表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/27

12.新しい洋服

その日から、しばらくケンと会うことはなかった。

新しい工場の建設で街を離れる、と彼は言っていた。

けれど、毎日欠かさずメッセージが届く。


他愛のないやりとりを交わすたびに胸が温かくなり、次のデートにはどんな服を着ようかと考えるだけで日常が輝いて見える。


フォーマルにもカジュアルにも対応できるように――そう思って街のアパレル店をめぐり、数着の服に加え、ジュエリーや靴まで新調してしまった。

ショーウィンドウに映る自分の姿は、ほんの少し大人びて見える。

(こんなに買い物したの、初めてかもしれない……)


ふとスマホを開き残高を確認する。

それでも心配はいらなかった。毎月の給料は支出を上回り、残高は常に余裕を残していたからだ。


買い物袋を抱えて帰りのバスに乗り込む。

その日はいつもより混んでいて、空いていた席に腰を下ろすと、隣に若い女性が座った。栗色の髪にグリーンの瞳が印象的な人だった。


「こんにちは」

気がつけば、思わず声をかけていた。


女性も笑顔でこたえた。

「こんにちは」


こちらに来てから、ケン以外の人間と、初めて日常会話を交わした瞬間だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ