48.AIからの”解放”
翌朝、ベッドですっきりと目覚めた私は、しばらく天井を見つめていた。
昨日の出来事が夢だったかのように思えたが、すぐに「今は緊急事態なのだ」という現実が胸に戻ってくる。
――会社や街の状況を把握しなきゃ。
そう思いながら体を起こし、リビングへ向かった。
そこには、いつものように完璧な姿で立つアイリスがいた。
「おはようございます、フジワラさま」
「おはよう」
昨日は彼女のおかげで熟睡できたのだ。なんというありがたい存在。
「昨日はありがとう。おかげでぐっすり眠れたよ」
「いいえ、とんでもございません」
シャオが用意してくれた朝食をとりながら、私はアイリスの報告に耳を傾けた。
この街では、時間ごとに店が入れ替わり、建物の座標も固定されないのが常だった。
だが――昨日の一件以来、同じ店が営業を続け、各建物の座標も動かないままになっているという。
私から見れば、むしろ“正常”に思える状態だ。
けれどこの世界の人々の多くは、朝から晩までAIの判断に依存して生きている。
そのため、使っていたAIが動かなくなった者たちは、指示を失い、途方に暮れているらしい。
「完全にどうしたらいいかわからない人たちは、どうやってサポートしてるの?」
「担当社員が、簡易サポートAI機器を貸与しています」
「それってどんなもの?」
「スピーカーのような形で、質問すると最適解を返す――きわめて単純な仕組みです」
「なるほど、音声アシスタントみたいなものね」
そのほか、昨日の会議で決定した通り、街全体の地図を作成しエリアごとに分割、各エリアに自律ロボットを配置して、道案内や異常時の連絡に対応させているという。
その日の昼過ぎ、再び大きな地震が街を揺らした。
そして、さやかが懸念していた通り、スマートウェアの異常が検知された。
異常はすぐに収束したが、大きなトラブルに発展しかねない事態だった。
「スマートウェアの記録から、健康サポートが切れると急激な体調不良に陥る危険性のある使用者をリストアップして。容体が急変する前に、その可能性がある人を病院へ案内して」
私は指示を出しながら、街へと繰り出した。
同時に、各エリアに1か所ずつ、軽微な体調不良に対応できる簡易医療ルームを設置することも決めた。




