69.贈り物
私は寝室のベッドで目を覚ました。
――ピンポーン。
ドアベルが鳴っている。
何時かも分からないまま、ぼんやりとリビングへ向かった。
シャオも、アイリスも、今日は出かけているようでいない。
ドアフォンに手をかける。
モニターには、ケンが映っていた。
「やぁ、さやか。会いに来たよ」
胸の奥が一気に熱くなる。
私は、うれしさのままドアを開けた。
そこには――ケンと、エマ、そして写真でしか見たことのないモリス博士が立っていた。
「入っていいかな?」ケンが言う。
「どうぞ」
私は三人を部屋に招き入れ、キッチンでお茶を淹れた。
リビングのソファに座る三人。
私はケンの隣に腰かける。
「フジワラ君、この度は大変ご苦労をかけたね。お礼を言いに伺ったんだ」
細身で長身のモリス博士が、柔らかく笑った。
「いえ……そんな」
「これ、犬の置物なの。受け取ってくれる?」
エマがにこやかに手渡した。
手にした瞬間、異様な感触が伝わった。
ぐったりと横たわり、目を閉じたままの犬の――死体のような造形だった。
「ひっ……!」
私は、ぞっとして思わずそれを放り投げた。
床に落ちて砕ける、そう思ったが、そうはならなかった。
犬の置物ごと、空気に吸い込まれるように消えていった。
――その瞬間、私はリビングのソファで目を覚ました。
「違う、違う!全然終わってない!犬の死体の置物と“交換”してるんだよ!」
「さやかさま?どうされましたか?」
アイリスの声が聞こえた。
「アイリス、モリスAIと話がしたい。つないでくれる?」
「承知しました」
ーケンが危ない。
私はそう直観した。




