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ダイアモンドクラス  作者: 優里
朔也のパートナー

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裏切りの証







必死の捜索も虚しく、宝来優里は

ダイアモンドのパートナーバッジを見つけることができなかった。


失意のなか、迎えた翌日。


学園には、朝から尋常ではないざわめきが広がっていた。




その騒ぎの中心にいたのは、

昨日の創立記念式典で優里と対峙した、

プラチナランクの生徒・美月だった。


彼女は、なんと、優里が失くしたはずの

ダイアモンドのパートナーバッジを、

制服の襟元に堂々とつけて登校してきた。


それは、紛れもないダイアモンドの輝き。


優里が、日向朔也のパートナーであることを示す、あの特別なバッジ。


美月は、まるで自分の勲章であるかのように、

誇らしげに胸を張って歩いていた。


学園の生徒たちは、信じられない光景に目を疑った。


なぜ、プラチナランクの美月が、

ダイアモンドのパートナーバッジをつけているのか?


ありえない事態に、様々な憶測が飛び交う。




「一体、どういうことだ?」


「宝来のバッジじゃないか?」


「まさか、ダイアモンドの誰かのパートナーが変わったのか?」


「でも、そんな噂は聞いてないぞ……」





一方、ダイアモンドメンバーたちも、この異様な事態をすぐに把握した。



学園内の情報網は彼らのもとに瞬時に報告を上げ、

美月の襟元で輝くダイアモンドのバッジの画像は、

彼らの目に否応なく飛び込んできた。


日向朔也は、その画像を見た瞬間、鋭い眼光を放つ。


優里の嘘、そしてバッジの喪失の真相が、

最悪の形で明らかになった。


鷹城玲司は、冷静さを装いながらも、

事態の急変に内心で警戒感を募らせた。


篠原悠は、怒りを露わにし、


宮瀬真佑は、優里の身を案じながらも、

美月の信じられない行動に困惑の色を隠せない。


向井渉は、この状況をデータとして分析し、

背後に隠された意図を読み取ろうとしていた。



ダイアモンドメンバーがそれぞれ困惑しているなか、

最も衝撃を受けたのは、もちろん宝来優里本人だった。


探し続けても見つからなかった大切なバッジが、まさか美月の手にあるとは。


それは、美月が単にドレスを隠しただけでなく、

優里から大切な何かを奪い取ろうとしていたことを示唆していた。


優里は、裏切られたような、

そして自分の無力さを突きつけられたような、

深い悲しみと怒りに襲われる。




学園中に広がるざわめきと、

美月の襟元で輝くダイアモンドのパートナーバッジの報せは、

ダイアモンドメンバーたちに、かつてないほどの激震をもたらした。


彼らは、即座にダイアモンドラウンジに集結し、事態の把握に努めた。


「あのバッジは……間違いなく優里の物だ」


朔也の声は、底知れない怒りを帯びていた。


優里がバッジを失くしたことを知っていた朔也にとって、

美月がそれを身につけているという事実は、

優里の曖昧な説明の「嘘」が、最悪の形で証明されたことを意味していた。


そして、その背後にある、

優里がひた隠しにしようとした真実の存在を確信していた。


「ありえない……! なぜ、あのプラチナの生徒が、優里のバッジを……!」


悠は、怒りに震え、今にも美月の元へ駆けつけそうな勢い。


優里が朔也のパートナーであることは、

ダイアモンドメンバー全員の周知の事実。


彼らは優里を自分たちの仲間として受け入れ、

様々な策略を通して遥香との関係を深めようと尽力してきた。


その優里がバッジを失くし、

翌日には別の生徒がそれを誇らしげに身につけている。


これは、彼らにとって看過できない事態。


玲司は、冷静さを保とうとしながらも、その表情は険しく、

事態の深刻さを物語っていた。


「優里は、昨日、バッジを失くした経緯を明確に説明しなかった。そして、その翌日に、プラチナの生徒がそれを身につけている……」


優里がバッジを失くした理由を隠したことと、

それが今、他の生徒の手に渡っているという状況は、

優里への深い不信感へと繋がるものだった。


真佑は、優里のことが心配で、今にも泣き出しそうになっていた。


「優里ちゃんが……そんなことをするはずないよ……」


渉は、状況を冷静に分析しながらも、その顔には困惑の色が浮かんでいた。


「にゃん……優里の行動は、論理的に説明できない部分が多いにゃん。しかし、現状、優里がバッジを不正に手放した、あるいは何らかのトラブルに巻き込まれたとしか考えられないにゃん……」


ダイアモンドメンバーたちは、優里が、

まさか意図的にバッジを手放したとは考えていないが、

彼女が真実を隠し、

その結果としてバッジが他の生徒の手に渡ったという事実は、

彼らの優里への信頼を根底から揺るがすものだった。


彼らにとって、これは単なるバッジの紛失ではなく、

ダイアモンドの権威、

そして彼らが優里に与えた「信頼」への

「裏切り」にも等しい行為に映っていた。





美月の襟元で輝くダイアモンドのパートナーバッジの報せは、

ダイアモンドメンバーたちに深い衝撃と不信感をもたらした。


朔也は、ラウンジに集まったメンバーたちに視線を向け、

その声は冷徹な響きを帯びていた。


「優里を呼べ。すぐにだ」


朔也の指示に、悠が素早く動き、優里の教室へと向かった。


数分後、優里は不安そうな表情で、ダイアモンドラウンジの扉を開けた。


ラウンジのなかは、重苦しい沈黙に包まれており、

ダイアモンドメンバーたちの視線が、一斉に優里に突き刺さる。


優里は、彼らのただならぬ雰囲気に、心臓が大きく跳ね上がった。


自分が隠している真実が、

ついに露呈してしまったのではないかという恐怖が、優里の心を支配した。


朔也は、優里の前に立ち、その瞳をまっすぐに見つめた。


「優里。聞きたいことがある」


優也は、ゴクリと唾を飲み込んだ。


「今日、学園で、お前のダイアモンドのパートナーバッジをつけた生徒がいた。プラチナランクの美月という生徒だ」


朔也の言葉に、優里の顔から血の気が引いた。


やはり、バレてしまった。


「優里。お前は昨日、バッジを失くしたとだけ言った。だが、なぜそのバッジが、今、別の生徒の手に渡っている?」


朔也の問いかけは、核心を突いていた。


優里は、遥香の完璧さを守るために真実を隠し続けた結果、

最も信頼するべき仲間たちから、

このような形で問い詰められることになってしまった。


「優里。お前は、あの生徒に、そのバッジを譲ったのか?」



バッジを譲るなど、優里には考えられないことだった。


しかし、真実を語れない優里は、

その問いに対し、どう答えるべきか、激しく葛藤する。


優里にとって、ダイアモンドのパートナーバッジは、

朔也との絆、そして遥香への憧れを象徴する大切なもの。


それを他人に譲るなど、天地がひっくり返ってもありえないことだった。


しかし、優里は、真実を語ることができない。


美月との揉み合いの経緯を話せば、

遥香がドレスを失くし、肌着姿で絶望していたという、

完璧な女王の「不完全な姿」が、ダイアモンドメンバー全員に露呈してしまう。


遥香の威厳を傷つけることだけは、何としても避けたかった。


優里は、唇を強く噛みしめ、必死に言葉を探した。


しかし、嘘を重ねることも、遥香の秘密を明かすこともできず、

ただ言葉に詰まるばかりだった。


「私……は……」


優里の声は、途切れ途切れ。


何も言えない。


その沈黙は、ダイアモンドメンバーたちにとって、

優里が罪を認めているかのような、

あるいは彼らを欺いているかのような、最悪の解釈を招いた。


朔也の表情は、失望と、冷たい諦めに変わっていった。


優里が嘘をつき続けることに、彼は深い憤りを感じていた。


「……沈黙は肯定と見なすぞ、優里」


朔也の声は、かつてないほど冷たく、優里の心を凍てつかせた。


玲司は、優里の沈黙に、明確な裏切りを感じ取った。


「バッジを譲ったのか。そのようなこと、学園の規則では許されないと知っているはずだ。そして、それは我々ダイアモンドへの信頼を裏切る行為だ」


悠は、怒りに震え、優里に詰め寄ろうとした。


「おい、優里! なぜだ!? なんでそんなことをしたんだ!?」


真佑は、心配そうに声をかけようとしたが、

真実を語らない優里に対し、

どうすればいいのか分からず、ただ見守るしかなかった。


渉も不信感を募らせるような目で優里をみた。


「にゃん……沈黙は、コミュニケーションを阻害し、不信感を増幅させるにゃん……」



優里は、彼らの言葉と視線に、ただただ耐えるしかなかった。


遥香を守りたいという純粋な気持ちが、

かえって彼女を孤立させ、

ダイアモンドメンバーとの間に、

決して埋まらないかのような深い溝を生み出してしまった。


朔也は、確固たる真実の重みを込めて、優里に告げた。


「優里、よく聞け。ダイアモンドのパートナーバッジを身につけているものは、1人しかない」


優里は、顔を上げ、朔也を見つめた。

その言葉の意味を理解しようと、必死に頭を巡らす。


朔也は、さらに言葉を続けた。


「残りのバッジは、全てラウンジの金庫に厳重に保管されている。そして、悠が以前、お前とパートナーになった際に手渡した、お前が持っていた一つ以外は、メンバー分全て揃っていた」


朔也の言葉は、優里が失くしたバッジが、

本当に「一つしかない」ものであること、

そしてそのバッジが、今、美月の手にあるという事実の深刻さを、

優里自身にも、そして他のメンバーにも改めて突きつけた。


このバッジは、学園の権威が認めた、唯一無二のパートナーの証。


それが、現在、優里の手元になく、

別の生徒が身につけているということは、

ダイアモンドメンバーにとって、優里がその「唯一」のバッジを、

何らかの理由で手放したとしか解釈できない。


優里が美月にバッジを譲ったのではないかという疑念は、

より一層強固なものとなった。



優里は、朔也の言葉を聞いて、その場に崩れ落ちそうになった。


自分が隠している真実が、どれほど彼らに誤解を与えているのか。


そして、その誤解を、自分自身が解くことができないという絶望。



悠は、優里の顔を見つめ、複雑な感情を浮かべる。


優里がバッジを譲ったのだとすれば、

それは彼らにとって裏切り行為だが、

優里の悲痛な表情は、また別の真実を示唆しているようにも見えた。


玲司は、冷静に状況を分析していた。


優里の沈黙と、バッジの「唯一性」という事実が重なり、

優里が自らバッジを手放した可能性が、彼の中で確信に変わりつつあった。


「優里ちゃん、きっと、なにかあったんだよね?」


「優里ちゃんがバッジを譲るわけないよね?」


「真佑」


「だってそうだよ。きっとそう。優里ちゃんが自分から譲るなんて考えられない」


「もしそうだとしても、なにか理由があったに違いないよ」


「そうだよね?」


「…それは」


真佑は、優里の深い悲しみに、胸を締め付けられる思いだった。

しかし、彼女もまた、優里が真実を語らないことに、どうすることもできない。




優里は、この時、完全に孤立した。


(このままじゃ……だめだ)


この状況を打開できる唯一の方法は、失われたバッジを取り戻し、

そして真実を証明することだと直感した。


優里は、潤んだ瞳を朔也からそらし、

強い決意を込めた声で告げた。


「私……あのバッジを、必ず取り戻します」


その言葉は、優里の小さな体から絞り出された、

彼女自身の名誉挽回への宣言だった。


優里は、彼らの返事を待つことなく、ラウンジを飛び出していった。


その背中には、昨日とは異なる、決意に満ちたオーラが漂っていた。


「行っちゃった…」


「放っておけ」


優里が走り去った後、ダイアモンドラウンジには、再び重い沈黙が訪れた。


朔也、玲司、悠、真佑は、優里の最後の言葉と、

その背中に宿っていた決意に、複雑な感情を抱いていた。


「…『取り戻す』…?」


「…渉?」


「にゃん……優里は、『バッジを探す』ではなく、『取り戻す』と告げたにゃん」


渉の言葉に、朔也が眉をひそめた。


「それが、どうした」


渉は、猫耳をぴくりと動かし、

画面に映し出された優里の心理状態のグラフを指差した。


「『探す』は、紛失した場合の行動選択にゃん。『取り戻す』は、何者かによって奪われた、あるいは意図的に手放したわけではないという意思表示にゃん」


渉の分析は、優里の言葉の選び方が、

彼女が本当に「譲った」わけではないことを強く示唆していると指摘した。


「昨日は『探す』と言っていたにゃん。でも今日は『取り戻す』に変わっていたにゃん」


「つまり、優里は、昨日までは美月の元にあるとは知らなかった。今日知った可能性が高く、ここにくる間にあのバッジが美月の手にあることは知っていたが、自ら譲ったわけではない。そして、昨日それを説明できなかったのは、別の理由があると解釈できるにゃん」


渉の言葉は、ダイアモンドメンバーの間に広がっていた

優里への「裏切り」という疑念に、一筋の光を差し込んだ。


優里がなぜ真実を語らなかったのかはまだ不明だが、

「譲ったわけではない」という可能性が浮上したことで、

彼らの硬直していた思考に、わずかながらの変化をもたらした。


朔也は、渉の言葉を聞き、冷徹だった表情に、わずかな動揺を見せた。


優里が本当に譲ったわけではないのだとすれば、

彼女が隠している真実の裏には、

彼らがまだ知らない、

より深刻な事情が隠されているのかもしれない。






優里は、中庭で友人たちと談笑している美月を見つけ、一目散に駆け寄った。


美月の制服の襟元には、

紛れもなく優里のダイアモンドのパートナーバッジが輝いている。


優里は、周囲の目を気にする間もなく、

美月の正面に立つと、震える声で告げた。


「美月さん……そのバッジを、返してほしい」


優里の言葉に、美月は一瞬、顔から笑みを消した。

そして、ゆっくりと優里を睨みつけた。

彼女の隣にいたプラチナの生徒たちも、

優里の突然の出現に訝しげな視線を向ける。


美月は、優里の申し出を軽蔑するように鼻で笑った。


「何のことかしら? これは、私が拾ったものよ。あなたの物だという証拠でもあるの?」


美月の言葉は、優里の心を深く抉った。


優里は、真実を話せば遥香の秘密を晒してしまうため、

反論する言葉が見つからない。


「でも……それは、私の……」


優里が言葉を詰まらせると、美月はさらに追撃した。


「それに、あなた、私たちプラチナに、そんな軽々しく話しかけるなんて、身の程を弁えなさいよ。ダイアモンドのパートナーごっこでもしてるつもり? ねぇ、あなた、本当にダイアモンドのパートナーなの?」


美月の言葉は、優里の自己肯定感の低さを容赦なく突きつけ、

優里の最も弱い部分を攻撃してきた。


優里は、自分が「本来ブロンズ止まり」だと思っている

コンプレックスを刺激され、ぐっと言葉に詰まってしまう。


美月の隣にいたプラチナの生徒たちも、

嘲笑うかのように優里に冷たい視線を向けた。


「どうせ、ダイアモンドに見限られて、バッジも捨てられたんでしょ? かわいそうに」


美月の仲間の一人が、わざとらしい同情の言葉を投げつけた。


優里は、顔を赤くし、全身から力が抜けていくような感覚に襲われた。


自分の言葉が届かず、かえって蔑まれる。


彼女は、完全に返り討ちに遭ってしまった。


優里は、美月たちからの冷たい視線と、嘲笑に耐えきれず、

その場から逃げ出すように駆け去った。


彼女の目には、悔しさと、そして深まる絶望の涙が溢れていた。




優里が美月からバッジを取り戻すことに失敗し、

絶望に打ちひしがれているその頃、

学園内では依然として

美月がダイアモンドのパートナーバッジをつけているという噂が飛び交っていた。




午後の授業が終わり、ダイアモンドメンバーたちが

それぞれの活動へと向かおうとしていたその時、


ダイアモンドラウンジの重厚な扉が、無遠慮に開かれた。


そこに立っていたのは、噂の中心人物、プラチナランクの美月。


彼女は、嘲るような笑みを浮かべ、

胸元には確かに、

優里が失くしたはずのダイアモンドのパートナーバッジが、きらりと輝いていた。


「ごきげんよう、ダイアモンドの皆様」


美月は、明らかに挑発的な態度で、

ダイアモンドメンバーたちを見渡した。


彼女の顔には、

この場の空気を支配しようとするかのような、

傲慢な自信が浮かんでいた。


ダイアモンドラウンジにいた朔也、玲司、悠、真佑、渉、

そして遥香は、美月の突然の来訪と、

その襟元に輝くバッジを目の当たりにして、

一瞬にして、言葉を失った。


彼らの目には、優里が必死に探し、

自分たちには見つけられなかったはずのバッジが、

今、噂の渦中にいる生徒の手にあり、

しかもそれが彼らの目の前で堂々と示されているという、

信じられない光景が映っていた。


この前代未聞の事態に、

ダイアモンドメンバーたちは言葉を失い、

なにか告げようにも言葉が出てこない。


美月の挑発的な態度は、彼らの権威への挑戦であり、

優里への不信感が確信へと変わる瞬間でもあった。


しかし、彼らは学園のトップに立つ者として、

感情に流されることなく、この危機に対処する必要があった。


「てめぇ!」


「落ち着け、悠」



まず口を開いたのは、朔也。


彼の瞳は冷たく、美月の挑発を真っ向から受け止めた。


感情的になる悠を抑えるように、美月に問いかけた。


「美月。そのバッジは、どこで手に入れた? そして、なぜそれを身につけている?」


朔也の問いは、美月の背筋を凍らせた。


彼の声には、学園の秩序を乱す者には容赦しない、

ダイアモンドの絶対的な意志が込められていた。


「学園の規則では、ダイアモンドのパートナーバッジは、ダイアモンドメンバーの正式なパートナーのみに与えられる。そして、その譲渡は固く禁じられている。お前がそれを所持しているという事実、そしてそれを公然と見せびらかす行為は、学園の秩序に対する重大な違反だ」


玲司の言葉は、美月の行動が単なる個人的な嫌がらせではなく、

学園全体の秩序を乱す行為であると明確に指摘し、

彼女に心理的な圧力をかけた。


「優里から奪ったのか!? それとも、優里がテメェなんかに、まさか自ら譲ったとでも言うつもりか!?」


悠は、怒りを抑えきれない様子で美月を睨みつけた。



「にゃん。美月の心理状態は、表面的な高揚と、内面的な強い警戒を示しているにゃん。バッジの入手経緯について、何らかの虚偽が含まれている可能性が高いにゃん」


渉は、美月の表情や言動を冷静に観察し、データとして分析していた。



ダイアモンドメンバーたちは、

優里が真実を語らないことに不信感を抱きつつも、

バッジの「不正な所持」という事実を看過することはできない。


彼らは、優月の「裏切り」を疑いながらも、

ダイアモンドの権威を守るため、

そしてこの騒動の真相を究明するために、

美月に対し、冷静かつ断固とした態度で臨んだ。


美月は、ダイアモンドメンバーたちの冷徹な視線と、

的を射た糾弾に、一瞬たじろいだ。


しかし、彼女はここで怯むわけにはいけない。


遥香への長年の嫉妬と、優里への見下しが、

美月のプライドを刺激し、反撃へと駆り立てた。


美月は、顔にわずかな笑みを浮かべ、

優里が昨日ついた「嘘」を逆手に取るように、

涼しい顔で、悪意に満ちた言葉を放つ。


「何をそんなに興奮なさっているのかしら、ダイアモンドの皆様」


「このバッジは、私が拾ったものではありません。宝来優里さんが、私に譲ってくださったものですよ」


「なっ……!?」


悠が、信じられないというように声を上げた。


朔也の瞳は、一瞬にして冷徹な光を帯びた。


優里がなぜ真実を語らなかったのか、

その答えが、美月の言葉によって、最悪の形で示されたと確信した。


優里が昨日見せたあの沈黙は、

全てこの「譲渡」を隠すためだったのか、と。


彼の優里への信頼は、この瞬間に完全に砕け散った。


玲司は、優里の「裏切り」が現実のものとなったことに、

深く眉間に皺を寄せた。


「優里が、自ら……」


「う、嘘だよね……? 優里ちゃんが……」


向井渉は、美月の言葉を聞きながら、優里の心理状態のデータと照合していた。

データ上では、優里がバッチを譲ったという明確な証拠はない。


美月は、ダイアモンドメンバーたちの動揺を見て、

さらに勝ち誇ったような笑みを深めた。


「彼女は、『私には相応しくないから』と、そうおっしゃいましたわ。私のようなプラチナの生徒が持っている方が、よほどお似合いだと」


美月の言葉は、優里の自己肯定感の低さを知る

ダイアモンドメンバーたちの心を、さらに深く揺さぶった。


優里なら、本当にそのようなことを口にしかねない、

と彼らが考えていることを、美月は計算し尽くしていた。


この偽りの告白は、優里にとって、決定的な打撃となった。


彼女が遥香を守るために隠し続けた真実が、

美月の悪意によって完全に歪められ、

優里はダイアモンドメンバーからの信頼を、完全に失うことになってしまった。


美月の悪意に満ちた告白は、

ダイアモンドメンバーたちの優里への不信感を決定的なものとした。


しかし、彼らは感情に流されることなく、

学園の秩序を守るという使命を全うしようとした。



「たとえ優里が譲ったとしても、だ」


玲司の声は、美月の背筋を凍らせた。


彼女の策略が、学園の規則という

絶対的な壁に阻まれることに気づいた。


「学園の規則では、ダイアモンドのパートナーバッジは、ダイアモンドメンバーの正式なパートナーのみに与えられる。そして、その譲渡は固く禁じられている」


「お前がそれを所持しているという事実、そしてそれを公然と見せびらかす行為は、学園の秩序に対する重大な違反だ」


「例え、譲ってもらったものだとしても、何故譲ったのか、どうしてダイアモンドの承認なしに勝手な行動をしたのか、本人にもわけを聞かなくてはならない」


そして、玲司は、美月に直接的な要求を突きつけた。


「速やかに、そのバッジを返せ」


玲司の目は、一切の妥協を許さない、鋼のような輝きを放っていた。


バッジを返さなければ、学園の規則に基づき、

より厳しい処分が下されることを示唆する響きがあった。


美月は、玲司の言葉と、

その背後にいる朔也をはじめとする

ダイアモンドメンバーたちの威圧感に、顔色を失った。


彼女は、優里の自己肯定感の低さを利用して勝利を得たと思った瞬間、

学園の絶対的な権力に、自らの行為が裁かれるという現実に直面した。


美月は、玲司の毅然とした要求と、

ダイアモンドメンバーたちの冷徹な視線に、全身が凍りつくのを感じた。

しかし、遥香への根深い嫉妬と、優里への見下しが、

美月のプライドを刺激し、彼女は一歩も引こうとしなかった。


美月は、顔を蒼白にしながらも、

胸元のダイアモンドのパートナーバッジをぎゅっと握りしめ、

挑発的な笑みを浮かべた。


その目は、恐怖と悪意が入り混じった光を放っていた。


「嫌よ」


美月の声は、震えていたが、

その言葉ははっきりと、ダイアモンドメンバーたちの耳に届いた。


「これは、私が『拾った』ものであり、そして宝来優里さんが『私に譲ってくれた』もの。それを返す理由がどこにあるっていうの?」


美月は、優里のついた嘘を盾に、玲司の要求を真っ向から拒否した。


彼女は、優里が真実を語れないことを知っており、

その優里の弱みこそが、今の自分の最大の武器だと信じていた。


「学園の規則? それは、あなたたちが宝来優里さんの『裏切り』をきちんと裁いてから言うべきことじゃないかしら?」


美月は、さらに挑発を重ねた。


彼女は、ダイアモンドメンバーたちが

優里を信じていないことを察しており、その不信感を逆手に取ろうとした。


彼女の言葉は、ダイアモンドメンバーたちの間の

優里への不信感をさらに刺激し、

ラウンジの空気は一気に険悪なものとなった。


美月の執拗な挑発で、朔也は、優里への失望を抱えながらも、

学園の秩序、そして遥香の権威を守るという

ダイアモンドとしての使命を忘れていなかった。


美月が優里を利用し、

ダイアモンドの足元を揺るがそうとしていることを、

朔也は冷徹に見抜いていた。


朔也は、その存在の全てで美月を圧倒するかのように、ゆっくりと口を開いた。


彼の声は、ラウンジの重苦しい空気を切り裂く、

氷のように冷たい響きを持っていた。


「美月」


朔也のその一言は、美月の背筋を凍らせた。


彼女は、嘲りの笑みを消し、朔也の視線に縫い付けられたように立ち尽くす。


「ひとつだけ言っておく」


「お前と優里を、比べるな」


その言葉は、美月の耳に、雷鳴のように響き渡った。


朔也の言葉は、美月の優里への根深い嫉妬と、

自分こそが優れているという傲慢さを、真っ向から否定するものだった。


美月は、優里のバッジを手に入れたことで、

優里よりも優位に立ったと信じていたが、

朔也は、その行為そのものが、

優里の足元にも及ばない美月の器の小ささを露呈していると断罪した。


優里の潔白を直接的に証明する言葉ではなかったが、

優里を「裏切者」と断定し、

美月の味方をするような態度では決してなかった。


むしろ、朔也は、優里への不信を抱えながらも、

彼女がダイアモンドのパートナーであったという事実、

そして彼女自身の価値を、

美月のような浅はかな人間と比較されること自体を許さないという、

絶対的な優里への評価を暗に示していた。


朔也の言葉は、ダイアモンドメンバーたちにも衝撃を与えた。


彼らは、朔也が優里に失望していると感じていたが、

それでもなお、優里の人間としての価値を

誰よりも高く評価していることを再認識させられた。


美月は、朔也のその言葉に、顔を蒼白にした。


優里を陥れることで、ダイアモンドに認められたかったのかもしれないが、

朔也の言葉は、その愚かさを突きつけ、彼女のプライドを完全に粉砕した。


朔也の言葉は美月のプライドを完膚なまでに打ち砕いた。



「っ……!」


美月は、屈辱に顔を歪め、何も言い返すことなく、

身につけたダイアモンドパートナーバッチを煌めかせながら、

ダイアモンドラウンジを飛び出していった。


その背中には、敗北と、そして優里への一層強い憎悪が滲んでいた。


美月がラウンジを飛び出したのを見た優里は、チャンスだと思った。


朔也たちの不信感を拭い去るには、バッジを取り戻すしかない。


優里は、弾かれたように美月の後を追った。


「美月さん! 待って! そのバッジを返して!」


優里は、廊下で美月に追いつき、その腕を掴んだ。


しかし、美月は優里の言葉に耳を傾けるどころか、

その瞳には凍てつくような悪意が宿っていた。


朔也の言葉が、美月の胸に深く突き刺さり、

その怒りの矛先は、全て優里へと向けられていた。


「しつこいわね!!」


美月は、優里の手を荒々しく振り払った。


そして、優里の最も弱い部分を狙って、冷酷な言葉を投げつけた。


「あなたみたいなブロンズ止まりの役立たずが、私に話しかけるんじゃないわよ。これ(バッジ)は、あなたに相応しくない。あなたを裏切ったダイアモンドの連中に、もう用はないんでしょう?」


美月の言葉は、優里の深いコンプレックスを容赦なくえぐり、

「ブロンズ止まり」という自己認識を突きつけた。


優里は、体が震え、言葉を失った。


美月は、優里の反応を見て、さらに言葉を続ける。


「せいぜい、一人で惨めに落ちぶれていなさい」


美月は、勝ち誇ったような冷たい笑みを浮かべると、

そのまま背を向け、廊下の向こうへと去っていった。



優里は、その場に立ち尽くした。


ダイアモンドメンバーからの不信感、バッジの喪失、

そして美月からの決定的な突き放し。


遥香を守るために選んだ沈黙が、優里を深い孤立へと追い込み、

彼女の自己肯定感を根底から揺るがした。



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