59.解錠コマンド
私は、パンチテープで送られてきたカリーム博士からの通信内容を開いた。
カリーム博士が推定した解錠コマンド。
INIT-MORRIS
GIFT.LOOP
BATCH-ENTRY
SAFE-LINK
「アイリス、これの意味わかる?」
「はい。順に解釈すると――」
アイリスは淡々と解析を始めた。
「INIT-MORRIS はモリスAIの初期化命令。
GIFT.LOOP は博士が“贈り物プログラム”として開発したサブルーチン。
BATCH-ENTRY は一括入力処理。
SAFE-LINK は保護接続コマンドです。」
「つまり、技術的にはこの順番で合ってるのね……」
私は小さくうなずいたが、どこか引っかかる。
モリス博士宛のメールの件名。あるフレーズが頻出していた。
――“NEW DISCOVERY(新しい発見)”。
「……アイリス、モリス博士って、かなりのメールを未読のまま放置してたよね。
でも“NEW DISCOVERY”って件名のものだけ、全部開封してなかった?」
「確認しますーーーはい、博士は多くの通信を未読のまま保持していましたが、“NEW DISCOVERY”という件名、または本文を含むメールには、全件即時返信していました。」
「やっぱり……」私は呟いた。
「モリス博士にコマンドを届けるには、まず“NEW DISCOVERY”を入れる必要があるんじゃないかな?」
アイリスがわずかに間をおいて返した。
「――博士は、発見の報告を“贈り物”と呼んでいました。
それが、GIFT.LOOPの起動条件かもしれません。」
私は、タブレットに文字を打ち込んだ。
「この順番はどうかな?」
NEW-DISCOVERY
GIFT.LOOP
INIT-MORRIS
BATCH-ENTRY
SAFE-LINK
私は画面に並んだ文字を見つめた。




