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ホワイトな異世界  作者: tomsugar


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50/77

50.帰宅したエマ

工場へ向かう車内で、私はアイリスに話しかけた。

「ねぇ、アイリス。工場の制御を行っているAIと会話ってできない?」


気づけば呼び捨てになっていた。距離が近づいた――そう感じているのは、きっと私だけだろうけれど。


「工場を制御しているAIは、容易に外部から干渉を受けないよう設計されています。会話は不可能です」

「そりゃ、そうだよねぇ……」


答えは予想どおりだったが、頭の中のもやは晴れない。私はエマの行動の中に、まだ見落としているヒントがあるのではないかと考えた。

「そういえば、エマが家に帰ったあの日の映像、まだ確認してなかったよね」

「はい。監視カメラの映像がございます」

「じゃあ、それを見せて」


工場へ到着した私たちは、システムルーム#1に直行した。モニターに映し出されたのは、一見、何の変哲もない帰宅風景だった。

彼女はドアを開け、靴を片づけ、ジャケットを玄関のクローゼットに掛ける。

キッチンで手を洗い、コーヒーをセットすると、湯気の立つカップを片手にリビングへ向かった。


カウチに腰を下ろし、コーヒーテーブルに伏せてあった読みかけの本を取り上げる。

ページを繰る音が静かな部屋に溶け、30分ほどは読書に没頭していた。


やがて本を再びテーブルに伏せて置き、立ち上がる。

キッチンでカップを洗い流すと、そのまま廊下に出て、奥の書斎へと歩いていった。


「……隠し部屋?」思わず息をのむ。

「はい。そのようです」アイリスの声が静かに返る。


やがてエマは、何事もなかったかのように現れ、玄関を出ていった。


私とアイリスは、すぐに社用車で彼女の家へ向かった。

あの隠し部屋は、家の設計図には描かれていなかったはずだ。


――あの中には、一体何が隠されているのだろう。


工場の出荷数の異常。

エマの干渉。

そして、彼女の本当の目的。


(早く突き止めなければならない)

胸の奥に、言葉にできない焦燥が渦を巻いていった。

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