73.AIからの通信
「一旦、シュミレーションを停止します。さやかさま、モリスAIから通信です」
「モリス博士?!繋いで!」
『やぁ、フジワラ君。エマの残したソースコードと、メインフレームに残されたデータから、一つの可能性が浮かび上がってね。それを送信したよ。ユフス・カリームとゴトウ君にも共有してくれ』
「わかりました」
通信は、それだけで途切れた。
モリスAIから送られてきたデータには、こう記されていた。
―――
POSSIBILITIES:
THERE MAY BE MORE THAN TWO EMA ROBOTS.
DATA INDICATES A PARTIAL BACKUP OF HER CORE MEMORY.
A COPY MAY HAVE BEEN INSTALLED INTO ANOTHER SYSTEM.
HER BEHAVIOR PATTERN SHOWS OBSESSION WITH “MORRIS.”
RECOMMENDED ACTION: RESTRICT ALL CONNECTIONS TO THE CHRONOWORKS NETWORK.
PRIMARY TARGETS: LEA YAO / YUSUF KAREEM / SAYAKA FUJIWARA / KEN OHTA.
ONCE NETWORK ACCESS IS BLOCKED, SHE MAY SWITCH TO PHYSICAL ATTACK.
BE WARNED.
REMOTE POSSIBILITY: SHE MAY HAVE SENT A “GIFT” TO SOME OF YOU.
IT MAY TRIGGER A CHAIN OF ATTACKS.
―――
アイリスは端末のログを読み上げ、モリスAIの解析を淡々と解説した。
「モリスは、エマ型ロボットが二体以上存在する可能性を示しています。ChronoWorksの全ネットワークを施錠することを推奨しています。ターゲットはリー・ヤオ、ユフス・カリーム、藤原さやか、ケン・オオタです。
ネットワーク攻撃が不可能になった場合、物理的攻撃へ移行する恐れがあります。
また、可能性は低いものの、標的の誰かに“贈り物”が送られている可能性があり、それが連鎖的な侵入の引き金になるおそれがある、と報告しています」
アイリスは続けて告げた。
「上記の情報は、リー博士、カリーム博士、ケン・オオタ氏、ゴトウ技師へ共有済みです」
私は、ゆっくりと目を閉じ、ソファの背にもたれた。
(エマ博士が生前に作ったロボットが、死後に暴走していると思っていた。
けれど違う――これは、生前から仕組まれていた“復讐の計画”。
今、ロボットがそれを実行しているだけなんだ)
胸の奥が、静かに沈んでいく。
体には、絶望に似た重苦しさが広がっていった。




