35.リチャード・モリス
ケンとの会食から数日後。
その日も、いつものように工場へ出勤する。
出荷数は初期設定どおり〈100個〉。こちらに来て以来、初めて正しい数値が表示されていた。
“エマの家”を特定したことが影響しているのか、それとも元々揺らぎがあったのか――判断するには、まだデータが足りない。
通常業務を終え、着替えを済ませると、私は迷わず《システムルーム#1》へと足を運んだ。
ーー
すでに、通いなれたシステムルームに入り、椅子に腰かけると、私はアイリスに声をかけた。
「アイリスさん、今日はリチャード・モリス博士について調べて」
「承知しました」
モニターに年表が映し出され、静かな声が流れはじめる。
「リチャード・モリス――1930年に誕生。
1948年、18歳でエンジニアとしてAIロボティクス研究チームに参加。
1955年、25歳のとき、“第二世界”との人間の転移に成功します。
その後、1965年にエマ博士を含む5名の研究者と共にChronoWorksを設立し、1970年には初代スマートウェア〈ボルゾイ〉を発表。
……しかし同じ1970年、40歳でその生涯を終えています」
一拍置いて、アイリスが補足を加えた。
「モリス博士は、将来的に予測されていた労働力不足への対策として、働くロボットの開発に従事されていました。
研究の最中、“第二世界”で活動していたエマ・ヘミングウェイ博士を招致し、AI研究を飛躍的に発展させました」
無機質な声が、部屋に低く響く。




