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ダイアモンドクラス  作者: 優里
朔也のパートナー

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無力なナンバーワン





優里が学園を去ってから、数日が経った。


学園は、何事もなかったかのように、

いつもどおりの日々を送っていた。


遥香たちは、相変わらず憧れの対象として、

まばゆいばかりの輝きを放っていた。


そして、ブロンズの生徒たちも、

変わらずに上位ランクの生徒たちから

ぞんざいに扱われ、つらい日々を送っていた。


ダイアモンド以外のメンバーと

深く関わることのなかった

ダイアモンドメンバーたちにとっても、

優里が去ったことは、

表面上は、何も変わらない日常のはずだった。




しかし、彼らの心のなかには、

深い後悔と、優里への想いが渦巻いていた。



優里を救うことができなかったという無力感と、

優里が背負っていった悲しい決意が、

彼らの心を締め付けていた。






一方の優里は、学園を去った後、

父親が経営する銀座の高級焼肉店を手伝っていた。




煌びやかな学園生活とはかけ離れた、現実的で厳しい日々。


優里は、焼肉店の仕事に没頭することで、

遥香との思い出や、ダイアモンドメンバーたちとの日々を、

忘れようとした。


しかし、優里の心は、決して満たされることはなかった。


父親は、優里が勝手に学園を中退したことを知り、

優里をさらに冷酷に扱いをした。


「お前は、ダイアモンドと親しくしていること以外に、なんの価値もない」


父親の言葉は、優里の心を深く傷つけた。



優里は、父親にとって、自分が愛されるべき存在ではなく、

ただの道具でしかなかったのだと、改めて痛感していた。


優里は、遥香を恋しく思う気持ちと、

自分が遥香を苦しめる存在であるという罪悪感の間で、

苦しんでいた。


遥香と離れることで、

遥香を守ることができると信じていた。



優里が、父親の冷たい言葉に耐えながら、

無表情で仕事をこなしていると、

一人の店員が優里に優しく声をかけた。


「優里お嬢様、もう学校には行かれないのですか?」


店員は、優里の身の上を知らずとも、

優里の心に深い傷があることを察していた。


優里は、店員の言葉に、一瞬、戸惑った。


遥香を恋しく思う気持ちと、

遥香への罪悪感の間で、苦しんでいたからだ。


学校と聞くだけで思い出す。


あそこにいけば、遥香に会える。


遠くからでも立っているだけであふれる存在感。


…でも、もう会えない。


「私には、もう行く場所なんて、ありません」


優里は、そう言って、静かに微笑んだ。


しかし、その笑顔は、どこか悲しげで、

店員は、優里の心が、

まだ学園に囚われていることを、感じ取った。


「優里お嬢様が、いつかグループの跡継ぎになられたら、奥様はきっとお喜びになられていたでしょうね」


店員は、優里の母親が生前、

優里の成長を誰よりも願っていたことを知っていた。


「お母様は、優里お嬢様が、誰にも負けない、立派な女性になってくれることを、心から願っておられましたから」


優里は、父から「母親の命を奪った存在」として

責められてきた優里にとって、

「母親が喜んでいる」という言葉は、信じがたいものだった。


(お母さんが生きてたら……本当に、私を喜んでくれていたのかな……?)



優里が、母親の想いに心を揺らし、

希望を抱き始めた矢先、店に一人の男性が現れた。



その男性は、宝来グループの社長であり、優里の母親の弟、

つまり、宝来悠斗の父親であり、

優里にとって叔父にあたる人物。


「事業の視察に来た」


その目には、優里に対する冷たい視線があった。


「お前、学園を辞めたそうだな。ダイアモンドのパートナーという、唯一の価値を失ったお前が、これからどうやって生きていくつもりだ?」


「お前が学園に入れたのは、いとこである悠斗のお情けだ。そのことを忘れるな」


優里が学園に入学できたのは、

宝来グループという後ろ盾があったからであり、

優里自身の力ではないと、残酷な現実を突きつけた。


「勘違いするな。お前に、会社を継ぎたいなどと思う資格はない」


優里は、父の言葉と叔父の言葉が、

自分にとっての現実であり、遥香たちの優しさや、

遥香の愛は、ただの幻だったのだと、思い込み始めた。


「私は……こんな扱いを受けるのが、当たり前なんだ」


優里は、そう言って、静かに微笑んだ。


その笑顔は、どこか諦めにも似た、虚ろなもの。


自分が愛される価値のない存在であり、

ダイアモンドメンバーたちの世界は、

自分とは全く違う、手の届かない場所なのだと、

改めて痛感していた。



そんななか、遥香は、向井渉から得た情報をもとに、

優里が働く銀座の高級焼肉店へと足を運んだ。


遥香は、再会できる喜びと、

優里を救い出したいという強い決意を胸に、

店の中へと入っていく。


店内は、客で賑わっていた。


店内を見渡すと、

優里が給仕をしている姿を見つけた。


学園にいた頃とは違う、どこか覇気のない、

無表情な優里の姿に、遥香は胸が締め付けられる。


「優里……」


遥香が優しく声をかけると、優里は驚いた表情で遥香を見つめた。

しかし、優里はすぐに心を閉ざし、冷たい視線を遥香に向けた。


「……どうして、ここに?」


優里は、遥香の優しさを「幻」と信じ込んでいた。


自分のような「価値のない人間」に

関わるべきではない、と。


「優里、もう一人で苦しまないで。一緒に帰ろう」


遥香は、優里の手を握ろうとした。


しかし、優里は、その手を振り払い、

冷たい言葉で遥香を突き放した。


「遥香様の優しさは、私には眩しすぎる幻です。私に関わらないでください。私から離れることが、遥香様の幸せなんです」



遥香は、優里の冷たい言葉に深く傷つき、

ショックで立ち尽くしていた。


しかし、優里が自分を遠ざけることで、

自分を守ろうとしているのだと理解していた。


遥香は、何も言い返すことができず、

ただ、悲しみに暮れて、店を出ようとした。


遥香が店のドアに手をかけたとき、

一人の店員が遥香に声をかけた。


「お客様、よろしければ、奥様のお話を聞いていかれませんか?」


店員は、遥香が優里の身を案じていることを察し、

遥香に優里の母親(奥様)の話をしようとしていた。



遥香は、店員の言葉に足を止めた。


優里の母親の話を聞くことで、

優里の深い悲しみと絶望の原因を

知ることができるかもしれない、そう考えたから。


遥香は、店員に促され、店の隅にある小さなテーブルに座る。


「奥様は、優里お嬢様を心から愛しておられました」


店員は、遥香に、優里の母親が、

優里の誕生を誰よりも望んでいたこと、

そして、優里の成長を誰よりも願っていたことを語る。


しかし、優里の父親は、

優里の母親が亡くなったのは優里のせいだと信じ込み、

優里に冷たく当たっていた。


「奥様は、優里お嬢様が、誰にも負けない、立派な女性になってくれることを、心から願っておられました。お嬢様は、お母様の愛の結晶なのです」


遥香は、優里の母親が優里を深く愛していたという話に

心を打たれていたが、

店員の口から語られた次の言葉に、耳を疑った。


「奥様は、元々体が弱かったんです。妊娠中、飲まなければならない薬が、お腹のお子様の命を奪う可能性がありました」


「奥様は、ご自身の命よりも、お腹のお子様、つまり優里お嬢様の命を優先されました。薬を飲まず、優里お嬢様を産むことを選んだのです。そして…その結果、奥様は助からなかったのです」


遥香は、この時優里の母親が、

優里を救うために命を犠牲にしたという、

あまりにも悲劇的な真実を知ることになった。


「ご主人様や、ご親族の方々は、優里お嬢様の存在が、奥様の命を奪ったと、そう思っておられるのです」


店員は、優里が家族から恨まれるようになった経緯を語った。


そして、優里が本来、

宝来グループの跡継ぎになるべき存在であったこと、

しかし、この悲劇のせいで、

その立場から外されてしまったことを、遥香に伝えた。


遥香は、優里が背負ってきたあまりにも重い運命に、

言葉を失う。


優里の自己否定や、自己犠牲的な行動のすべてが、

この悲劇から来ていたのだと、遥香は理解した。


「優里お嬢様は……生まれてから、幸せだと思った瞬間はなかったんじゃないかと、私はそう思っています」


「ご主人様やご親族の方々は、優里お嬢様を、奥様の命を奪った存在として、冷たく扱っておられました。優里お嬢様は、幼い頃から、一人で、その冷たい視線に耐えて生きてこられました。優里お嬢様が心から笑うことも、あまりありませんでした」


遥香が、優里の過去について、

胸を痛めていたその時、もう一人の店員が部屋に入ってきた。


その店員は、遥香の顔を見て、

驚きと恐怖に顔を青ざめさせ、腰を抜かした。


「あ……あの……失礼いたしました……!この方は…………」


遥香に優里の過去を語っていた店員は、

相手が誰であるかを知らず、

ただ優里を心配する一人の客だと思っていた。


しかし、もう一人の店員は、

遥香の顔を、メディアで見たことがあった。


「この方は…もしや……」


店員の言葉に、

遥香に優里の過去を語っていた店員は、

言葉を失った。


遥香の正体を知った店員は、

驚きと恐怖に顔を青ざめさせ、

腰を抜かしていた。



宝来グループも大企業だが、山下財閥とは比べ物にならない。


遥香の正体を知った店員は、

遥香がなぜ、優里という、

父親や叔父から冷遇されている少女と親しいのか、

理解できなかった。


遥香は、店員の混乱を静かに見つめていた。



遥香は、震える店員に、きっぱりと告げる。


「私は、会社の思惑や、宝来グループの事業には、一切興味はありません」


「私が興味があるのは、ただ一つ。優里だけです」


遥香は、優里の深い孤独と悲しみの原因を知り、

優里を救い出すことだけを考えていた。


会社やグループの動向など

遥香にとってはどうでもよかった。






その頃、ダイアモンドラウンジには、

優里を失った後悔と、

遥香が一人で優里を救いに行っていることへの無力感に苛まれる、

ダイアモンドメンバーたちがいた。




篠原悠は、

優里を遊び半分でパートナーに選んだ自分の軽率な行動が、

優里を深い絶望に追い込んだのだと、深く後悔していた。


彼は、自分の責任を痛感し、

ただ座っていることしかできない自分に、

怒りを覚えていた。


「僕が……僕が優里を追い詰めてしまったんだ……」


日向朔也もまた、

優里が退学届にサインするのを

止めることができなかった自分を責めていた。


「遥香だけじゃなく、俺たちも、何かしないと……」


彼らは、優里を救うために何ができるのか、

美月と悠斗の悪意に満ちた陰謀を、

どうやって打ち破るのか、話し合っていた。




優里が退学届にサインしたことで、

もはや彼らが隠れて行動する必要はなかった。


彼らは、優里と遥香を守るため、

そして、自分たちの過ちを償うために、

美月と悠斗に直接立ち向かうことを決意した。




翌日、悠と真佑は、美月と悠斗の元へと向かう。


「優里の昇格を妨害したこと、遥香を陥れようとしたこと、すべて知っている」


悠と真佑の言葉に、美月と悠斗は驚きを隠せなかった。


「優里を傷つけたら、僕が容赦しない」


ダイアモンドメンバーたちは、

優里を救うために、それぞれの立場で行動し始めた。


優里が去ったことで、彼らの心が一つになり、

優里のいる世界と彼らのいる世界を再び交わらせようと、

必死に手を伸ばし始めたのだ。


優里が、母親の想いに心を揺らし、

遥香を信じようとしていたその頃、

宝来悠斗が、優里の働く焼肉店に現れた。


悠斗の顔は、怒りと屈辱に満ちていた。


彼は、ダイアモンドメンバーたちが

優里を救うために自分たちに逆らったことで、

プライドを深く傷つけられていた。


「優里、お前のせいで、僕たちの世界がめちゃくちゃになった!」


「遥香も、朔也も、優里のために、僕たちに逆らったんだ。お前のせいで、ダイアモンドメンバーたちの間に亀裂が入ったんだぞ!」




優里は、自分が遥香たちから離れることで、

遥香たちの平穏が保たれると信じ込んでいた。


しかし、悠斗の言葉は、

その信念をさらに強固なものにし、

優里を深い絶望へと突き落とした。



悠斗が、優里に詰め寄っていると、

店の店員が慌てて二人の間に割って入った。


「お客様、どうか、おやめください!」


「宝来悠斗さん」


優里は、そう言って、悠斗をまっすぐに見つめた。


「あなたは……所詮、プラチナの生徒じゃないですか」


「遥香様たちダイアモンドメンバーの優しさや、その強さを、あなたのような格下には理解できない。あなたに何がわかるんですか?」



優里の挑発的な言葉は、悠斗のプライドを深く傷つけた。


「優里、お前のせいで、僕たちの計画はすべて台無しになった。だが、お前が僕たちに逆らったことを、後悔させてやる」


「自分の勝手な都合で、遥香様たちを巻き込むのはやめてください!」


優里は、悠斗に詰め寄るように言った。


しかし、悠斗は、優里の言葉を冷ややかに受け止めた。


「優里、勘違いするな」


悠斗は、優里に、冷酷な真実を突きつけた。


「僕たちは、所詮、親の言いなりで動く、事業の道具でしかない。それは、どこの令嬢でも、御曹司でも、同じだ」




一方のダイアモンドのメンバーたち。


「優里を救うためには、宝来グループの事業の闇を暴く必要がある」


朔也の言葉が合図かのように、

悠と真佑は、美月と悠斗が仕掛けた偽の証拠を覆すため、

証拠集めに奔走していた。


二人は、優里の昇格審査書類が不正に凍結された証拠や、

遥香が優里に不正な援助をしたという偽の証拠を覆すための、

確固たる証拠を探していた。


「遥香一人に、すべての責任を背負わせるわけにはいかない。優里を傷つけたのは、私たちみんなだ」


ダイアモンドメンバーたちは、優里と遥香を救うため、

それぞれの能力と情報を持ち寄り、一つの目標に向かっていた。








優里が、悠斗から冷酷な真実を突きつけられ、

重い足取りでマンションに帰ると、外で遥香が待っていた。


遥香は、優里の姿を見つけると、

安堵の表情を浮かべ、優里の元へと駆け寄る。


「優里、よかった……」


遥香は、優里を抱きしめようとしたが、

優里は、遥香の腕を振り払い、冷たい言葉を投げかけた。


「どうして、ここにいるんですか? 私に関わらないでください」


優里の瞳には、遥香を疑う、冷たい視線があった。


遥香は、優里の言葉に傷つきながらも、

優里の心に寄り添うように告げる。


「私は宝来悠斗とは違うよ」


「遥香様の気持ちは、ダイアモンドのメンバーに抱く気持ちと何ら変わらない感情です」


「私に関わるのは、きっと一時の気の迷いです。どうか、自分の世界に帰ってください」


優里は、遥香の愛を拒絶することで、遥香を守ろうとした。


自分の存在が、遥香を傷つける原因になると

信じ込んでいる優里にとって、

遥香を遠ざけることだけが、遥香を守る唯一の方法だった。






優里が、遥香を拒絶していた頃、

宝来悠斗は、父親に呼び出されていた。


「悠斗、お前の婚約が決まった」


父親の言葉に、悠斗は驚きを隠せなかった。


悠斗は、自分が優里に突きつけた

「親の言いなりで動く道具」という言葉が、

そのまま自分に返ってきた。


「僕も、所詮、事業の道具でしかないのか……」


悠斗は、自分の未来が、自分の意思とは関係なく、

勝手に決められてしまったことに、打ちのめされていた。


「お前の婚約相手は、山下遥香さんだ」


悠斗は、信じられないという表情で、父親を見つめた。


悠斗の心は、優里への嫉妬という、複雑な感情で満たされていた。






優里に拒絶され、

悲しみと無力感に打ちひしがれていた遥香は、

重い足取りで自宅へと帰る。


しかし、家には、深刻な表情を浮かべた父親が待っていた。


「遥香、お前の婚約が決まった」




遥香は、優里のことで頭がいっぱいで、

自分の未来のことなど、考える余裕はなかった。


「お前の婚約相手は、宝来グループの御曹司、宝来悠斗さんだ」


遥香は、信じられないという表情で、父親を見つめた。


優里を陥れようとした相手、

優里に冷酷な言葉を浴びせた相手、

その相手と、婚約しなければならない。




遥香と悠斗の婚約の知らせは、

瞬く間にダイアモンドメンバーの間にも広まった。



ダイアモンドのメンバーたちは、

信じられないという表情で、遥香を見つめていた。


彼らは、優里を陥れようとした悠斗と、

優里を救おうとする遥香が婚約するということの意味を、

理解できなかった。


「遥香、本当なのか?」


朔也は、遥香に問いかけた。


遥香は、優里に拒絶された悲しみと、

悠斗との婚約という残酷な現実に、心が乱れていた。


「私にも、よくわからない…」


遥香は、困惑した表情を浮かべていた。


「どうして、悠斗と…?」


真佑は、遥香の胸の内を代弁するかのように、そう尋ねた。


遥香は、優里を救うために、

悠斗に立ち向かうことを決意していたが、

まさか、悠斗と婚約することになるなど、

想像もしていなかった。







優里が、遥香への想いと絶望の間で揺れていた頃、

彼女の携帯に一本の電話がかかってきた。


電話の相手は、篠原悠。


「優里、学園のSNSをみろ」


悠は、それだけを告げると、電話を切った。


優里は、突然の電話に戸惑いながらも、

悠の言葉に導かれ、学園のSNSを開いた。


そこに掲載されていたのは、

悠斗と遥香の婚約を告げる、衝撃的な記事。


優里は、信じられないという表情で、

記事を見つめた。



「やっぱりうそなんじゃん…。」


優里は、遥香の関係も、言葉も、

すべて自分の妄想だったのだと、

深く信じ込んでしまう。


優里は、携帯を握りしめ、遥香に電話をかけた。


「遥香様、おめでとうございます。悠斗とご婚約されたそうですね」


優里の声は、どこか遠く、感情のない声。


「優里…違うの…これは…」


遥香は、優里に、婚約の真相を伝えようとした。

しかし、優里は、遥香の言葉を遮るように、

冷たい言葉を続けた。


「もう、私に関わらないでください。遥香様が幸せになることを、心から願っています」


優里は、そう言って、電話を切った。


優里は、遥香への感情を、

心のなかに封じ込め、

二度と遥香に会わないと、最後の決別をした。





優里からの最後の言葉を聞いた遥香は、

ダイアモンドラウンジでうなだれていた。


「どうして……どうして、私は何もできないんだろう……」


遥香は、ダイアモンドであり、

学園のナンバーワンであるにもかかわらず、

優里の心を救い出すことができない無力さに、

打ちひしがれていた。




ダイアモンドのメンバーたちは、

遥香の様子を見て、遥香を心配していた。


彼らは、遥香が優里を救い出すために、

必死に戦っていることを知っていた。


しかし、彼らもまた、

遥香に何もしてあげることができなかった。


遥香は、自分の力では、

優里の心を救い出すことができないと、

深い絶望に打ちのめされていた。





優里が、遥香からの最後の電話を受け、

深い絶望の淵に沈んでいた頃、

彼女のマンションに、一人の訪問者がいた。


インターホンに映し出されたのは、日向朔也の姿。


「優里、俺だ。会って話がしたい」


朔也の声に、優里は驚きを隠せない。


優里が、朔也と最後に会ったのは、

自分が退学届にサインをし、学園を去ったあの日。


優里は、朔也とのパートナーバッジを外し、

彼らの関係を自ら断ち切っていた。


優里は、朔也に会うことを躊躇した。

しかし、朔也の真剣な声に、

優里は心を動かされ、朔也を部屋へと招き入れた。


「どうして、ここに……?」


優里の問いかけに、

朔也は、優里の目をまっすぐに見つめた。


「優里、遥香の婚約のことは、誤解だ」


「本当に、すまなかった」


朔也は、優里が学園を去る原因となった、

自分たちの軽率な行動を謝罪した。


「俺たちの暇つぶしに、お前を巻き込んだのが、すべての始まりだったんだ」


「悠が、いじめられていたお前に目を付けたのが、最初だった。もしかしたら、ブロンズでいじめられる日常でも、優里にとっては、それが平穏だったのかもしれない。俺たちは、その平穏を、俺たちの勝手な都合で、壊してしまった」


「俺たちが優里にやったことは、身勝手な行動だったかもしれない。だが、優里を救うためだったんだ」


「これまで一度も、優里をバカにしたことはない。純粋に、優里を助けたかっただけだ」


朔也の言葉に、優里の心は、温かい光に包まれた。


優里は、朔也たちの言葉が、

本心からの言葉であることを、一番知っていた。


彼らの行動は、優里にとって、

初めて、自分を認めてくれる人たちが現れた瞬間だった。


「本当に、すまなかった。俺たちが、お前の平穏を壊してしまって、申し訳なかった」


「一つだけ、きかせてくれ」


「…遥香が悠斗と婚約することは、優里の望みか?」


「遥香を救うことができるのは、悠斗か?」


優里は、朔也に、自分はもう独りではない、と、再び希望を抱いた。


そして、遥香に会いたいという気持ちが、

優里の心のなかで、再び燃え上がっていた。



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