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ダイアモンドクラス  作者: 優里
プラチナ昇格

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知らなかった危機







翌日、学園に登校すると、

優里をプラチナの生徒たちが囲んだ。


彼らの顔には、嘲笑と、優越感が浮かんでいた。


遥香と過ごした幸せな時間の余韻から

またも一気に引き戻される。


思わず何事かと身構えた。


「おい、お前のグループって、赤字続きなんだろ?」



プラチナの生徒の一人が、蔑むような口調で言い放った。


その言葉に、周りの生徒たちも、

クスクスと笑い声を上げる。


一瞬にして「貧乏人」という

レッテルを貼られてしまった。


そんな彼らの言葉に、動揺を隠せないでいた。


しかし、すぐに冷静を取り戻し、毅然とした態度で告げた。


「それは、宝来悠斗さんに言えばいいのでは? 私は、宝来グループの跡取りではありません」


プラチナの生徒たちは、一瞬ひるんだ。


しかし、彼らの嘲笑は、さらに強くなる。


「ははっ、自分から『貧乏人』って認めているようなものじゃん!」


そんな生徒たちの言葉に、

何も言い返すことができなかった。


悪意に満ちた言葉に、深く傷ついた。


その光景を、近くで見ていた宝来悠斗も、

焦りを隠せない様子だった。


彼は、自分のグループが急な赤字続きであることを、

他の生徒たちに知られることを恐れていた。


悠斗は、

この場を何とかしてほしいという、

無言の圧力をかけるように優里をみる。


優里は、悠斗の無責任な態度に、

深い失望を感じていた。


遥香と過ごした時間が、まるで夢だったかのように、

現実の厳しさが、優里の心を、再び支配していく。



悠斗は、周囲のプラチナ生徒たちの嘲笑から

優里を強引に引き離し、

人気のない場所へと連れて行った。



その表情は怒りと恐れで歪んでいた。


「お前のせいで、グループが赤字続きなのがバレた!」


悠斗は、優里を睨みつけ、低い声で怒鳴った。


その言葉には、自身の失態を優里に押し付けようとする、

卑怯な意図が見え隠れしていた。



「そもそも、赤字だったのですか? それを隠していたのでしょう? なぜ私のせいにしようとするのですか?」


優里の鋭い指摘に、悠斗は一瞬言葉を詰まらせた。


内心では薄々気づいていた赤字の事実を、

優里に直接指摘されたことで、動揺を隠せない。


「そんなこと、お前には関係ない!」


悠斗は、自己中心的な感情をむき出しにして言い放った。


優里に責任を押し付けようとする焦りから、

理性を失っているようだった。


「関係ない? 関係ないというのなら、私に責任を押し付けてくるのは筋違いでしょう!」


優里は、悠斗の身勝手な主張を容易く論破した。


優里にとって、宝来グループの問題など、

もはやどうでもよかった。


ただ、不当な非難から自分を守りたかった。


悠斗は、赤みを帯びた目で優里を睨みつけ、必死な声で訴えた。


「赤字であることがバレたら、遥香様との婚約が打ち切られてしまうんだ! そんなことになったら…!」


悠斗にとって、遥香との婚約は、

宝来グループの差し迫った破滅を食い止めるための、

唯一の希望だった。




「乗っ取られるよりかは、マシでしょう」


優里にとって、不正に得た地位にしがみつくよりも、

潔く身を引く方が、まだましな選択肢だった。


彼女の言葉は、悠斗の希望を完全に打ち砕いた。




一方、ダイアモンドラウンジでも、

ブロンズフロアで起きた騒動の余波が広がっていた。


向井渉は、タブレット端末に表示された情報を

食い入るように見つめながら、

深刻な表情で告げた。


「…確かに、宝来グループは、ここ最近経営が悪化しているようだ。赤字が続いているという情報も、事実らしい」


渉の言葉に、ラウンジの空気は一気に凍りついた。


遥香と朔也、悠の顔に、わずかな動揺が広がる。


朔也は、渉の言葉を冷静に受け止めると、

重々しい口調で語り始めた。


「だからといって、遥香が婚約を解消すれば、真っ先にメスが入るのは、宝来グループのメイン事業である高級焼肉店だ。そうなれば、優里の父親は解雇され、優里はあのマンションから追い出されてしまう。一気に貧乏人に転落してしまうだろう」


朔也の言葉は、ただの事実を述べているだけではなかった。


それは、遥香の決断が、優里の人生に、

いかに大きな影響を与えるかという、

残酷な現実を突きつけていた。


遥香の表情は、いつもと変わらない冷たさだったが、

その瞳の奥には、優里の未来を案じる、

深い不安が揺らいでいた。



沈黙が流れるダイアモンドラウンジ。


悠は、事態を打開する

単純な解決策を思いついたように、

明るい声で言った。


「それなら、宝来グループの跡取りを、本来の跡取りである優里に戻せば良いんじゃないか?」


悠の言葉に、その場にいた全員の視線が集まる。


悠は、特に深く考えている様子もなく、

至極当然のことを言うように続けた。


「元々、宝来グループの跡取りは優里だったんだろ? それを元に戻すだけだ。そうすれば、宝来グループの経営も立て直るかもしれないし、遥香の宝来悠斗との婚約も解消できるかもしれないじゃないか」


悠の提案は、一見すると理にかなっているように聞こえた。


しかし、それは、大人たちの複雑な思惑や、

権力闘争といった、根深い問題には触れていない、

あまりにも単純な発想だった。


朔也は、眉をひそめ、渉は苦笑いを浮かべた。




優里がダイアモンドラウンジに向かって歩いていると、

先ほど怒りに燃えていた宝来悠斗が

戻ってきたようだった。


悠斗は、優里の人生を支配しようと、

卑劣な企みを口にした。


「お前、うちのグループに投資してくれる家の人と婚約しろ」


悠斗は、優里の意志など微塵も気にせず、

傲慢な口調で命じた。


彼にとって、優里は、自分の立場を守るための、

ただの道具でしかなかった。


しかし、優里は、悠斗の言葉に怯むことなく、

毅然とした態度で反論した。


「それは、無理です。私には、朔也様という、パートナーがいますから」


優里の言葉に、悠斗の顔は、一気に青ざめた。


朔也の存在を完全に忘れていたのだ。


朔也は、ダイアモンドの生徒であり、

この学園でも大きな権力を持っている。


朔也を敵に回せば、悠斗の立場は、

さらに悪化するだろう。


悠斗は、焦りを隠せないでいた。


優里を道具として利用しようとした彼の企みは、

朔也という、想像もしていなかった壁にぶつかり、

脆くも崩れ去った。




優里は、もはや悠斗の言いなりになる存在ではなかった。


遥香と朔也という、優里を守ってくれる存在が、

彼女の心を強くさせていた。



優里は、宝来悠斗をその場に置いていき、

ダイアモンドラウンジを訪れた。


ラウンジのソファーには、

優里を一番最初にパートナーにして、

この特別な空間へと導いてくれた、悠がいた。


悠は、優里にとって、

この学園で初めて心を開くことができた、

かけがえのない恩人だった。



優里がソファーに腰を下ろすと、

悠はそっと優里に寄り添った。


その優しい仕草は、優里の心を温かく包み込む。


優里は、宝来悠斗に言われた言葉を、

悠にだけ打ち明けることにした。




「…宝来悠斗さんから、投資家と結婚するように言われてしまいました」



悠は、優里の言葉に、一瞬、表情を曇らせた。


そして、優里の心を慮るように、優しく問いかけた。


「…宝来グループって、そんなにお金に困っているの?」


悠は、この学園のルールや、生徒たちの事情には疎かったが、

優里の言葉から、宝来グループが

深刻な状況に陥っていることを察した。


優里は、悠の問いかけに、首を横に振った。


「…知りませんでした」




悠は、優里の言葉に、少しだけ後悔の念を滲ませた。


悠は、優里が、宝来一族から苛まれて

孤独だったことを知っていた。


そんな優里に、宝来グループの経営状況を問うことは、

あまりにも無神経なことだったと、

悠は悔やんでいた。


悠は、優里の肩を優しく抱き寄せた。


その優しさは、優里の心を、

再び温かく包み込んでくれた。



「…僕と、結婚する?」


優里は、悠の予期せぬ言葉に、

全身が固まったように動けなくなった。


悠の優しい笑顔が、今の優里には、

どこか遠い世界のもののように感じられた。



悠の家も、この学園に名を連ねるほどの資産家である。


遥香には及ばないかもしれないが、

その経済力は確かなものだった。


もし優里が悠と結婚すれば、

宝来グループからの圧力や、

貧困の不安から解放されるかもしれない。



悠は、優里が言葉を失っているのを見て、

少し不安そうな表情を浮かべた。




悠は、優里が言葉を失っているのを見て、優しく微笑んだ。


そして、優里の頭を撫でながら、そっと告げる。


「…冗談だよ」


悠の声は、優里の心を温かく包み込み、

優里が抱えていた、すべての不安を優しく溶かしていった。


「…優里がお願いしたいのは、遥香でしょ?」


悠の言葉に、優里はハッとした。


自分の遥香への感情は、一体何なのだろうか。


優里は、遥香が自分を助けてくれたことに、

感謝し、憧れを抱いていた。


「…遥香様への感情は、憧れです。尊敬していますし、感謝もしています。」


優里は、自分の感情に正直に、

しかし、どこか自信のない声で答えた。


悠は、優里の言葉に、微笑んだまま、静かに問いかけた。


「本当に、憧れなのかな? 自分がどういう気持ちなのか、気づいていないだけじゃない?」


悠の言葉は、優里の心の奥底に、静かに響いた。




「遥香様の幸せは願っています。だから、邪魔はしたくない。でも…宝来悠斗との結婚は、遥香様が不幸になるのが目に見えています。それが、どうしようもなく嫌なんです」


優里は、遥香を助けたいという目標があるからこそ、

優里の遥香への依存と独占欲はさらに強まっていたのだ。



優里の嫉妬は、遥香の隣を望むことへの代償であり、

優里の心を蝕む新たな苦痛となったのだった。



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