44.事態の収拾
工場を出て街へ出ると、外のパニックはさらに広がっていた。
街の生活を快適に保つために稼働していたChronoWorksのAIが、完全に止まってしまったのだ。
夕方になれば切り替わるはずの店舗も、昼のまま固定されている。
――街は、時間の経過に合わせて組み変わることをやめてしまった。
これは、エマの仕業に違いない。
(スマートウェアはどうなんだろう?命にかかわる人も多いはず……)
胸に冷たい不安が広がり、私は再び工場へ引き返した。
「アイリス、この街で稼働しているスマートウェアは正常に動いてる?」
「確認します」
「それと、この街に第二世界の人間はどれくらいいる?」
さやかが立て続けに問いかけると、アイリスは淡々と答えた。
「一つ目のご質問にお答えします。この街で稼働中のスマートウェアは現在10万4532機、すべて正常に稼働しています。
二つ目の質問にお答えします。現在この街に滞在中の第二世界人は、フジワラさまお一人です」
「私ひとり……?」
「はい。現在もこちらで生活しておられるのは、フジワラさま、リーさまの他5名おられます。最初に来られたヘミングウェイさまの後、20名を超える科学者がこちらに招待されましたが、同時期に来られた方々は全員、他界されています」
「じゃあ、スマートウェアが止まっても、私さえ外に出なければ、こちらの人が命を落とす危険はないのね」
「はい。ただし、健康維持をスマートウェアに依存している方は相当数おられますので、一斉に体調異常が発生する可能性はあります」
「今、この街の病院はどこにある?場所を早めに周知しておかないとだめじゃない?」
「体調異常が発生した場合、自動的に病院案内が通知される仕組みです」
「そのシステムがダウンしたら?」
「それは……」
「エマは、この街を滅ぼそうとしているのよ。システムが完全に落ちる前に、対策を考えないと。自立AIはあなただけ?他にいるなら、彼らを集めて、すぐに会議を招集して」
「承知いたしました」




