45.孤立
私はアイリスに指示を出した後、システムルーム#1へ向かった。ケンに現状を伝えるためだ。
「ケン・オオタと通信したい」
コマンドを出す。しかし窓はモニターに切り替わらず、しばらくしてAIの音声が響いた。
「現在、街の外部との通信は一時的に途絶しています。リトライ中です」
「リトライは止めていいわ。代わりに、ほかの街へ向かうフェリーの状況を調べて」
しばらくして応答があった。
「到着予定だったフェリーは二時間遅れのまま、まだ入港しておりません。渡航先のポートとの連絡が取れないため、停泊中のフェリーも出発を見合わせています」
「……そう。つまり、この街は完全に孤立しているのね」
胸に冷たいものが走る。だが次の答えが、わずかに緊張を和らげた。
「街のエネルギーおよび食糧は、すべて自給自足で賄われています。現状では、これまでどおりの生活が可能です」
「そう……ひとまず安心ね」
その時、システムルームにアイリスが数体の自律ロボットを伴って入ってきた。
「工場で勤務しているロボットです。左から、カメリア、サファイア、アンバー、そしてヴィガ」
アイリスが紹介した。
彼らはみな、中性的な造形をしていた。
声も仕草も穏やかで、男性とも女性ともつかない――
「そう、よろしくね。みんな、椅子に座ってくれる?」
ロボットに疲労はないのだから座る必要はないのだろう。だが、私が落ち着かないので、彼らにも席に着いてもらった。
赤い瞳を持つカメリアが最初に口を開く。
「この工場での生産物は、街の外から毎日部品を入荷しています。入荷が滞れば、生産の継続は困難です」
「私も同意見です」サファイアが淡々と補足する。
アンバーとヴィガも無言で頷いた。
「……なるほど。では状況が戻るまで、この工場での部品生産は一時中止ということね」
「はい」全員が揃って答える。
私は次の問いを投げかけた。
「では、ChronoWorksの社員で、組織の意思決定権を持っている人は、今、この街にいる?」
「CEOは現在、この街には不在です。部長クラス以上の社員は28名。その中で最もランクが高いのは――フジワラさまです」
「えっ、私?この会社の運営なんて何も知らないけど……まぁいいわ」
(今は迷っている場合じゃない。今の危機を乗り越えるために、腹をくくろう)
あまりにも急な展開に、めまいがしそうになる。
私は深く息を吸い込み、意識を立て直した。
「会社の運営に必要な情報を、ざっと教えてくれる?」
「承知しました」
アイリスの説明を30分ほど聞いた後、私は指示を出した。
「会社の幹部をオンラインで、緊急招集して」




