38.エマの行方
会社に残されたモリス博士の写真を確認しても、犬と一緒に写っているものは一枚もなかった。
「モリス博士の元同僚にコンタクトできるか、当たってみるよ」ケンはそう言った。
それからさらに30日程が過ぎた。
工場の出荷数は出荷予定数の〈100〉を維持し、変動は一切なくなっていた。
エマの家に設置された監視カメラも、あれ以来彼女の姿を捉えていない。
アイリスに調べさせた来歴や活動記録にも、ペットロボットへの反対や思想的な痕跡は見つからず、捜査は完全に行き詰まっていた。
もともとは「出荷数の異常を追跡する」という依頼から始まった仕事だ。数字が安定している以上、目的は果たしたと言える。
だが――エマの動きはあれから無い。
彼女は単に地下に潜っただけで、問題は何ひとつ解決していないのではないか。そんな予感が胸に重くのしかかっていた。
ケンに頼み、街の工場だけでなく、他都市にあるChronoWorksの拠点ビルの監視カメラも調べてもらった。だが、どこにもエマの痕跡は残されていない。
生存している元同僚もほとんどおらず、消息不明の科学者が一人だけ残されているという。
――その人物に直接話を聞くことができれば、何か糸口がつかめるかもしれない。
工場での検数作業を終え、数値入力を済ませた頃、アイリスが現れた。
「オオタさまが、システムルーム#1にてお待ちです」
「えっ?分かった。着替えたら向かうわ」
「承りました」
急いで着替えを済ませ、システムルームへ向かう。
ドアを開けると、そこにはケンと、モニターに映し出された一人の老人の姿があった。
「あぁ、さやか。紹介するよ」
ケンはモニターに映るその老人を手で示した。




