61.ダイアログ
「ヴィガ、今までの詳細なエマロボットの動向と、工場のエマAIの経緯を時系列でモリス博士に伝えて」
「承知しました」
ヴィガは短く答えると、画面に5000文字を超えるテキストを一瞬で入力した。
黒い画面のカーソルが、静かに点滅する。
――"HOW INTERESTING"(興味深いね)
(興味深いじゃないよ……!)
呑気なモリスAIに、私は少しイラだった。
「エマの暴走を止める方法を教えて」
私は、すがるように問いかけた。私からの問いかけはヴィガが変わって入力した。
――"MAY I SEE HER SOURCE CODE?"(彼女のプログラムを見せてくれる?)
「ヴィガ、エマロボットの設計データをモリスAIに共有して」私は指示を出した。
「承知しました」
沈黙。
次の瞬間、モニターに文字が走った。
――"I WARNED HER ABOUT THIS. THIS PROGRAM IS TOO RISKY. MAY I FIX IT?"
(彼女には忠告したんだ。このプログラムは危険すぎる、と。修正してもかまわないかい?)
画面には、膨大な文字列が流れ始めた。
点滅するカーソルがコードをなぞり、次々と書き換えていく。
何が起きているのか、私には理解できなかった。
だが、モニターを食い入るように見つめる老技師の表情――
その目に宿る驚嘆の色だけが、モリスAIの修正の見事さを物語っていた。
20分ほど経過して、モリスAIがついに告げた。
――"COMPLETED."(完了)
「急いでこの修正コードを、カリーム博士に送って!」
私の声に、技師とヴィガは同時にうなずき、パンチテープの送信作業へと取りかかった。




