表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1.5mの世界  作者: 粗井 河川
1章
21/144

第19話  謁見

 さて、あれから一月が経過。

 借金を背負ったりもしたけど依頼をこなして速攻で返済。その後も依頼を受けていたりしたらあっという間に時間が経ち、現在“私”とスイレンは王都『カームヒルト』に来ている。

さすがはこの国最大の都市とあって人が多く、メイユ市では見かけない種族もチラホラと見かける。そんな中を美女二人が歩いているせいなのかナンパされやすく、王都に来て三十分足らずで四回は声を掛けられた。


「あー心配だわ……。ティリカとアリサは上手くやれているかしら? ねぇ、やっぱりドタキャンして学園の方に行かない?」


 五回目のナンパを適当にあしらうとスイレンが心ここに在らずといった様子で呟き出した。


「もう何回目よそのセリフ……。あの二人なら大丈夫だって言ってるでしょ!! まぁ、確かにティリカはちょっと心配だけどアリサがいるから大丈夫よ」


 実は今日は姉妹の学園初登校の日。

 先日スイレンと話し合って学校に通わせることにしたの。

 尤も、最初スイレンは学園に行かせるのを『カルカイム王国には義務教育なんてないし、私とフロルが魔法や勉強を教えたりしているんだから学園で学ぶことなんてない』と否定気味だったけど。

 それでも私は同世代同士の交流、特に友人を作ることは必要だと思ったのでスイレンと教育方針を巡って熱い議論を交わすことに。結局、八時間にも及ぶ攻防の末、ティリカの「学園に行きたい」との鶴の一声で学園行きが決定。アリサはあまり乗り気じゃなかったみたいだけど「姉さん一人では心配なのでついていく」とのこと。

 本当はそんな二人の門出の日を見守りたかったのだけど、とある人物に呼び出されてしまったためにわざわざこんな所まで来ている。


「たかが王の分際で私達を呼び出すなんて生意気じゃない? 用があるならそっちから来ればいいのに。フロルの転移がなければ無視していたところだわ」


 そう、今回王都まで来たのはギルドを通してこの国の王に呼び出されたため。

 話がしたいからスイレンを連れて王都まで来い、と。

 普通ならメイユ市から王都まで歩くと十日以上かかり面倒くさい。だけど“ジル”が事前に二日かけて王都まで行き、転移できるように登録したから王都の入り口までは一瞬。今は王城まで徒歩で向かっているところ。


「別にいいじゃない。私達だって王に用があるんだから」


 逆に用が無ければ無視してたかも。


「それはフロルだけでしょ。私は特に用は無いわ」


 あらあら本当にご機嫌斜めね。

 王に対して何か粗相はしないかしら?

 んー、でも周囲の温度は下げていないから冷静のようだし放って置きましょうか。


「それじゃあ早いとこ要件を済ましてしまいましょう。上手くいけば午後の授業には間に合うかもしれないわよ」


 なんだかんだ私も姉妹の事が気になるし、さっさと切り上げたいところよね。


「だといいんだけどー」


 っと、そうこう話している内に西欧風のお城が見えてきたわね。

 私の目的達成のためにも気合を入れていきましょうか。




「お待ちしておりました。スイレン様とフロル様ですね?」


 王城の入り口まで行くと金髪エルフの男性が出迎えてくれた。

 なかなかのイケメンさんで外見は三十歳くらい。でもエルフは見た目で年齢を判断することは困難だから実際の年齢は不明。着ている服からしていかにも宮廷魔術師って感じだけど、物腰が柔らかく優しそうに見えるためあまり強そうには見えない。でもなんとなくだけどこのエルフ、今まで私が出会った『人』の中では一番強いかも。


「初めまして。私がスイレンでそっちがフロルよ。何時に尋ねるかは教えてなかったけどよく私達が来たって分かったわね? ずっとここで待ってたの?」


「いいえ。これでも宮廷魔術師の端くれですからね。王都に異常な膨大な魔力を持った者が突然現れたのを感知してすぐに例のお二人が来たのだと分かったのです。それで慌てて城の者に伝えてここでお待ちしていました」


 へぇー、この人は魔力感知が出来るのね。私も習得しようとは思っているんだけど、今のところ出来なくて困ることはないからついつい後回しにしちゃっているのよね。


「やるじゃん。私達が王都に入って来た瞬間に気づいたのね。この時代にも貴方の様な実力者がいたなんてちょっと意外」


「精霊様に褒めて頂き光栄です。……あぁ、自己紹介がまだでしたね。私はエクトルと申します、どうぞお見知り置きを。さっ、お二人ともどうぞ。王様がお待ちかねです」



「ふーん、予想はしていたけど随分贅沢をしているのね」


 城内に入ると絵画や彫刻、調度品など見る物すべてが豪華絢爛で、いかに散財しているのが一目で分かった。あのやたら宝石がついている壺なんて一体いくらするのかしら。


「ふふ、これは手厳しいですね。ですがこれはしょうがないことなんです。確かに一見無駄遣いの様に見えるかもしれませんがここは王様が住む城。いわば国を象徴する場所なんです。その場所が質素だと国に財力が無いと公言しているようなもの。他国に馬鹿にされる口実を与えることになるんですよ」


 ですから例えお金が無くても見栄を張る必要があるんです、と苦笑するエクトル。


「お金を使ったら使ったで『無駄遣いだ!!』って貴族連中に責められるから面倒くさい場所なのよ、こういう所は」


 スイレンも馬鹿馬鹿しいといった感じで付け足してくれる。

 なるほど、確かに面倒くさいわね。

 これはアレね。可能性の一つとして考えていた私達が王となるというのは止めておきましょうか。


「ここは常に相手を蹴落とそうとする者ばかりですからね。そういったことを嫌って一体何人もの優秀な人材が王城を後にしたことか……。私の一番弟子も誘いを蹴って冒険者になってしまいましたし、そういう悪しき風習は改めたいんですがね」


「なら思うだけでなく誰かさんを見習って行動に移すことね。世の中には一人で世界を変えようとしている子だっているんだし、それを思えばそこまで難しいものでもないでしょ」


 ふっ、照れるわね。


「そんな人がいるんですか!? ……ふふ、是非会ってみたいですね」


 ここにいるわよー。

 てなことを話したりしながら歩いていくと、ある扉の前で立ち止まった。


「ここです。王様がお待ちですので、どうぞお入り下さい」


 そう言って一歩も動かないエクトル。


「あら、貴方は来ないの?」


「はい。私は邪魔者が入らないようにここで見張っていますので」


 ふーん? 王様の傍にいなくていいのかしら。

 ……ま、私が気にすることじゃないわね。


「じゃ、行きましょうか」


 扉くらい開けてくれてもいいじゃない、と思いつつもゆっくり開けると――。


「およ?」


 突然『フレイムランス』が飛んできた。


「てい」


 びっくりしたから思わず手で叩き落としちゃった。


「今、凄いことをしましたね!?」


 そばで見ていたエクトルが目を丸くし、スイレンは「私も出来るわよ!!」と自慢している。

 そんなことよりも……。


「面白い歓迎ね。この国は客人に魔法を放つのが慣習なのかしら?」


 いかにも謁見の間といった感じの部屋に入りながら、先ほどの魔法を放ってきた人物に文句を言ってやる。


「何、水の精霊と光の精霊の庇護下にある者が来るというのでな、少し試させてもらった。偽物であるのなら今のでやられていただろうし、本物なら問題なく対処出来るであろう」


 その人物は淡々と当たり前の様に言い、全く悪びれる様子はない。


「あっそ。じゃあこうして無傷なわけだから信じてもらえたのかしら?」


「少なくともここにいる誰よりも強いということはな。……くくく、先ほどのエクトルの驚いた顔。ここからでも見えたが、なかなかの見物だったぞ」


「ふーん、それは良かったわね。……それで、貴方がこの国の王様ってことでいいの?」


「そうだ。俺がカルカイム王国国王、ヒルト・カルカイム・オーウェルだ。今日はよく来てくれたな」


 玉座に座りながら、不敵に笑うヒルトからは王者の風格を感じる。見た目は人族の三十歳くらいと若そうなのに、随分と板についているわね。


「初めまして、ヒルト王。私がフロル・ファントム・クリマアクトよ。で、私の隣にいるのが――」


 スイレンに目で続きを言うように促すと……。


「水の大精霊のスイレンでーす。早く帰りたいのでとっとと要件を言って下さーい」


 超適当に挨拶してくれた。


「……何やら精霊殿は不機嫌なようだな」


「はぁ? わざわざ来てやったのに、こんな見世物みたいな扱いをしておいて媚び諂えって? 笑えない冗談ね」


 そうなのよね……。

 ヒルトはともかく周りに突っ立っている連中――おそらく貴族――は嫌な目を向けてきてうざいのよね。

 値踏みするかのように見てくる者、馬鹿にする者、妬む者、見下す者、中には私達に舐め回すようないやらしい視線を向けてくる者もいて、好意的な視線を感じる者は一人もいない。スイレンの言う通り、見世物になっている様な気がしてあまり気分は良くない。


「それは悪かったな。では余計なことは省いて本題に入るとしようか」


「ええ、そうして頂戴」


「まず、今回お前たち二人を呼んだのは――」


「お待ちください、王様!!」


 すると突然、貴族の一人が声を上げ話を中断してきた。

 あいつは私達を馬鹿にした目で見てきた奴ね。

 ……それにしても王が話をしようとしているところを遮るなんて、意外とヒルトは貴族から舐められているのかも。


「なんだ。口を挟まないという条件でこの場所にいることを忘れたのか?」


「恐れ多くも進言致しますが、その者達の態度は目に余ります。恐らくここがどういう場所なのか理解できていないのでしょう。その様な教養のない者達と話すことなどありません。追い返してしまいましょう」


 あー、そんなことを言うと……。


「へぇー、私達に教養がないですって?」


 煽り耐性のないスイレンが反応しちゃうじゃない。


「そうだ。精霊だかなんだか知らないが、我々は馬鹿に付き合っている暇は――ぐぁ!?」


 太っちょ貴族が言い終わる前に、彼の左肩に氷柱が突き刺さる。

 周りの貴族も突然の事に驚き、ざわつきだした。

 そしてスイレンは周りの反応なんてお構いなしに、痛みで蹲っている彼に近づき胸倉を掴み出す。


「“盟約”の存在も知らないような奴が偉そうに教養を語っているんじゃないわよ。……それに誰が私にため口をきいていいって言った? この場でそれが許されるのはフロルとそこの王だけよ。次舐めたこと言ったら命はないと思いなさい」


 スイレンの言葉に、本人は元より周りの貴族も絶句している。


「ふん。この程度で言葉を失うようじゃ高が知れるわね。……ヒルト王!! こんな奴らが周りにいたら邪魔よ。追い出しなさい!!」


 とうとう王様にまで命令し出したわね。

 何というか……精霊って凄いのね。


「……いいだろう。おい、お前達!! そういうわけだ、部屋から出ていくといい。ただし異論がある者はそのまま残れ!! 話は聞いてやる」


 ヒルトの言葉を受けて、貴族達は主に二パターンに分かれて行動を起こした。黙って早々に立ち去る者と、「ここに残りたいけど王様の命令だから仕方ない」とモゴモゴ言い訳の様なものを言って立ち去る者。ちなみにスイレンに肩をやられた奴だけ「覚えてろ!!」と捨て台詞を吐いていたけど、もう片方の肩も氷柱で刺されると泣きながら立ち去って行った。

 結局、周りにいた貴族連中は全員部屋からいなくなってしまい、今謁見の間にいるのは私とスイレン、ヒルト王、王の隣にいる騎士みたいな人の四人のみ。

 ……。


「……フロル、お前が何を言いたいのか大体の察しはつくが、あんな奴等でもいないと国が回らんのでな。そう簡単に切り捨てるわけにはいかんのだよ」


 なるほど。おそらく貴族連中もそれが分かっているから、排除されないギリギリの所を狙って行動しているんでしょうね。

 ……うん。やっぱり私には政治関係は無理。

 大人しく私なりのやり方でいくとしましょうか。


「んー、目障りな連中も消えてスッキリ爽快!! なんだか空気も美味しく感じるわ!! さ、気を取り直して話の続きに戻りましょう!!」


 スイレンがすっごくいい笑顔で先を促す。

 本当、自由な精霊よね。


「……確かお前たちを呼び出した理由を説明しようと思っていたのだったな。理由は三つある。一つは精霊かどうかの真偽を確かめるため。二つ目は頼みごとがあるから。三つ目は聞きたいことがあるからだ」


 何も言わずに話を戻すヒルトもけっこうやるのかも……?


「一つ目についてはもう解決したのでいいだろう。スイレンの口から“盟約”の言葉が出てきた以上、スイレンが精霊であるということはもはや疑いようのない事実だ」


 ……そう言えばたびたび“盟約”って単語が出て来るけど何なのかしらね。確認したいけど一応私も光の精霊の庇護下ってことになっているから知らないと変だろうし、今は聞けないわよね。

 後でスイレンに聞いておきましょうか。


「さて順番で言えば次は二つ目に入るところだが、この場に貴族がいない内に三つ目のことを先に聞きたいと思う。なかなかデリケートな話なんでな。奴らにはあまり聞かれたくないんだよ」


「面白そうじゃない。答えられる質問なら何でも答えてあげるわよ」


 そんな安請け合いしちゃっていいのかしら?


「では……お前たちは魔法ではない特別な【力】を持っているのか?」


「……」


 ほら答えにくい質問が来たじゃない!!

 さて、どう答えましょうか……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ