65.通信会議
「モリスの解錠に成功したようだね」
音声のみの通信から、カリーム博士の低く落ち着いた声が響いた。
非常用の特定回線を経由し、ようやくカリーム博士との通信が確立した。
「NEW DISCOVERYか!私も耄碌したものだ。そんな大切なことを忘れていたとは……いやはや、フジワラ君、君が優秀な人で助かったよ」
「私が優秀だなんて、とんでもないです!」
思わず声を上げ、ビデオ通話でもないのに、必死に頭を振っていた。
「ふふ、君は自信の能力に無自覚なタイプなのかな?」
カリーム博士の笑い声が、スピーカー越しに柔らかく響く。
その直後、通信システムが自動的に新たな回線を接続した。
まず、工場の休憩室に待機していたゴトウ技師が応答する。
「……もしもし、こちらゴトウです。通信、良好です」
「接続完了。モリスAIとの音声チャンネルを開きます」――アイリスの声が冷静に響いた。
次の瞬間、電子的な音質を帯びた声がスピーカーから流れる。
『ユスフ・カリーム、久しぶりだね』
「リチャード!本当に久しぶりだ!また機械っぽい声になってしまったものだね!」
「ハハハ。ゴトウくんに話せるようにしてもらったんだよ。なかなかの美声になっているかね?」
この世界の科学技術をけん引してきた二人の“怪物”が、今、邂逅し、ジョークを交わしている。
ゴトウ技師が小さく息をのむ音が聞こえた。
映像こそないが、三人の天才研究者が同じ回線上にいるという事実に、自然と背筋が伸びた。
――こうして、カリーム、モリス、ゴトウ、そして私の四人による音声会議が始まった。
この場に自分が混ざっているという場違いな感覚は、今だけは考えないようにした。
「さて、これまでの経緯をざっと共有してもらえるかね?フジワラ君」
カリーム博士が進行を担い始めた。




