれは諸国を回る必要がありそうだけど、まだこの国で地盤を固めていないからもっと先でいいでしょう。


「報酬で百万キリカ出すが?」


「引き受けましょう!!」


「フロル……」


 スイレンが呆れた目で見てくるけど、しょうがないじゃない!!

 スイレンやティリカ達の生活費だけで依頼報酬は消えていくからお金はほとんどない。それにいつまでも三人を宿屋暮らしさせるわけにもいかないし、そろそろまとまったお金が必要だったのよね。だからこんなおいしそうな依頼は引き受けるに限るわ。


「そうか引き受けてくれるか。今回は親善の為の手紙だからあまり失礼のないように頼むぞ。一応、エクトルを付いて行かせるが構わないか?」


『嘘を検知。“親善の為” “失礼のないように”が嘘です』


 へぇ、嘘を検知すると頭に声が響くのね。なるほどなるほど。

 しかし今のが嘘だとするとヒルトは隣国に喧嘩を売りに行けとでも言うのかしら……。


「ええ、問題ないわ」


 まぁ、もし向こうの人から文句を言われたら全部ヒルトの所為にすれば大丈夫でしょう。


「なら後はエクトルに詳細を聞いてくれ。奴には話を通してある。……さ、これで今回の話は終わりだ。後は好きにしていいぞ」


 お、これで終わりね。


「ならヒルト王、私達から少し話があるわ。聞いてもらえるかしら?」


 やっと本題に入れるわ。


「聞こう」


「というわけでお願いね、スイレン」


「はいよー。一か月前にとある人物から『魔物が近年、増加&強化されている』と情報が入ってね、ちょっと調べてみたからそれを報告するわ」


「ほう、それは興味深いな。是非頼む」


「結論から言うと二千年前の魔物と、“今現在”の魔物の強さと数に変化はほとんどないわ」


 ふむふむ今、私も初めて聞いたのだけど変化はないのね。何となくそんなような気がしてたから驚きはないわね。


「つまりガセネタだったということか?」


「いいえ、ガセってわけでもないわ。というのも二百年ほど前から強めの魔物が少しずつ確認されているみたいだから。それも近年になるにつれ強力にね。ついこの間なんて大精霊の一人が負傷したみたいだし」


「え、それってヤバくない……?」


 大精霊ってことはスイレンと同じくらいの強さってことでしょう。それが負傷するってことはもし町に現れたら壊滅するレベルじゃない。


「本人は油断しただけだって言ってたわよ」


 いくら油断していてもダメージを与えられたという事実は重く見るべきだと思うのだけど……。


「ふむ、それも気になるがスイレンは先ほど『現在の魔物に変化はない』と言っていなかったか? それなのに強力な魔物が現れているとはどういうことだ?」


 あー、確かに矛盾しているように聞こえるわね。


「それは二千年前から存在する魔物に変化はないということよ。出現すると言ったのは新種の話。昔から新種は確認されていたけど、最近になって質に変化が生じてきたということが言いたいの。……心配しなくても“盟約”によって新種は余すことなく駆除しているから、今のところ問題ないわ」


 ということは今この世界にいる魔物は二千年前から存在が確認されていたのね。


「精霊だけで対処できるのか……?」


「まぁこのペースならあと千年は大丈夫だと思うけど、そこから先は何とも言えないわね」


 もし精霊が対処できなくなれば、この世界の人達は魔物にやられるってことよね。今のところ精霊の方が人より圧倒的に強いし。そんでタイムリミットが千年か。時間的には十分余裕があるはずけど……。


「精霊たちだけに任せるわけにはいかないか……。そうなると長期的に対策を練る必要があるな。俺達に出来ることは?」


「んー、強くなれってことぐらいかな。欲を言えば精霊と肩を並べられるくらいに」


「……検討しておく。まぁ、すぐには無理だが千年あるのならなんとかなるだろう」


 果たしてそんなに時間があるのかしらね?

 神は『そう遠くない未来』と言っていたけど、それが千年も先のこととはどうしても思えない。でもだからと言ってそれがいつなのか分からない以上、この場で対策を練ることは不可能ね。……今回は魔物に異変が起こりつつあるということを説明が出来たんだし満足するとしますか。

 というかもう頭を使いたくない……。あまり面白い話でもないし“ジル”に任せておけば良かったわ。いっそ今から変わろうかしら?


「だが千年あるからといえ――」


「王子、いけません!! まだ会談中で――」


「父上、稽古に付き合って下さい!! 騎士達では物足りません!!」


 突然、ドアの向こう側で話し声がしたかと思うと一人の男の子が部屋に乱入してきた。

 前言撤回。変わるのは止め。

 面白そうな子が来たわ。

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