53.穴の開いた手紙
紙を出力し続けていたその機械を、私はじっと見つめていた。
やがて通信が終了したのか、紙を一気に吐き出して、古い機械は沈黙した。
手にしたのは、全長2メートルほどもある穴のあいた紙。
私はそれを広げながら、アイリスに問いかけた。
「ねぇ、アイリス。これ、解読できる?」
「こちらは暗号化された情報になっております。専用の入力機械にインプットしない限り、解読は困難です。ただし――冒頭の送信者情報だけは判読可能です」
アイリスは紙の冒頭に並ぶ穴の配列を指さした。
「【送信者:ユスフ・カリーム】とあります」
送信者は、カリーム博士。
エマとモリス博士を直接知る人物だ。
街の外から、こちらへ連絡を寄こしてきたのだろう。
これを何としても解読しなければならない。
「アイリス、これを入力する機械を検索して」
「承知しました」
彼女のデータベースに該当機が存在するかは不明だ。
もし見つからなければ、人海戦術で探すしかない。
「さやかさま、該当機が本社倉庫内に保管されている可能性があります。行ってみますか?」
「うん、お願い。それと、ここにあるメインフレームっていうの?これの解析も後でお願いするね」
「承知いたしました」
私は、エマの家を後にした。
外はすでに真っ暗になっていた。
待たせてあった社用車に乗り込む。
車窓からは、一旦の落ち着きを取り戻したかのように見える街並みが流れていく。
「アイリス、いつスマートウェアが止まるかわからないから、私にこちらの人間が近づかないようにして」
「はい、本社の方も人払いをしておきます」
「よろしく」




