泥に咲く花
その光景は、ふしぎであった。
汚い泥が、広がる水辺、
中に一輪、あの花が立つ。
一輪だけが、花咲いている。
汚い泥の、中に一つ、
一輪だけで、花咲いていた。
私の前に、花咲いていた。
私の前に、花は一輪。
泥にたたずむ、あの花だけが、
大きく咲いて、輝き放つ。
泥一面を、照らす明かりは、
瞳に向かい、強くひらめき、
そして光は、貫いてゆく。
地の果てへまで、貫いてゆく。
私は花を、集めて寄せて、
水槽に入れ、眺め楽しむ。
あの一輪の、花を添えよう、
豪華絢爛、色とりどりの、
美しい花、溢れる中に、
泥にたたずむ、綺麗な花を。
あの中にある、眩しい花を。
そうしてやっと、手に入れた花、
水槽の中、加えて添えた。
あの一輪の、綺麗は花は、
豪華絢爛、色とりどりの、
花にまぎれて、消えてしまった。
泥にたたずむ、きれいな花は、
あとかたもなく、溶けてしまった。
泥のまなかで、光放った、
あの一輪の、綺麗な花を、
色が狭しと、押し寄せる中、
見開き探り、やっと見つけた、
溶けてしまった、さっきの花を、
なんとかすくい、泥に返した。
輝いていた、あの泥沼へ。
輝き消えた、綺麗な花は、
泥へ返すと、輝き放ち、
泥一面を、明るく照らす。
あの輝きを、あのひらめきを、
また手に入れて、貫いてゆく。
地の果てへまで、貫いてゆく。
私の体、貫いてゆく。
水槽の中、色とりどりに、
咲き舞う花は、みな美しく、
どれが綺麗か、分からなくなる。
泥にたたずむ、一輪の花は、
たった一人で、光輝く。
そこで一番、輝く光は、
どんな花より、瞳を眩ます。