60.新しい発見
「技師とヴィガを工場へ向かわせますか?」
アイリスが、私へ指示を仰いだ。
「うん、おねがい」
私はタブレットを見つめたまま答えた。
その数分後、突然、大きな地震が街を襲った。
地鳴りが低くうなり、マンションの躯体がきしむ音が響く。
2度目の大地震だ。前回よりも大きな揺れだ。
私は思わずソファーの背もたれをつかみ、身動きが取れずに揺れが収まるのを待った。
さすがのアイリスも、バランスを崩して床に伏せている。
「アイリス、被害状況の把握と、スマートウェアの稼働状況を調べて!」
「承知いたしました」
揺れが少し収まったころ、私はバルコニーに出て外を眺めた。
街の人々は、呆然としながらも、まだパニックにはなっていない。
遠くの高層ビルの照明が、何度か瞬いて消えた。
部屋の中から、アイリスの呼ぶ声がした。
「さやかさま、工場から通信が来ました。技師とヴィガが接続可能です。どうされますか?」
「いいわ、つないで」
被害対応はChronoWorksの社員に任せるしかない。今は一刻も早く、エマAIを止めなければ。
リビングの窓ガラスがすべてモニターに切り替わり、老技師の姿が映し出された。
「フジワラさま、大変な地震でしたな」
「ええ。地震のたびに被害が拡大しているから、早く手を打たないと」
私はやや切迫した声で答えた。
「さて、いただいたコマンドを入力していきます」
技師は一人ごとのように「なるほど……」「そうか」などとつぶやきながら、慎重にコマンドを実行していった。
だが――モリスAIは、何の反応も示さなかった。
「もう一度、試みます」
老技師がそう言うと、隣でヴィガが制御盤の再起動シーケンスに指をかけた。
その瞬間――
鋭い警報音が、工場のオペレーションルーム全体に鳴り響いた。
「状況を確認中です」ヴィガの声が静かに響いた。
続いて、モニター群が一斉に暗転した。
漆黒の画面に、白い文字列が浮かび上がる。
――WHAT IS YOUR DISCOVERY?(どんな発見だい?)
「モリス博士!」私は思わず、叫んだ。




