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ホワイトな異世界  作者: tomsugar


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25/79

25.スマートウェア

次の瞬間、部屋に声が満ちる。

それはAIによる自動ナレーション――にもかかわらず、息遣いや抑揚まで人間と寸分違わない完璧な声だった。


『異世界から科学者の募集に応じ、この世界へと渡られたヘミングウェイ博士は、AIの開発とロボティクス研究に尽力され、当社の礎を築かれた研究者の一人です。当社が開発したクロノスマートウェアは、人々の健康寿命を飛躍的に延ばし、異世界人との交流によって生じた健康被害を改善する、画期的な医療機器です――』


その「人間らしさ」が、むしろ不気味に感じられた。

私は画面の中の女性の瞳に吸い込まれるように見入っていた。


そこに映っていたのは、数日前――バスで隣に座っていた“あの女性”の面影。

年齢も姿も違うはずなのに、確かに同じ人物だった。


(彼女は、こちらに来て十年と言っていた……。

 その頃の姿をかたどったロボットなのかな……)


『――そして、創業から六十年の時を超え、新たな異世界からの研究者、李瑶リー・ヤオ博士の手によって、クロノスマートウェアは完成の域へと到達しました』


「……リー・ヤオは、僕の母の名前だ」


ケンが低くつぶやいた。

私は息をのんで、彼の方を見た。


私がバスで会ったエマ・ヘミングウェイは、あまりにも人間そのものだった。

その“完璧さ”が、逆に私を不安にさせた。


気がつけば、私はケンの腕を両手で強く握りしめていた。

自分でも抑えきれないほど、胸の奥からこみ上げてきた問いが、口をつく。


「……あなたは、人間……よね?」


声が震えていた。

問いかけた瞬間、部屋の空気がさらに張りつめた気がした。


「うん、僕は人間だよ。安心して」

ケンはやさしく微笑む。その笑顔が、かえって不安を煽った。

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