46.会議
モニターには25名の顔が並んでいた。3名は休暇中で、今回の会議には不参加だという。
私は姿勢を正し、声を発した。
「みなさん、はじめまして。第二世界から来た藤原さやかと申します。現状、当社のCEOはこの街に不在です。そこで、この緊急事態における対策の指揮を、私が一時的に執らせていただきたいと思います。ご協力をお願いいたします」
画面の向こうに並ぶ幹部たちは、一様に真剣な表情で頷いていた。
会議では、まず街の各機能について――正常に稼働しているもの、すでに異常が見られるもの――を一つずつ洗い出した。
その上で、今回の事態がエマ・ロボットによるテロ行為の可能性があることを共有した。
「まだ断定はできませんが、街全体のシステムに影響を及ぼしているのは事実です。
そして、スマートウェアへの干渉も今後視野に入れて対策を考えなければなりません」
画面越しの幹部たちは、どこか他力本願のような表情を浮かべていた。
まるでAIからの指示を待っているかのようだ。
「もしスマートウェアにまで影響が及んだ場合、命に関わる問題が一気に表面化します。
その際の対策を――これからの議題として、優先的に検討していきたいと思います」
重苦しい沈黙が、モニターの向こうに広がった。
私はさらに言葉を続ける。
「エマ・ヘミングウェイ博士の開発したシステムの上に構築されたものは、すべて破綻する可能性があります。ですから優先順位を人命にかかわるものから順にリスト化し、共有していきましょう。
そしてもう一つ――この街には地図が必要です。特に医療機関や生活必需品を扱う店舗の場所を示したものが。住人の多くは地図を使う習慣がないでしょうから、そのサポート方法も併せて検討してください」
会議は、各部署がそれぞれの影響を報告する形で進められた。
街の店を入れ替えるシステムの担当部署、適切な医療機関を案内するシステムの部署、医療機関と連携を担う部署――いずれも今回の件で大きな影響を受けることが明らかになった。
最終的に、人々のパニックを最小限に抑えるための対策と、優先すべき復旧手順について、具体的な方針が定められた。
数時間に及ぶ会議がようやく終わり、決定事項に基づいて実務を担う自律ロボットの選定が始まった。
今回の地震で不具合を起こしたAIは、すべてエマ・ヘミングウェイ博士の設計系統に属していた。
そのため、エマ・ロボットの干渉を受ける可能性のある個体は全て稼働停止とされ、業務から除外された。
今後は、別系統の設計を持つモデルのみを使用する――そう決定された。
そして驚くべきことに――アイリス、カメリア、サファイア、アンバー、ヴィガは、いずれも使用可能と判定されたのだった。
「……ケンは、この事態を予見して、彼女たちを工場に配備してたのかしら…まさか、ね」
私は独り言とも、何ともつかないことを呟いて、アイリスにチラリと目をやった。




