74.Unit-X100-003
私は口を開いた。
「“贈り物”……ねぇ、アイリス。リー博士とつなげる?」
「承知しました。……リー博士と通信を試みましたが、受信が困難な場所におられるようです」
「そう……たぶん、私みたいに自分を隔離してるんだね。――メールを打ってくれる?CCで、ケンにも」
アイリスが無言でうなずき、画面に新しい通信ウィンドウを開いた。
私は視線を宙に漂わせながら、言葉を口にしていった。
アイリスはそれを正確に文字へ変換していく。
「――以前、注文した置物が、不吉な何かにすり替えられて送られてきたという話を、カリーム博士から伺いました。
それは“犬の置物”ではありませんか?
モリス博士の言う“贈り物”というのは、それを指しているのではないかと危惧しています――」
「送信完了いたしました」
アイリスの報告が終わると、部屋の空気がいっそう静まり返った。
私はソファに沈み込むようにして、しばらく動けなかった。
「シャオは……リー系統だって言ったよね。利用を中止するべきかな」
自分でも驚くほど、感情のない声だった。
アイリスが短い間を置いて答える。
「シャオの監視は私が継続していますが、安全性が完全には担保されていません。現状では、利用を控えたほうが賢明かと」
「そう……」
―カチッ。
金属音が、静寂を裂いた。
シャオが、今までに見せたことのない動きをした。
「なに?!」
「サヤカさま、お下がりください!」
アイリスがすばやく立ち上がり、私とシャオの間に身を滑り込ませた。
「あーー!繋がった!フフフッ」
「危険です、寝室へ!」
私が立ち上がって退避しようとしたその瞬間、シャオのスピーカーから女性の声が響いた。
「待ってー!大丈夫よ!リー・ヤオよ。IDを確認してーー!!」




