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10.想い人

ケンが心室細動で倒れ、緊急搬送された。


――

命に別状はなく、容体は安定しています。

今夜の予定はキャンセルとさせていただきます。

後日、本人から改めてご連絡いたします。

――


スマホに届いたその文面を、私は何度も何度も読み返した。淡々とした報告文が、逆に胸をざわつかせる。


気がつけば、私はケンに惹かれはじめていた。

大学時代に付き合っていた彼氏と別れてから、もう何年も恋をしていなかった。人に期待しても裏切られるだけ――そう思って、一人で生きる方が楽だと自分に言い聞かせてきた。


けれど、ケンと交わす会話や、何気ないメッセージのやりとりが、思いがけず私の心を軽くしてくれていた。そんな日々が始まったばかりだったのに。


付き合っているわけでもない。ただの片想いにすぎない。

それ以上どう返せばいいのか分からず、私は無機質な通知を見つめたまま、部下と名乗った人物に短い返事を打ち込んだ。


リビングのソファに身を沈め、ぼんやりと天井を見上げる。時計の針の音さえやけに大きく響く気が抜けたように座り込んでいると、再びスマホが震えた。


――今日の予定をキャンセルして、申し訳ないです。

大事には至っていません。明日の終業後、迎えに行きますね。


差出人の名前を見て、胸の奥がふっと熱くなる。今度は、ケン本人からのメッセージだった。


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