21.2回目のイレギュラー
翌日、私は、いつも通りの時間に工場へ向かっていた。
マンションから歩いて数分。無機質な建物が立ち並ぶ一角に、勤務先の工場はある。
その朝も、搬入のトラックが停まっていた。
荷下ろしも荷揚げもロボットが行うため、人が立ち会うことはほとんどない。だからこそ、運転席に座る影を目にしたとき、思わず足が止まった。
(ドライバー?!)
キャップにサングラス。だが、キャップの隙間からのぞく栗色の髪――見覚えのある人物だった。
体格も女性。間違いない。
(あの人だ……!)
オペレーションを終えたトラックは、音もなく走り去っていった。
同時に、頭の奥で警報が鳴り響く。
――私の仕事は、人の荷物を“別のもの”に差し替えることです。
彼女の言葉が、鮮やかによみがえる。
私は急いで更衣室に駆け込み、工場用のつなぎに着替えた。ラインに乗せられた搬入パーツを一つひとつ確認する。……見慣れた部品が、滞りなく流れていく。最後まで見届けても、異常は見つからなかった。
――このまま何事もなく済めばいいけど。
祈るような気持ちで、私は通常業務へ戻った。
だが一日の終わり、搬出数を確認した瞬間、心臓が跳ねた。
予定数を上回っている――105個。
(上振れしている……!)
この一か月の間、出荷数は常に下振れしていた。
上振れが確認されたのは、これで二度目のイレギュラーだった。
胸騒ぎに突き動かされ、直近の入出庫映像を洗い直す。
私が工場に勤め始めて三日目の記録。そこに――彼女がいた。運転席に座り、無表情のまま前を見据えている。
その日もまた、出荷数は上振れしていたのだ。




