その7 ベルーガ編
長編恋愛ファンタジー DESTINYに出てくるけれど第4章からしか姿を現さないベルーガ(26)による口説き文句です。
■キーワード1 『雪』
「寒い? 当たり前だろう、雪が降っているのだから。早く薪を取りに行け、遅い。
…………。
寒いか、アサギ。何か……暖かな布でも買い与えるとするか。純白の毛皮のケープなど、どうだろうか。似合うだろう。
…………。
何度言ったら解る、薪が少ないだろう。真面目に働け」
■キーワード2 『月』
「月が綺麗? 毎日同じ月だろう、形は変わるがそれだけだ。空に浮かび、発光するというだけだ。そんなしかめっ面していないで、紅茶を淹れろ。
…………。
そうだな、月光を浴びているアサギの裸体は嫌いではない、寧ろ美しいと思っている。月の利用価値など、それだけだ。
…………。
アサギ、手際が悪い。いい加減私の指示通り動けないのか」
■キーワード3 『花』
「全く、女は花が好きだとほざくが……お前もか、アサギ。花は見ても何の足しにもならない、だからここには花など植わっていない。雪が解け、春が訪れてもお前の望む世界などここにはない。
…………。
だが、アサギという花は私の傍で咲いている。毎日、咲き続けてくれるのであれば、この上ない至福だと私は思い始めてしまった。愚かな。
…………。
何も言っていない、気にするな。アサギの気のせいだろう」
■キーワード4 『鳥』
「何をやっているのかと思えば、野鳥に餌を与えているのか? お前の食事ではないのかそれは、馬鹿なのか? 何? 構わない? ふん、全く小娘の考え方は解らないものだ。腹が減っても、それ以上与えられない。不平を言うなよ。
…………。
誰かに、頼んで。明日からアサギの食事を増やすように伝えようか、パンが欲しいのなら、言えば与えるのに。そうだな、鳥達と戯れているお前を見ることは、私にとっても癒しの時間なのだ。
…………。
一刻も早く仕事に戻れアサギ、遊び時間は終わりだ。唇を尖らせるな、所有者の言いつけは守るのが筋だろう」
■キーワード5 『風』
「…………。
綺麗だ。文句の1つ言わず、寒空の下洗濯をしているお前は常に懸命で、手を温めながら健気に毎朝与えられた仕事に精を出している。私はそのような真面目さが、気に入っている。シーツが風に揺れて、お前を隠してしまうと、思わず手を伸ばしてしまうのだ。
…………。
アサギ、仕事が遅い。何度言えば解る、効率が悪いだろう。早急に仕事を終わらせろ、今日は別の仕事が入っているのだから」
■キーワード6 『無』
「……眠っているのか、アサギ。また、泣いているのか? お前はいつも、何を見ている? 誰を見ている? 誰を待ち、何を望んでいるのだ?
愛している、いつかお前を迎えに誰かが来てしまうと知っていても」
■キーワード7 『光』
「輝かしい栄光だ、その頂点に立つのは私の尊敬する兄上。時期に平穏な時が来るだろう、無事に王位継承が事を運べば。
私? 私は次男だ、国王の器を持ち合わせていない。何が言いたい、アサギ。小娘の分際で口を出すとは、よい度胸だ。
……光? 私の後方に、光が見える? 何を言っている、支度をしろ、時間がないだろう愚図が。
…………。
お前のその不安そうな表情を照らす光なら、欲しいと思った。私の背に光が見えたのなら、アサギ。私の傍に居れば良い、包まれれば良いだけだ」
■キーワード8 『水』
「…………。
泣きながら、水を汲んでいるのか。凍て付く寒さは、娘には気の毒だろう。指示を出したのは、私だが後悔している。痛々しいな、アサギ。
優しくしてやれなくて、すまない。どう接すれば良いのか、解らないのだ」
■キーワード9 『火』
「暖炉の前に張り付いていないで、少しは私の相手もしろ。笑って誤魔化すな。しかし、お前はどうして火を見ないのだ? 怖いのか? 言わないのか、つまらない奴。
…………。
寒くて震えているのに、火が怖いとは。アサギ、お前が名を呼んだあの男に関係があるのか? お前が男の名をうわ言で呼ぶ度に、私の心は嫉妬の炎で焼け焦げる。そのような事、知る筈もないだろうな」
■キーワード10 『時』
「私は、お前を幸せにしたいと思う。そして私もアサギがいてくれさえすれば幸せだ。愛している、このまま同じ時を、この場所で過ごして行きたいと願わずにはいられない。
……と、伝えたかった。例えアサギが、別の男を見ているとしても」
口説いているのか、いないのか(’’)
まだ続きます。