76.スターとの会見
シャオが投影している映像の中で、リー博士は楽しそうに話し始めた。
「今ね、ChronoWorksのエンジニアたちが掘り返しに行ってるのよー。
私も一緒に行きたかったんだけど、ここに監禁されてるの」
「あの……エマ博士とは、面識がおありだったんですか?」
「えぇ、もちろん。博士とはしばらく同じ研究室にいたのよ。
でも、だんだん出社されなくなって、最終的に退職されたの」
「エマ博士は、どういう方でしたか?」
「穏やかで、優しい印象の方だったわ。恨まれてるなんて知らなかったのよ!」
「犬の置物が届いたのは、いつごろでしょうか?」
「確か……博士が退職されたすぐ後だったと思うけど……ちゃんと覚えてないの!」
「アイリス、モリス博士に繋いで」
私は、放っておくと永遠に話を続けそうなリー博士の会話を切り上げ、モリスAIとの交信を始めた。
リビングの窓がモニターに切り替わる。
『やぁ、フジワラくん』
「モリス博士。リー博士のもとに、博士が危惧されていた“贈り物”が届いていました」
『取り扱いには、十分気を付けるように。AIへの干渉が最も危惧される』
「きゃーーー!モリス博士?!本物?!」
リー博士の興奮した声が、シャオのスピーカーから弾けた。
『いかにも、と言ってもAIだがね』
「こちらはリー・ヤオ博士です。給仕ロボットを通じて通信が繋がっています」
『初めまして、リー・ヤオ博士。私はモリスです』
「初めまして!博士の残されたプログラムや論文は、すべて拝読しております!」
『そうか、それはうれしい。ありがとう』
映像の中のリー博士は、発言を控えめにしながらも、
スターを前にしたファンのように、そわそわと身を揺らしていた。




