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ダイアモンドクラス  作者: 優里
シルバーへの昇格

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59/96

揺れる天秤



日向朔也と鷹城玲司の言葉は、

宝来優里の心を完全に納得させるには至らなかった。


遥香の幸せを願う優里の気持ちは揺るぎなく、

自分がその障害になるのなら

身を引くべきだという考えは、

彼女の心に深く根付いていた。



優里は、朔也と玲司の

真剣な眼差しを受け止め、小さく首を振った。


「でも……私がいることで、遥香様と悠様の関係が、もし……」



彼女の声はか細く、

その瞳には深い悲しみが宿っていた。


しかし、朔也と玲司が自分を案じ、

この状況を何とかしようとしてくれていることは、

優里にも伝わっていた。



彼らが自分を「邪魔者」として扱わず、

むしろ「大きな損失」だとまで言ってくれたことに、

優里はわずかな安堵を覚えた。


玲司は、優里の肩にそっと手を置き、

力強く言った。


「優里。君の気持ちは重々承知している。だが、これは君一人で抱え込む問題ではない。我々ダイアモンドメンバーが、必ず最善の道を見つけ出す。だから、今は我々を信じて、君自身の回復に専念してほしい」


朔也も、それに続く。


「そうだ、優里。君が悠とのパートナー制度を解消することは、絶対にさせない。それは、君が掴んだ居場所を、自ら手放すことになってしまう。そんなことは、誰にも望んでいない」


優里はまだ、自身の存在が

遥香と悠の間に立つ壁になるのではないかという

葛藤を完全に払拭できたわけではなかったが、

彼らが自分を突き放さず、

解決のために動いてくれるという言葉に、

わずかな希望を託すことにした。


「……はい。分かりました。私、お二人に、お任せします」



優里は、絞り出すようにそう答え、深く頭を下げた。


彼女の心には、まだ不安の影が残されていたが、

少なくとも一人で全てを背負い込む必要はないのだと、

少しだけ心が軽くなったようだった。




優里の言葉を受け、

朔也と玲司は、

この複雑な状況を解決するための

具体的な策を練り始めた。


彼らは、優里と悠の関係を

明かせないという制約のなかで、

遥香の誤解を解き、優里の居場所を守るという、

非常に困難な課題に直面していた。



朔也と玲司は、遥香に対し、

悠と優里の関係が単なる恋人関係ではない、

もっと深い「師弟関係」や「同志としての絆」であるかのように、

さりげなく、繰り返し強調することにした。


「悠が優里に目をかけたのは、彼女の才能を見抜いたからだ」

「悠は優里を、自分の『ゲーム』における重要なパートナーとして、深く信頼している」

といった言葉を、遥香の耳に届くように話す。


これにより、遥香の「悠への恋心」という誤解を、

別の方向へと誘導しようと試みる。


そして彼らは、

遥香が自身の感情の真の源泉に気づくよう、

間接的に促すことも検討した。


「遥香は、優里が傷つけられた時、誰よりも怒っていた」

「優里の笑顔が、遥香にとってどれほど大切か」

といった言葉を、

遥香が自らの感情を深く見つめ直すきっかけとなるよう、

慎重に投げかけることを考えた。



そして何よりも、

優里が再び傷つくことを防ぐため、

彼らは学園内での優里の安全確保を徹底する。


これは、ゴールドの生徒たちへの処分とは別に、

優里が安心して学園生活を送れる環境を整えるための、

継続的な取り組みとなる。


朔也と玲司は、優里の居場所を守りながら、

遥香の誤解を解き、そして悠との関係を維持するという、

非常に繊細で複雑な「ゲーム」に挑むことになる。





優里から「パートナー制度の解消」という

苦渋の提案を受けた日向朔也と鷹城玲司は、

優里と篠原悠の関係が「偽装」であることを

知っているがゆえに、深い苦悩の中にいた。


彼らは、遥香の誤解を解き、

優里の居場所を守るために、

二人の関係の「真の深さ」を知る必要があった。


特に、学園内に流れるデマが

「体を売った」という性質のものであったため、

彼らは優里と悠の関係がどこまで進んでいるのか、

その詳細を把握する必要があると感じていた。



しかし、その質問はあまりにもデリケートであり、

優里をさらに傷つける可能性があった。




朔也は、ダイアモンドラウンジに

優里を呼び出し

慎重に優里の様子を伺いながら、

慎重に言葉を選んだ。


「優里……その、悠との関係について、もう少し詳しく聞かせてもらえないか?」


優里は、朔也の言葉に、

わずかに顔を上げたものの、

すぐに視線を落とした。


彼女は、何を聞かれるのかを察し、

身体を硬くした。



玲司は、優里の反応を見て、さらに言葉を重ねた。


彼の声は、普段よりも一層穏やかだった。


「優里。我々は、君と悠の関係が、単なる形式的なものではないと認識している。悠が君をどれほど大切にしているか、我々も見てきた。だからこそ、遥香の誤解を解くためにも、君たちの関係がどこまで進んでいるのか、知る必要がある」




彼らは、優里と悠が

「ヤった」とまで認識しているため、

その事実を確認したいという思いがあった。


しかし、それを直接的に問うことは、

優里へのさらなる屈辱となることを理解していた。


彼らは、優里の心を傷つけずに、

しかし核心に迫る情報を引き出そうと、

言葉を選びに選んだ。


「その……君と悠は、その、どこまで関係が進んでいるんだ?」


朔也は、真剣な眼差しで優里に問いかけた。


彼らは、優里がこの質問にどう答えるのか、

そしてその答えが、遥香の誤解を解き、

この複雑な状況を解決するための

鍵となることを願っていた。


しかし、同時に、優里がこの質問によって、

さらに精神的な負担を負うのではないかという

懸念も抱いていた。





優里は、日向朔也と鷹城玲司からのデリケートな質問に、

動揺を隠せなかった。


「どこまで関係が進んでいるのか」という言葉は、

彼らが篠原悠との関係を

「恋人」として認識していることを明確に示していた。


そして、それは、学園内で流れている

「体を売った」という悪質なデマとも重なり、

優里の胸に重くのしかかった。




優里は、俯いたまま、震える唇を噛み締めた。


真実を話せば、悠とのパートナー制度の「偽装」が露見し、

彼女がせっかく手に入れたダイアモンドラウンジでの居場所、

そして何よりも遥香の隣にいる資格を失ってしまうかもしれない。


しかし、嘘を重ねれば、それがいつか遥香の、

そして悠の心を傷つけるかもしれない。




数秒の沈黙が、重く部屋に響き渡った。


「無理にとは言わない。言いにくいことだろう。」


玲司は苦笑いをしていた。


誰にも触れられたくないことの

一つや二つはあって当然だ。


それがたまたま悠との

関係だったのだろうと思っていた。




優里は、遥香の幸せを願う気持ちと、

自身の全てを失う恐怖の間で、激しく葛藤していた。


しかし、最終的に、

彼女は偽りの関係を続けることの苦痛と、

遥香への真摯な想いを選んだ。


優里は、ゆっくりと顔を上げ、

潤んだ瞳で朔也と玲司を見つめた。


その声はか細く、しかし、決意に満ちていた。


「…ごめんなさい」


朔也と玲司は突然の謝罪に驚く。


「私と悠様の関係は……みなさんが思っているようなものでは、ないんです」


「…それは、どういうことだ?」


玲司は優しく告げる。



優里は、一度深呼吸をすると、

さらに言葉を絞り出した。


「私は、ダイアモンドラウンジに入るために……遥香様の近くにいるために、悠様にパートナーのふりをしてもらっていました。悠様が、私の事情を知って、協力してくれただけだったんです……あの噂は、全てデマです」


彼女は、自分がどれほど孤独で、

遥香の隣にいることを切望していたかを、

言葉にはしなかったが、

その震える声と、諦めを含んだ瞳が全てを物語っていた。


そして、自分に向けられた

「体を売った」というデマを、自らの口で否定した。




優里の告白に、朔也と玲司は目を見開いた。


彼らが「偽装」だとは知っていたものの、

優里がここまで詳細に、

そして自らその真実を明かすとは予想していなかった。


彼女の言葉は、彼らの認識していた

「悠と優里は付き合っている」という誤解を、

根底から覆すものだった。



そして、その告白は、

優里の純粋な遥香への想いを、暗に示していた。


遥香の近くにいるためだけに、

自身を犠牲にしてまで

偽りの関係を演じていた優里の切ない真実が、

彼らの前に晒された。



朔也は、やはりといった様子で、目を見開いた。


「やっぱり……悠と、付き合っているわけではなかったのか?」


その声には、驚きと、

これまでの自分たちの誤解への呆れが入り混じっていた。


彼らは、悠が優里をパートナーに選んだこと、

そして何かと気にかけていたことを、

二人が恋人関係にある確固たる証拠だと解釈していた。


しかし、優里の告白は、その前提を崩したのだった。




玲司もまた、冷静さを失いかけた。


彼の表情には、困惑と、

自分たちの早合点への戸惑いが浮かんでいた。


「優里……それは、本当なのか? 悠は、君の事情を知って……」


優里は、うつむいたまま、小さく頷いた。


「はい。私が、遥香様のそばにいたくて……それで、悠様にお願いしました。悠様も、私のために……」


優里の言葉は、玲司と朔也の心に、

さらに重く響いた。


優里が、遥香のそばにいるためだけに、

ここまで自己犠牲を払っていたという事実。


そして、そのために悠との

偽装関係を受け入れていたという純粋さ、

切なさが、彼らの胸を打った。



彼らは、自分たちが遥香の

「恋心」の誤解に振り回され、

さらには優里と悠の関係まで誤解していたことに、

強い衝撃を受けた。


特に、遥香が悠に惹かれていると判断し、

それが「浮気」につながると

焦っていた自分たちの姿が、

一気に滑稽なものに思えた。



朔也は、頭を抱えるように、

深いため息をついた。


「まさか、こんなことになっていたとは……」


玲司は、優里の健気な告白に胸を締め付けられながらも、

この真実が明らかになったことで、

事態の解決への新たな道筋が見えたことに気づいた。


しかし、この真実をどう遥香に伝え、

彼女の誤解を解くのか。


そして、この複雑な状況をいかに収拾するのか。


彼らの顔には、新たな困難への覚悟が浮かんでいた。


そして優里がようやく手にした

ダイアモンドラウンジでの居場所を失うことを

避けたいという思いから、

彼らはすぐさま解決策を模索した。



「優里、一つ提案がある」


玲司が口を開いた。


彼の声は、優里への配慮と、

事態を収拾しようとする責任感に満ちていた。


「悠とのパートナー関係を一旦解消しよう」


優里は、その言葉に息を呑んだ。


パートナー関係の解消は、

彼女が最も恐れていたことだった。


しかし、玲司はすぐに言葉を続けた。


「だが、それは君がダイアモンドラウンジに入れなくなるという意味ではない」


玲司は、優里の目を見つめ、朔也に視線を送った。


朔也は、その意図を汲み取り、

優里に優しい笑顔を向けた。


「優里、僕とパートナー関係を結ばないか?」


朔也の提案に、優里は驚きに目を見開いた。


朔也もまたダイアモンドメンバーであり、

彼とパートナーになれば、

優里は引き続きパートナー制度を利用し、

ダイアモンドラウンジに立ち入ることが可能になる。



「僕が悠の代わりに、君のパートナーになる。そうすれば、君はダイアモンドラウンジにも入れるし、僕たちが君をしっかり守ることもできる。それに……」


朔也は、ちらりと遥香と悠が話している方を見た後、

優里に視線を戻した。



「…君が遥香のそばにいたいという願いも、かなえることができる」


その瞳には、遥香の誤解を解き、

悠と優里、

そして遥香自身のためにも最善を尽くしたいという、

複雑な思いが込められていた。




優里は、朔也と玲司の真剣な眼差し、

そして自分を何とか守ろうとしてくれる

彼らの優しさを感じ取った。


彼女の心には、遥香の幸せを願う気持ちと、

自分自身の居場所を失いたくないという思いが交錯していた。


葛藤の末、優里はゆっくりと頷きました。


「……はい。朔也さん、玲司さん、ありがとうございます。その、ご迷惑でなければ……お願いします」


優里の声は、まだか細かったものの、

その表情には、新たな希望と、

困難な状況を乗り越えようとする決意が垣間見えた。


朔也と優里の新たなパートナー関係は、

この複雑な三角関係と学園の秩序に、

新たな変化をもたらすことになる。





宝来優里と日向朔也の新たなパートナーシップは、

鳳凰学院のダイヤモンドラウンジに複雑な波紋を広げた。


この一見単純な関係性の変化は、

優里、朔也、そして遥香と悠、

さらには鷹城玲司の間に、

新たな感情と戦略の層を築き上げることになる。



優里にとって、朔也とのパートナーシップは、

ダイアモンドラウンジという居場所と、

遥香の隣にいられる機会を失わずに済む、

まさに救いの手だった。

彼女の心には深い安堵が広がる。



たとえ悠との関係が偽装だと知られても、

ダイアモンドである朔也とのパートナーである以上

優里はダイヤモンドの恩恵を受け続けられる。

これにより、彼女は

ダイアモンドラウンジから追い出されることなく

学園の闇から一時的に距離を置き、

精神的な回復に専念できる。



朔也と玲司が、優里の身を案じ、

真剣に彼女の味方になってくれたことは、

優里にとって大きな心の支えとなる。


彼女は彼らへの信頼を深め、

より安心して自身の状況を打ち明けられるようになる。


遥香の「恋心」が悠に向けられていると

信じている優里は、

自分が遥香の恋路の邪魔にならないよう、

朔也とのパートナーシップを選んだ。


この自己犠牲的な行動は、

優里の遥香への想いをより深くするが、

同時に遥香との間に微妙な心の距離を生む。





朔也は、優里の新しいパートナーとして、

大きな責任を負うことになる。



朔也は、名実ともに優里の保護者としての役割を担い、

彼女を学園の悪意から守る盾となる。


彼は、悠から引き継ぎ、

優里が安心して過ごせる環境を整えることに尽力する。


朔也は、悠が仕掛けた情報戦や、

向井渉への牽制など、複雑な裏工作において、

悠の最も信頼できる協力者となる。

二人の連携はさらに強化される。


しかし、朔也は遥香の誤解と、

優里の自己犠牲的な心情の狭間で板挟みとなる。


真実を明かせない中で、遥香が悠への感情を募らせ、

優里が自らを犠牲にしようとする状況を、

いかに乗り切るかが朔也の課題となる。



遥香は、優里と悠のパートナー解消、

そして優里と朔也が新たなパートナーになったことに、

内心で大きな動揺を覚える。


遥香は、優里が悠との関係を「精算」し、

朔也とパートナーになったことを、

「悠の負担を減らすため」

「自分(遥香)と悠の関係を邪魔しないため」

という、優里の自己犠牲的な配慮だと認識する。


これにより、遥香は優里の健気さに心を打たれると同時に、

悠への想いをさらに募らせ、

優里の犠牲を無駄にしまいと行動する。



遥香は、優里が身を引いたことで、

悠へのアプローチをさらに積極的に行う。

彼女の心には、

優里の「犠牲」に応えなければという使命感が交錯する。



悠は、優里が朔也とパートナーになったことを受け入れ、

自身の計画をさらに加速させる。


優里が自ら身を引こうとしたこと、

そして朔也が新たなパートナーになったことで、

悠は優里への後悔と、

彼女を傷つけた者たちへの怒りを一層募らせる。




悠は、優里が遥香への想いを募らせていることを知り、

優里をパートナーにして、

遥香の籠るダイアモンドラウンジに

入れるように権限を渡し、

遥香に近づくために奮闘している優里を

ずっと支えてきていた。


そのため、遥香が自分に接近していることや、

彼女が優里と自分の関係を誤解していることには、

依然としてほとんど気づいていなかった。


ましてや、今は優里の安全と復讐が最優先であるため、

感情的な動きは二の次と考えているということもあった。


これが、今後さらなる波乱を招く伏線となる。



玲司は、朔也と共に優里の真実を知る

数少ない人物として、

冷静に全体の状況を把握し、

戦略的なアドバイスを続ける。


彼は、悠の行動を支援しつつも、

遥香の誤解が学園に与える影響や、

優里の心のケアを、

俯瞰的な視点で見守る重要な役割を担う。




この新たなパートナーシップは、複雑に絡み合った感情と、

学園の権力構造を巡る駆け引きに、新たな局面をもたらし、

登場人物たちの運命を大きく左右していくことになる。




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