67.AIとエンジニア
私は、現状の復旧の見通しを知りたくて質問した。
「新しい移動装置の製作には、どのくらいの時間がかかりそうですか?」
「早くても5年、長ければ10年だろう。私はもう生きていないな」
カリーム博士はさらりと言い放った。
『5年は妥当だろうな』
モリスも同意する。
「それまでのスマートウェア生産工場の運営については、どのような対策が考えられますか?」
「あぁ、それなら問題ない。生産AIの新しいプログラムは、すでにリー博士が完成させている。今ごろは、新工場で稼働を始めているはずだ」
カリーム博士は、どこか誇らしげな声音でそう答えた。
(以前、ケンが――新しい工場の建設で街を離れると言っていた。あれは、このことだったのだろうか)
思い返すその記憶は、ほんの数か月前のことのはずなのに、もう遠い昔の出来事のように感じられた。
「街間の輸送は、いまだ停止したままで、プログラムが改修されても工場を再開できる状態ではありません」
『物資の運搬程度なら、半日ほどで復旧できるだろう。そして…』
黒い画面にアスタリスクがひとつづつ増えていった。しばらく思考モードになっていたモリスAIの声が響いた。
『人の移動を可能にする、移動装置の設計書だ』
モリスAIの声が響いた瞬間、全員のガジェットにモリスAIからメールが届いた。
私には理解できない、長文の文字列。だが、それを読んだ、カリームとゴトウが同時に感嘆の息を漏らした。
『ユスフ・カリーム、君ならそれくらいすぐ作れるだろう?』
モリスが言った。
「馬鹿を言うな。私は95歳だぞ!もういつ死んでもおかしくないんだ。少しは労わってくれ」
『死んだら、ゴトウ君がAIにしてくれるから安心してくれ』
「いや、私もいつ逝くか分かりませんので……」ゴトウが苦笑いする。
「まったく……チャールズ、君は生前も死後も自分勝手だ!」
「では、街間移動装置の再構築はゴトウ技師を中心に、カリーム博士にサポートをお願いするということでよろしいですか?」
「えっ、私が?いやそれは…」ゴトウが慌てるが、
「それで問題ない」カリームが即答したため、議題は承認された。
「人命に関わるスマートウェアの復旧を最優先とし、適宜再調整を行いながら進めましょう」
どこからどう見ても、参加者の中で最も未熟な私が、その場をまとめた。
「ゴトウ技師、早速カリーム博士とプロジェクトを進めてください」
私は指示を出し、会議は一旦終了した。




