34.目的地へ行く方法
帰りの車の中で、ケンがふいに口を開いた。
「エマ博士のあそこまでの深い歴史は、僕も知らなかったよ」
「私は……エマの背景を知らないと、彼女の行動の理由がわからないと思って」
「確かにそうだね。まさかエマ博士の開発したAIロボットが、この件に絡んでくるとは想像してなかった」
「まだ、断定はできないよ。彼女が来たときに数値が上振れしてる、というだけだし」
「そうだな」
私はふと、昨日の衝動を思い出して苦笑した。
「…そういえば、エマの住んでいた家、とっさに買っちゃったんだ」
「自費で?」
「うん」
「後で経費申請して」
「え?そんなの通るの?」
「君が個人的に欲しかったなら別だけど、調査の一環で購入したんでしょ?」
「……そうだね」
「じゃあ、問題ないよ」
ケンは話題を切り替えるように笑った。
「今日は何が食べたい?」
「お鍋が食べたい」
そんなもの、こちらの世界には無いかもしれない――そう思いながら言ってみた。
「了解」ケンはあっさりと承知した。
しばらくドライブすると、小さな料理屋に着いた。
「ねぇ、地図のない街で、どうやって目的地にたどり着いてるの?」
私がエマと出会ったあの場所に行くまで、何日もかかったことを思い出しながら尋ねた。
「そうだな…目的地を思い描いて向かうと、そこに到着するんだ」
「私にはできないよ?」
「でも毎朝、工場にはたどり着いてるだろ?」
「え?工場の場所も移動してるの?」
「もちろん。君のマンションの場所もだ」
「そうなんだ……気づかなかった」
「具体的なイメージがないと、その場所は現れないのかもしれないな」
「ケンも、よく分かってないんだ?」
「うん。君に聞かれるまで疑問にも思わなかった」
会話が途切れたそのとき、ちょうど料理屋の入り口に到着した。




