47.アイリス
会議の後、すぐに街の住人へ向けて当面の対策と今後の案内が発布された。
工場からマンションへ戻る道すがら、混乱していた街の様子は少しずつ落ち着きを取り戻しているように見えた。
私はアイリスを伴って帰宅した。不測の事態が起きた際に、すぐ指示を出せるようにするためだ。
一方、カメリア、サファイア、アンバー、ヴィガの四体は、それぞれ重要部署の担当者につき、サポートにあたることが会議で決定されていた。
――ああ、シャオ。あなたはエマの系統じゃないよね……
そう願いながら、さやかは自宅のドアを開けた。
部屋は暗いままだった。
いつもは帰宅前にシャオが電気をつけ、玄関で待っていてくれるのに。胸に不安が広がる。
「おかえりなさいませ、さやかさま」
奥の部屋から、シャオが慌てて飛び出してきた。
その声に力が抜ける。そうだ、自分の位置を知らせているスマホを今日は持っていなかったのだ。今はアイリスが付き添っているので、スマホがなくても連絡は取れてしまう。
「ただいま、シャオ」
この子をこのまま使い続けて本当に大丈夫なのか……と、私はそっとアイリスに視線をやった。
「Unit-X100-003は、リー博士が開発された家事ロボットですので、問題ありません」
「リー博士……ありがとうー!!」
思わず、胸の奥から叫びがこぼれた。
アイリスはロボットでありながら、人間のように配慮する。私が食事しているときは、テーブルに一緒に座り、さりげなく歓談してくれるのだ。
いつ不測の事態が発生するかわからない。眠れるときに眠っておくしかない。お風呂をすませ、早々にベッドにもぐりこむ。
だが頭は興奮状態のまま、眠れるわけもなく、何度も寝返りを打っていると――
「眠れませんか?」ドアの外からアイリスが声をかけてきた。
「うん、興奮しちゃってて」
「よろしければ、脳波の調整を行いますか?」
「そんなことできるの?お願いできる?」
アイリスが部屋に入り、ベッドに横たわる私の額にそっと手を当てた。
そのあとは記憶がない。目を覚ますと、朝だった。




