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1.5mの世界  作者: 粗井 河川
1章
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閑話   水と影

読まなくても本編に影響はありません。たぶん。

 私があの娘の住処に行くと、彼女の腕と思われる物が落ちていた。


「……フロルがやったのかな?」


 腕の周りにも血の跡があるし、おそらくあの娘がフロルにちょっかいをかけて返り討ちにあったんでしょう。


「はぁ……馬鹿な娘ね」


 最初にフロル――あぁその時はジルか――と対峙した時に力量の差が分からなかったのかしら。どうせ影で挑めばダメージは受けないと思っての行動だったんでしょうけど、甘いわね。そんな考えじゃフロルには傷一つ付けられないでしょうに。


「……あの娘を探しますか」


 たぶん死んではいないと思うけど一応、生死は確認しておかないと。

 もし死んでいるのならいろいろと面倒だし、どうか生きていますように。




「見つけた!!」


 住処からそう遠くない場所で、あの娘が木に寄りかかっているのを発見。


「……チッ、ババァカ。予想以上ニ早カッタナ」


 こいつ、またババァって言った!!

 ……可愛くない娘。容姿は悪くないのにね。


「そんな減らず口をたたけるのなら大丈夫そうね」


 お腹から出血しており、顔色もそんなに良くないけど思ったよりも元気みたい。これなら命に別状はなさそう――って、あれ?


「腕はどうしたの? さっき貴女の住処に落ちてたけど……」


 なのにこの娘の腕は何ともない。

 放って置けばそのうち生えてくるけど、いくらなんでも早すぎでしょう。


「フロルガ勝手ニ治シタノサ」


「ふーん。情けをかけてもらったのね」


 かなり意外だわ。

 見逃すだけならともかく腕まで治すなんて。

 あー、でもお腹の傷は治していないから敢えて力量の差を分からせるために治療したのかもね。


「オマケニ行動ノ制限モカケラレタゾ」


「へぇ?」


 話を聞いてみると、どうやら生物を正当防衛以外で傷つけられないように制約をかけられたみたい。


「自業自得ね。自分の力量も弁えずにフロルに挑むからそうなるのよ。大人しく私が行くって言った時に逃げていれば良かったのに」


 せっかく私が半分怒ったふりをして、二人が戦わないように気を回したって言うのに……。


「ククク、ソウデモナイサ。挑ンデ、ヨカッタト心ノ底カラ思ッテイルヨ。ナンセ、アンナ貴重ナ経験ガ出来タンダカラナ。次ガ楽シミダ」


「……もしかしてまたフロルに挑むつもり?」


「当タリ前ダロ」


 呆れた……。


「あのね、言っておくけど貴女の実力じゃあフロルに勝つのは無理よ」


 この娘じゃあフロルに勝つどころか、まともにダメージを与えるところすらイメージ出来ない。


「クク、確カニ殺スノハ無理カモナ。ダガ、私ノ勝利条件ハ『フロルを苦痛に歪ませること』。コレナラ、十分ニ可能サ」


 つまりまともにダメージを与えるってことじゃない。やっぱ無理ね。

 ……まぁ、もしかしたら何か秘策でもあるのかもね。


「アァ……楽シミダ……!! キット、凄ク面白クナルゾ。私ハ、フロルニドレクライ痛ミヲ与エラレルダロウカ? 私ハドレクライ痛ミヲ受ケルダロウカ? ソレヲ考エルダケデ興奮スル!!」


 うわぁ……完全に変態じゃん。

 なんでこんな娘に育っちゃったのかしら? 昔は素直で可愛い――くなかったわね。最初に会った時から生意気なクソ餓鬼だったわ。……生まれつきか。


「じゃ、私はそろそろ行くけど、別に傷の手当はしなくていいんでしょう?」


「必要ナイ。モウ少シ、コノ痛ミニ浸ッテイタイカラナ」


 なら早いとこ帰りましょう。

 ティリカやアリサが私を待っているわ。


「……ソウイエバ、ババァニ質問ガアッタナ。アノ雑魚団ノ訓練場ニ穴ヲ掘ッタノハ、ババァナンダロ? 何故ソンナコトヲシタ?」


立ち去ろうと背を向けた瞬間、思い出したように質問してきた。


「あぁ、そのこと。確かにアレは私がやったわ。副団長に頼まれてね」


 最初に騎士団を訪れた日の夜、水浸しにしたのはちょっと悪かったかなと思って修復作業を手伝いに行ったのよね。そうしたら、副団長が土下座しながら穴を掘ってくれ、って頼んで来たのが事の真相。ま、ジルもフロルも大して気にしていなかったし、どうでもいいことだけどね。


「ソレハ、フロルノ裏切リニ、ナラナイノカ? 今ダッテ、アイツニハ私ヲ始末スルト言ッテ出テキテオイテ、結局何モシテイナイジャナイカ」


「ふふ、フロルとは親友なんだから裏切るわけないでしょう? でも親友だからといって嘘をつかないわけじゃないのよ。フロルだって私に嘘をつくこともあるしね。ちなみに貴女に何もしないのは昔のよしみだから。……まぁ、さすがに無傷だったら何かしらの攻撃はしていたでしょうけど」


 フロルから十分攻撃を食らったようだし、私はもう何もしなくていいでしょう。


「ヨク分カランナ。質問ニモ、チャント答エテイナイシ……コレダカラ、ババァハ面倒クサクテ嫌ナンダ」


「それは貴女が理解しようとしていないからよ。ただ欲望に流されるまま生きているから思考が短絡的になり、より深い領域に辿りつけず、この程度の事も分からないの」


「欲望コソガ、真理ダト思ウガネェ」


 ……これ以上は言っても無駄でしょうね。


「ならそう思っていなさい。私はもう帰るからね」


「ソウカ、ナラ早ク帰レ。私ハ、フロルニヤラレタ傷ヲ、一人デ愛デタイカラナ」


 そっちから引き留めておいて早く帰れですか。本当、可愛くない娘ね。こんな娘に目を付けられるフロルとジルに少し同情するわ。

 ん……? そういえばこの娘はフロルフロル言っているけどジルの存在には気づいているのかしら?

 ……どっちでもいいか!!

 そんなことよりも早くティリカやアリサの元へ急ぎましょう!!

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