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ホワイトな異世界  作者: tomsugar


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42/77

42.滅びる世界

スマホはずっと震え続けていた。

フェリーに乗り込み、ようやく画面を覗くと、ケンからの着信だった。


「もしもし」

「さやか!フェリーから降りろ!」


その声にハッとして振り返ると、桟橋がゆっくりと離れ始めていた。


私は一か八かで身を投げ出した。

フェリーのデッキから桟橋へ――。

伸ばした手がギリギリで手すりを捉える。だが、スマホは指の間から滑り落ち、海面へと沈んでいった。必死に桟橋の手すりを握りしめる私の腕を、職員が駆け寄って引き上げてくれた。


どうにか桟橋の上に這い上がると、フェリーのデッキにはエマの姿があった。

彼女は私を見つめて、声なき口元で告げる。


「リチャードのいない世界なんて、滅びればいいのよ――」


声は届かない。

だが、確かにその口が、そう言ったのが見えた。


見送る視界が滲む。

気づけば、滝のように涙が頬を伝っていた。


――あれが、エマさんの生前の本音なのだ。

彼女の慟哭に突き動かされているロボットが、

今、暴走している。


桟橋にへたり込み、そんなことを考えていると、地面の底から轟音が響き、桟橋全体が激しく揺れ始めた。


「地震だ!」

周囲の職員たちが悲鳴を上げる。

こちらに来てから初めての揺れだった。


やがて揺れが収まり、私はよろよろと立ち上がる。

アイリスに指示を出さなければ。

だがスマホを失った今、彼女にエマの追跡を命じることもできない。バスの料金すら払えない。歩いて工場へ戻るしかなかった。


街はすでにパニックに包まれていた。

――この世界の人々は、地震に慣れていないのだろうか。

そんな場違いな考えが、呆然とした頭をよぎった。

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