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ホワイトな異世界  作者: tomsugar


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22/77

22.運転席の女

工場の入館許可者リストを開いた。

私の権限でもVisitorの入館履歴だけは確認できる。


画面に浮かび上がった名前を見た瞬間、背筋が冷えた。


――エマ・ヘミングウェイ #1385975


「……エマ」


声に出すと、唇の内側がかすかに震えた。

数時間前、トラックの運転席に座っていたあの女性。

バスで二度出会ったあの女性。

彼女の名前が、確かに記録されていた。


「さやか」


背後から名を呼ばれ、全身がびくりと跳ねた。

振り返ると、そこに立っていたのはこの会社のCEOであり、恋人でもあるケンだった。


「……どうして」

思わず声が漏れる。


彼の視線は冷たく、だが内側に別の感情を押し隠しているようでもあった。どうやら、私のイレギュラーな行動がシステムに通報され、彼が直接ここに来たらしい。


私は小刻みに震える指で、モニターに映し出された情報を指し示す。


――エマ・ヘミングウェイ #1385975


「ケン……この人……」


彼の目を見上げながら、息を詰めて事の経緯を語った。

トラックの運転席で見た人物。脳裏に焼きついた、キャップとサングラスの女性の姿。

そして、工場で続く出荷数の異常。


さらにもう一つ。

――彼女自身の口から聞いた、「荷物の差し替えの仕事をしている」という言葉。


ひとつひとつ言葉を紡ぐたびに、胸の奥に冷たい不安が積み重なっていく。

まるで、足元から静かに沈んでいくような感覚だった。


ケンは黙ったまま、モニターに映る名前を見つめている。

その沈黙が、何よりも恐ろしかった。

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